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『おもてなしが過ぎる! ~亡国の王女と最強執事の、ボロ屋台からはじめる接客無双~』  作者: 家守 慈絵夢
第七章 超機動接客要塞と、情熱の追跡者
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第77話 暴走するバグと、二次元への強制転移

「私の……絶対バリアが……!?」


 絶対寵愛神兵トゥルーエンドのコクピットで、モモ・ピーチは信じられないものを見るように目を見開いた。

 超機動接客要塞オモテナシオンの黄金の腕が放った極上ハンドマッサージにより、いかなる物理も魔法も無効化するはずのヒロイン補正障壁に、明確な亀裂が入っていた。


「あり得ないわ!私が世界の中心じゃないなんて、こんなの絶対バグよ!運営ェェェ!」


 モモは狂乱し、コンソールを滅茶苦茶に叩き潰した。

 そのヒステリーに呼応し、機体に生きたまま接続されているヘリオス王子たちの体がビクンと跳ねる。


「モモちゃん……愛して……」

「黙りなさい!私のスチルの背景になれるんだから本望でしょ!全部の命をよこしなさい!」


 モモがレバーを引くと、王子たちの体がミイラのように干からびていく。限界を超えて搾取された生命力が、帝都の空全体を覆い尽くす巨大なピンク色の魔法陣を展開させた。


「現実が思い通りにならないなら、世界そのものを私のゲームに上書きしてあげるわァァ!」


 オモテナシオンのコクピットで、ジュリアは息を呑んだ。

「なんて魔力よ……!あいつら、このままじゃ本当に死ぬわ!」


「あんな愚か者たち、放っておけばよろしいですわ。自業自得です」

 ロザリアが冷たく言い放つ。だが、ジュリアは操縦桿を強く握りしめた。


「あんな馬鹿どもでも、帝国の民よ!帝国の軍人として、一人残らず全員生きて逮捕してやるわァァ!」

「客の食べ残しは許さねぇぞ!」

「よし!全員助けて、ついでに帝都からお礼をいっぱい貰おう!」

「特別救助費用の見積もりを作成しますね」


 ジュリアの決意に、キッド、ライラ、オトモが間髪入れずに乗っかる。

『よく言った我が娘よ!全機関フルスロットル!極上のおもてなしパワーで、あのバグを粉砕するぞ!』


 自称未来の父の咆哮と共に、オモテナシオンが黄金のオーラを纏い、空を覆うピンク色の魔法陣の中心へ向かって一直線に突撃した。


「私のシナリオを邪魔するなァァ!」

「ふざけるなァァ!」


 オモテナシオンの拳と、魔法陣の極大の光が激突する。

 次の瞬間、強烈な閃光が視界を白く塗り潰し、世界からすべての音が消え去った。



【システムメッセージ:世界の再構築を実行中……】

【完了。乙女ゲーム『寵愛のトゥルーエンド』強制イベントを開始します】


 ――ピロリロリン、ピコ、ピコ、ピコ。


 ジュリアが目を覚ますと、オモテナシオンの重厚なエンジン音は消え去り、安っぽい8ビットの電子音が空間に鳴り響いていた。


「……え?なにこれ?」


 ジュリアは自分の体を見て愕然とした。

 立体感が、ない。

 自分の姿が、一枚の紙のようにペラペラな平面のイラスト(立ち絵)になっていたのだ。隣にいるライラも、通信モニターに映る万事屋の面々も、すべてが精巧な二次元のイラストに固定されている。機体であるオモテナシオンに至っては、粗いドット絵に変換されていた。


「体が……動かないわ!声も出な……!」


 ジュリアが叫ぼうとした瞬間、彼女の視界の下半分を覆い隠すように、巨大な半透明の枠が出現した。


▼モブ騎士ジュリア

「くっ……なんて圧倒的な力なの……」


「(は!?私、そんなこと言ってないわよ!)」

 ジュリアの意志とは無関係に、彼女の口が勝手に開き、テキストウィンドウに表示された文字通りのセリフを棒読みで発声した。


▼悪役令嬢ロザリア

「わたくしの負けですわ。貴女が真のヒロインよ」


「(ち、違いますわ!わたくしはこんな敗北宣言など……!)」

 ロザリアの立ち絵が、勝手に悔しそうに顔を伏せるポーズに固定される。


▼寵愛のヒロイン・モモ

「ふふふっ、わかったかしら?これが『物語』の絶対の力よ。誰も私の設定には逆らえないの」


 ピンク色のフリル背景の前に立つモモが、勝ち誇ったように笑う。

 完全に乙女ゲームの空間に閉じ込められたのだ。意志も、行動も、すべてがプログラムされたシナリオ通りに強制的に動かされる圧倒的な絶望。


 その時。

 空間のどこからともなく、カチャカチャ、というプラスチックのボタンを叩くような異音が響いた。


『……うーわ、なにこの急展開。悪役令嬢がロボット乗ってるとか意味不明なんだけど。世界観壊れすぎでしょ』


「(えっ?誰の声!?)」


『さっさとこの戦闘イベントスキップして、モモちゃんのイチャイチャルート見よっと』


 カチャカチャ、カチャ。


【システムメッセージ:スキップ不可のイベントです】


『えー、スキップできないの?ダルっ。早く選択肢選んで終わらせよ』


 画面外から響く、退屈そうであくび混じりの声。それはこの世界を外側から消費し、遊んでいる神、すなわちプレイヤー(あなた)の声だった。

 ジュリアたちの立ち絵の頭上に、巨大な白い矢印のカーソルが出現し、同時に画面の中央に二つの選択肢が浮かび上がった。


▶【モモの軍門に下り、一生をモブとして生きる】

 【モモと戦う(※推奨レベル不足:ゲームオーバー確率99%)】


『はいはい、上のやつね。ポチッとな』


 巨大な白い矢印カーソルが、ゆっくりと【モモの軍門に下る】の選択肢へ向かって移動を始める。

 ジュリアの体が勝手にサーベルを下ろし、モモに向かって膝を突こうと動いた。


「(やめて!やめなさい!私の誇りを、そんな安っぽい選択肢で勝手に決めないでェェ!)」


 ジュリアの心の絶叫はテキストには表示されず、無情なピコピコ音のBGMだけが、絶望の二次元空間に鳴り響いていた。


■現在のG-Log掲載情報(自動更新)

【現在地】乙女ゲーム『寵愛のトゥルーエンド』・最終イベントスチル内

【状態】完全二次元化(行動の強制固定)


【登場キャラクター】

・▼モブ騎士ジュリア:【操作不能】(膝を突くモーションへ移行中)

・▼悪役令嬢ロザリア:【操作不能】(敗北モーション固定)

・▼寵愛のヒロイン・モモ:【絶対無敵】(シナリオ進行権限保持)

・■画面外のプレイヤー:【退屈】(早くイベントを終わらせたい)


【次回予告】

このまま強制バッドエンド!?

選択肢が決定される直前、万事屋の意志カロリーがシナリオの枠をぶち破る!

「冷めたポップコーンなんて、美味しくない!」

ライラの噛み砕く音が、二次元のテキストウィンドウを粉砕する!

次回、第78話『二次元世界の囚われ人と、お残しを許さない神殺し』。

お代はきっちり、いただきます!

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