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4-3

 貴族……貴族……貴族。右を見ても左を見ても洒落た格好の奴等が立っている。目がチカチカしてくる。

 どうしたもんか、あたしはガキを連れている。金髪で、精一杯お洒落を決めた七の男の子だ。


「父上と母上が、いつもお世話になっております」


「いえいえ。こちらこそ遠流路さん夫妻には御世話になっておりますわよ。偉いわね、坊や」


「……失礼します……」


 〝坊や〟って単語に過剰反応丸分かり。

 どうしょうもない事実だけど受け入れたくないということかね。「ガキ」で十分だっての。


「なあ、お前の両親や姉貴はどうしたよ? 来てないわけじゃないだろう」


「父上も母上も姉上も、遠流路っていう看板にお高くとまってる。警察とも太いパイプで繋がっているから、ほかの貴族からの風当たりも気にしてない」


「姉貴のこともかい?」


「確かにマイナスにはなってしまったよ。だから、今日の集まりに僕と御付きだけを向かわせたんじゃい」


「自分等は姿を見せず、同情を買いそうなお前を行かせたあたり、遠流路ってのはクズの一族なのか?」


「く、クズとはなんだ! 言葉がすぎるんじゃ!」


「お前の家族以外にも遠流路はいるだろう。どうして誰も来ねえ。ガキのお前に遠流路を背負わせて、どこのどいつも来ねえとはどういう了見してんだ」


「そ、それは……じゃ……」


「三代とかで来てる一族からしたら、遠流路は終わったって思うだろうよ。同情されるどころか、反感まっしぐらだ」


「……ぐっ!」


「未来ある人間に過去を擦り付けてトンズラ……遠流路を表すとこうか?」


「いい加減にするんじゃい!」


 涙を浮かべ、小さな拳をぶつけてくる。七歳の力じゃ大したことはない。が、痒くはない。痛みはある。

 遠流路家を背負わされた無垢な男の子。けど、あたしの目に映るのは、遠流路家を背負う覚悟を持った男の姿だ。言葉では言い表せない喜怒哀楽を、あたしに拳で伝えてきた。


「……もう、いいのかい? 遠流路懐琉。文句なら平衡が受け付けるがよ」


「い、今の遠流路の体質は腐ってるんじゃ。驕っているんじゃ! 婆様も爺様も、お手上げ状態の蚊帳の外同然。父上が仕切り、母上が決める。そんな両親を見て育ったのが姉上……。僕に向けられる視線は遠流路に対する怨み……憎しみばかり。ははは」


 こいつは、大人びてるんじゃねえ。大人びてしまったんだ。ガキなのに、ガキであることを諦めてしまったんだ。大人の都合で……貴族であるが故に。


「懐琉。正直に言え……死にたいか?」


「うぇあ!? し、死ぬ!?」


「遠流路から解放されたいか?」


「……僕は……〝普通〟がいい! 名誉も誇りも見栄もお金も〝普通〟でいい! 貴族なんか要らないんじゃい!」


「ほう。言っちまいましたねぇ、坊っちゃん。言ったことには責任を持てよ? 懐琉」


「な、なんじゃい」


「懐琉、家出しろ。あたしん家で面倒看てやる。お前の両親が迎えに来るまで好きにしろ。なーに、遠流路家には報せてやるよ。御宅の息子さんが家出に来ていますってな」


「なんじゃと!?」


「遠慮すんなっての。あたしのお父、貴族が嫌いだから丁度いい」


「比良さん。流石に厳しいのでは」


 側で事のあらましを聞いていた灯可里が口を挟んできた。でも、本気で止める気はないみたいだよ。厳しいなんて遠回しな言い方して。灯可里も遠流路と何かあったのかねぇ。


「ふふふ。この一週間でパワーアップした平衡比良に、不可能など有り得ん!」


「仕方ありません。貴族の問題は貴族で片付けるのが礼儀ですから。私も付き合いましょう」


 仕方なさそうに言ってるが、その緩んでいる口元はなんだね? もしかして楽しんでるのかい、灯可里よ。

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