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4-1

「あー。メンドイ。かったるぅ」


 無茶な一週間だった。貴族の集まりなのだから、礼儀作法を会得しなきゃだめらしく徹底的に叩き込まれ、平衡家の人間が強くなりたいと口にした以上、生半可ではだめだと、徹底的にしごかれまくった。


「比良よ。姿勢を正すのだ」


 相変わらずの白スーツ。ホント、お祖父の底が見えずに参った。結局、あたしはお祖父に土を付けることは叶わずに今日を迎えた。


「分かってる。だが、あたしの着なれない服装でそれは無理だ。普段着ならまだしもね」


「普通は、普段と違う格好をすれば自ずと正される筈だがな」


「あたしは普通じゃないんかねぇ」


 着なれないドレスを気にしながら会場に辿り着く。

 ご立派なビルだこと。こんなとこ、こんなことでもなけりゃあ無縁だったろうよ。


「ほらいくぞ。間違っても時間に遅れてはならん」


「堅苦しい。くぅぅーっと! しゃーない、行くか」


 無駄にきらびやかな受付を済ませ、最上階にエレベーターで昇っていく。流石のあたしも、高層ビルの最上階まで階段で駆け上がっていくのはキツイ。


「飲み物を差し出されたら受け取ることだ。入場券みたいなものなんだ。解ったかい?」


「解ってるっての。受け取った飲み物を持って挨拶するんだろう?」


 挨拶は社会のマナーってことは常識だぜい? お祖父は心配性だっての。ま、あたし流でだけど。


「着いたようだ」


「こんなに長くエレベーターに乗ったのは初めてだったよ」


 あたしらしからぬ動作を終えてエレベーターを降りる。うげー。二百人は間違いなく立食可能なフロアが広がってやがる。既に三、四十人がうろちょろしてるし。


「お飲み物を」


「頂こう」


 お祖父。流石に慣れてやがる。しかも、あたしを置いて、たったと挨拶に向かいやがったよ。


「どうぞ」


 あたしは未成年。アルコールは当然タブー。残る選択肢は、紅茶と炭酸水……。喉を潤す目的なら炭酸水で充分だ。さーて、誰に挨拶するかねぇ。


「空いてますか?」


「え?」


 あたしに声を掛けてくる人が居たなんて。しかも、着物を見事に着こなしているし。


「御迷惑でしたでしょうか」


「んや。こういうのに慣れてないもんで戸惑ってるだけ。一応、作法とか教わったんだが、如何せん堅苦しいのは苦手でねぇ……あ、悪い……あ!?」


「構いませんよ。私も最初はそうでした。……申し遅れました……私、天道 灯可里ひかりと申します。以後、お見知り置きを」


「あたしは、平衡比良。高一なんだよ」


「あら。私も高校生です。柊高等学校の二年です」


「へー! あの柊のかい。最近じゃ荒れた話を聞かなくなったよ。天道さんみたいな利口な生徒が居るんならそりゃあ変わるか」


「私なんか何もしてないですよ。私、生徒会に身を置いてるのですが、私が入学した時の会長と副会長のお陰で柊高は変わったと思ってます」


「天道さんみたいな利口な人から認めてもらえる人達なら、さぞかし立派だったんでしょう?」


「はい。先輩方にその自覚はないみたいなのですが、とても御立派に務めてました。最近はお会いできていませんが」


「貴族じゃないの? その先輩方」


「庶民の方々ですよ。私の事を貴族の人間だと知ったあとも変わらず接してくださいました。どことなくですが、平衡さんと雰囲気が似ているかもしれません。その方は、男性ですが」


「やっぱね。あたし、どちらかといえば男っぽいから。なんか納得。あたしも縁があればお目にかかりたいねぇ。そんと、比良でいいよ」


「それでは、私のことも灯可里で御願いします」


 天道さん改め、灯可里が紅茶の入ったグラスを差し出してきた。乾杯ってやつだ。


「宜しく、灯可里」


「宜しくお願いします。比良さん」


 おぉ! 乾杯なんかしちゃったりしてるよ。

 なんか貴族っぽい。ああ、ホントに貴族なんだっけ。さーて、この会合どうなんだろうねぇ……。

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