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堕天使

作者: 綴 詠士
掲載日:2026/03/03

 何のために僕は生きていたのだろう。


 空を見上げる。

 

 黒と赤の雲に覆われた空だ。


 吐き気がする臭いがずっとしている。歩道には屍が転がり、アスファルトを赤く染めている。

 

 風は止まり、辺りから聞こえるのは羽ばたきの音だけだ。人の声も車の音もしない。


 黒い翼が生えた天使たちが飛び回っている。どの天使も同じ姿だ。長い金髪。青い目は一つ、口には常に笑みを浮かべている。手には一本の長剣を持ち、血に染まっている。


 彼女達は空から地上を見下ろしている。もう動くものもないのに獲物を探し続けている。


「リーファ……」


 世界が終わるまで、僕に連れ添ってくれた天使。


 大魔法によって彼女は壊れ。世界を滅ぼすために堕ちてしまった。

 

 世界の終わり。

 

 定められた未来。

 

 ついにそれが来てしまった。


 来ることは分かっていた。


 リーファから何度も聞いていた。

 

 だけどただの高校生の僕には何もできないし、どうやら世界の人々も何もできなかったらしい。


 気が付けば大魔法が発動していた。

 

 リーファによって、僕以外は皆殺された。

 

 後に残ったのは僕一人。


 一度も狙われなかったのはリーファの恩情なのだろうか。それともやり直せという事か?

 

 目の前には、すべてをやり直すための扉が一つ。


 すべてをやり直すなんて可能なのだろうか。

 

 だけどやり直すしかない。

 

 もう皆死んでしまったのだから。


 この未来を生きても仕方がない。

 

「行くか」

 

 言葉が静かに溶けていく。

 

 雲はどんどん赤く染まっていく。

 

 世界の終わり。

 

 世界の破滅。

 

 それを変える。

 

「よし、行こう」

 

 僕は扉を開き、くぐる。

 

 すべてをやり直すのだ。

 

 そして結末を変えて見せる。

 

 それが僕の中の思いだった。






 

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