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現代の天才は異世界で凡人の夢を見る  作者: 福島の星
幼年期 バラッド王国滅亡編
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三話 天才は凡人への一歩を踏み外す

 翌朝祐はニナとの約束通り長兄がおこなっている修練へと足を運ぶためシュバルツ家の屋敷を散策していた。初めて歩き回るシュバルツ家の屋敷は広大で修練場に行き着くまで十五分以上も歩くことになるため、あらかじめメイドの一人に地図を用意してもらっていた。


「しかしシュバルツ家が侯爵位といってもこれは広すぎる気がするな……本当にこの道であってるんだろうな……」


 不安を口にしつつ広大な屋敷の中を奥へ奥へと歩いていると大きなやしろが目に入る。辺りは不気味なほど静かで冷気が漂う……社の奥には彫像が建っており、まるで生きてるかのような視線をこちらに送っていた。


「ここが修練場じゃないよね……なに!? この不気味な気配……嫌な予感しかしない……」


 祐は悪い予感に体をブルっと震わせると回れ右して引き返そうとする。しかし悪い予感は的中し彫像から声が聞こえてきた。


「我の眠りを妨げし者よ……汝から強き気配を感じる……我の試練を望むか?」


 何やらテンプレ的な声が聞こえるが病み上がりの体で面倒ごとに巻き込まれたくない祐は無視して歩き始める……先ほどの数倍の大声が響き始める。


「我の眠りを妨げし者よ……逃走は弱者のおこない! ひとまず止まり話を聞け!」


 声の--聞け! という言葉と同時に祐の体は金縛りにあったように動かなくなる。さらに強制的に社の前まで体が引き寄せられてしまう。


「汝強きものよ……我の試練を受けるか? 我は汝のような強きものを待っていたのだ」


 圧倒的力の前に声も出せずに社の前に座った祐からあきらめに似た言葉が紡がれる。


「試練は受けないと放してもらえないってことだよね?」

「その通りだ我は長き時を待っていた……しかし強きものは現れず偽りの弱者ばかりが試練に訪れる……我は我慢の限界なのだ……少しばかり強引であってもしかたなかろう?」

「こっちも暇ではないので試練の内容を話してもらえますか? ちなみに僕は五歳児だから化け物と戦えと言われても瞬殺される自信があるけどな」

「ククク……そんなつまらん事はせんよ……我は問うだけだ問いに答えられれば、すぐにでも汝を解放しよう!」

「問い? ふふふ……面白い……世界の謎をすべて解明してきた僕に問題をだそうだなんて……」


天才のやる気スイッチは、最近入りやすい傾向にあった。


「威勢がいいがどこまで持つかな……さぁ始めるとしよう! 我は問う! 10×0=」


 祐の頭の中で瞬時に答えが弾き出されると同時に大きな?が出現する。(これはワナか? 引っ掛け問題ということなのか? さすがに0という答えだけは無いはずだが……しかし……あれか? 小学生なんかで流行ったなぞなぞ的発想を使うとか? いやいや……しかし異世界で現代のなぞなぞが出るとか論理的にありえない……どうすればいいんだ……)


「ククク……貴様ほどの強者であっても苦しんでいるようだな! 難しかろう……答えられぬであろう……そもそも違う世界の問題なのだ! 答えが出せる分けがないのだ! クククククク」

「違う世界の概念? 一つ質問しても良いですか?」

「……うん? まあ今回は特別に一つだけならかまわんが……」

「数学という概念は、この世界に存在するんですか?」

「ククク……訳の分からんことを数学とはなんじゃ!」

「なるほど……答えは0だ!」

「……………………せ、正解なのじゃ……」


 白けた空気の中、祐の答えが周囲に響きわたると彫像は頭を抱え天を仰いていた。


「恐ろしい人間じゃ! 汝がなぜ異世界の秘術を知っていたのか問うまい……見事じゃ! 汝に大いなる力を授けよう!」

「盛り上がってるとこ悪いんだけど今時幼稚園でも教えられそうな問題解いて大いなる力って言われて困るんだけど……」


 彫像は大きく息をのみ言葉を続ける。


「大いなる知恵を持つものよ……汝の殊勝しゅしょうな考え誠にあっぱれじゃ! 我は汝と契約を果たそうぞ!」

「いやいや勝手に話を締めるなよ……いらないって聞こえてないのか!?」

「契約のしるしを汝に残そう……」


 今まで天を仰いでいた彫像がポーズを取ると2つに割れ、光が満ち溢れる。

「トランスフォ~~~~~~~ム」


 なにやら胡散臭い掛け声と共に一人の美少女が出現し上から見下ろしていた。


「我が名は――レインフォルト・アミルド・バラッド! 汝を我が家臣に任命する! 有難く拝命せよ!」


 あまりにも偉そうな美少女は祐の頭上で踏んぞり返りながら短いスカートを揺らしていた。


「……あの……意外に黒なんですね……丸見えなんですが……露出狂の方ですか?すいません僕ノーマルなんで……」

「何を言っている無礼者が我の何が見えるというのだ……」


 美少女ことレインは下から見上げる祐の姿を確認し、徐々に顔を赤く染めていく。


「キャ―――――――――――――この変質者ぁ――――――――――――」


 理不尽極まりない悲鳴と、音速で飛んでくる拳を感じながら祐の思考が暗転していくのであった……


そろそろヒロインの一人も欲しくなってきたので……ここねの登場は、もう少し後になる予定です。

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