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シャツ越しからでも分かる程の筋骨隆々な身体を持つ男。あたしの祖父だという平衡 平久。
とても高校生の孫がいるようには見えない。
「儂からいくぞ」
あたしのお祖父像からかけ離れた姿が、あたしに向かって走ってくる。現役のランナーのようだ。
「跪かせてやる!」
あたしのメリケンが火を吹くぜぇ! 食らいな!
……な、……うぅ!? 全然効いてねえ……。
「比良よ、なかなかの拳だよ。恥じることはない。儂が強すぎるだけなのだからな」
くっそう! 嘗められてたまるかってんだ。サシであたしが負けるなんざ有り得ないっての!
「……うおおお!!」
「いいよ。いい攻撃だ。だが相手が悪かったようだ」
なんだってんだよ!? あたしの拳が……蹴りが……。
あたっているのに! 有り得ねえよ!?
駄目だ。思考が追い付かねえ。あたしが負ける!?
この平衡比良がだぞ!?
「ヌウ!」
「あ!?」
お祖父の拳から放たれた波動が、あたしの身体を吹き飛ばす。初めてだった。心の底から沸々と沸き上がる感情が。あたしにもあったんだな……。
「比良。悔しいのか?」
ズシリと胸に突き刺さる言葉。負けて初めて感じることができた感情……。
「……悔しい……悔しい! チキショーおおお!!」
「いい目だ。お前はまだまだ強くなれる。お前を平衡家に誘ったのは、お前を強くさせる為だ」
そうだったのか。自分の傍に置いとけば手塩に掛けられるから。でもなんで?
「お祖父、一体何を?」
「実はな。平衡家を含む貴族の者が集まる機会がある。しかし、平衡家は儂以外で集まれる者が居なくてな。お前の父は貴族を嫌っておるし、娘は連絡がつかん。そこでお前に白羽の矢がたったのだ」
「……事情は把握した。けどやっぱ一緒には住めない。その代わり、条件を飲んでくれたら出てあげてもいいよ。その会合」
「条件?」
「そ! 貴族の会合に出てあげるかわりに、あたしを鍛えあげる。どう?」
「いいだろう。元々そのつもりだったしな」
お祖父はスーツを羽織る。あたしと闘ったあとなのに呼吸が乱れていない。改めて完敗を受け入れた。
ホント、上には上が居る。




