3-1
「うー……」
頭がボーッとする。視界がぼやけてる。眼鏡がずれてんのか? ……あれ? 手が動かない。ていうか、手足が椅子に縛られてるだぁ? 何で?
「おーい。誰かー!」
返事がない。人の気配を感じない。てかどこだ。
見たところ、窓もない。テーブルの一つも置いてない寂しい場所。広さは教室くらいってかね。扉は、あたしの視線の先にある一ヶ所だけか。
こいつは密室ってやつか? ま、扉が開くだろうよ。あー、その前に縄を切らないとっ! ……よし! 軽く手足に力を込めたらブチって切れたぜい。
「……ありゃ? 開かないや。まいったね、密室確定かい」
いくら引いてもビクともしない。しゃーない。引いて駄目なら蹴破るだけっしょ。あたしは扉と距離を取る。大体こんなもんかねぇ。
「超・仮面キック!」
バキッと音を上げて扉が壊れた。扉は、だ。
扉の先は岩壁になっていた。つまり、扉はダミー。
壁も亀裂が入っていたが、厚さが未知数なので蹴るのをやめた。
「うーん。天井は無理か。通気孔とかもないし」
腕を組んで考えても仕方ない。部屋を隅々まで見ていく。やっぱ通れそうな箇所はないな。
「強引に壁を壊すか」
考えるのは、性に合わない。身体を動かしていたほうが脳が働くってもんよ。
「エンド・ナックル!」
昨日の野郎から掻っ払ったメリケンが役に立つ時が来るとは。世の中、なかなか分からないね。
おー! 壁がめり込んだぜ。この調子で壊していけば脱出できるっての。
「おりゃあああああ!」
壁を突き破る感触を得れた。この先に空間がある!
こんなとこからお去らばしてやる。そんでもって、あたしを閉じ込めやがった奴を凝らしめてやる。
「……よっと!」
外に出れた……? こりゃあ、外は外でも敷地内っぽいね。誰の敷地だ? どうやら、あたしが閉じ込められていた部屋はプレハブのようだ。ったく、ぜってぇ見つけたら凝らしめねえと!
「やはり、か。流石は比良だ」
「あん? 誰」
白いスーツに身を包んだ男。あたしの名前を知ってるようだが、あたしは知らんぞ。
「成る程。どうやら、忘れてしまっているようだ」
「忘れてる? 一体、何の話だ」
「比良よ。今の生活に嫌気が差しているだろう。もっと歯応えがほしいと思っているのだろう?」
「あたしの何を知ってやがる!?」
初対面の人間に色々と知られているのは気持ちわりい。何なんだっての!
「知っているとも。名は、平衡比良。現在、十六歳の高校一年。好きな色は赤と黒。好物はサイダー。幼なじみの二戸大介から好意を寄せられている。他には……」
「もういいや。あたしのことを知ってんのは分かった。で、あんた、何者だ?」
「平衡平久。お前の祖父だ」
は? 知らねえよ!? 初耳だっての。




