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『おもてなしが過ぎる! ~亡国の王女と最強執事の、ボロ屋台からはじめる接客無双~』  作者: 家守 慈絵夢
第七章 超機動接客要塞と、情熱の追跡者
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第76話 激突、ヒロイン補正VS極上マッサージ

「ロボットなんて乙女ゲームに存在しないのよ!世界観を壊すなァァ!」


 モモ・ピーチの金切り声が、絶対寵愛神兵トゥルーエンドの外部スピーカーから響き渡る。

 彼女の怒りに呼応し、機体の各所から空を覆い尽くすほどの無数のピンク色レーザーが放たれた。それは文字通り、逃げ場のない光の豪雨となって超機動接客要塞オモテナシオンへと襲い掛かる。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!どうやって戦えっていうのよォォ!」


 オモテナシオンのコクピットで、ジュリアは必死に操縦桿を握りしめていた。だが、コンソールに並ぶボタンには「肩もみ」「乾布摩擦」「ツボ押し」といった、およそ兵器とは思えないふざけた名称ばかりが並んでいる。


『迷うな娘よ!己の情熱に従ってレバーを引け!』

 モニターに映る自称未来の父の顔文字が、暑苦しく点滅して叫んだ。


「だから誰が娘だ!情熱でミサイルが避けられるわけないでしょォォ!」

 ジュリアが絶叫したその瞬間、機体が彼女の操作を完全に無視して、あり得ない挙動で右へスライド回避した。


 ズガガガガッ!

 寸前のところでピンク色のレーザーの雨を躱す。


「えっ?」

『おい操縦士!揺らすんじゃねぇ!寸胴のスープがこぼれるだろうが!』


 機内通信から、厨房にいるキッドの怒声が響いた。


『右への回避は俺のコンロの最大火力でスラスターを代行してやる!お前は前だけ見てろ!』

「なんでコンロの火力でロボットが動くのよォォ!」


 ツッコミも虚しく、今度は回避しきれなかった数発のレーザーがオモテナシオンの胸部装甲を直撃した。


「きゃああっ!装甲が融ける!」

『問題ないわ』


 今度は機関室のミルカから、無機質で楽しげな声が届く。


『敵のバリアは物理法則の書き換えね。ならこっちは機体のOSを書き換えるわ。熱血おもてなしプログラム、リミッター解除。被弾したレーザーの熱量は、大浴場の温泉の加熱システムに強制変換するわよ。これでいくら撃たれても湯冷めしないわ』

「温泉沸かしてる場合じゃないでしょ!私たちが蒸し焼きになるわよ!」


 ジュリアの悲鳴をよそに、オモテナシオンの装甲はレーザーの熱を吸収し、プシューッと心地よい温泉の湯気を各部の排気口から噴出させた。


『ジュリア様。敵の単調な攻撃パターンは、ヒステリーに起因する重度の肩こりと同じです』

 さらに指令室から、オトモの冷徹な分析が飛んでくる。

『右斜め上からの攻撃の際、装甲の継ぎ目にコンマ一秒の隙間が生じます。そこへ極上の指圧を』


「だからさっきからアンタたち、自分の仕事のついでにロボット動かさないでよォォ!」

「ジュリア頑張れー。あ、ポップコーン食べる?」


 隣のサブシートでは、ライラが呑気にポップコーンを差し出してくる。ジュリアは発狂寸前だったが、ライラは機体の魔力が低下するたびに、こっそり大精霊の魔力をコンソールに流し込んで関節の駆動を支えていた。


「ああもう、ふざけるなァァ!」

 万事屋の異常なサポートという名のクレームと妨害に振り回されながらも、ジュリアの天性の戦闘センスと軍人としての誇りが、オモテナシオンの動きと完全にシンクロし始めた。


「万事屋流・極上ツボ押し!」

 ジュリアがヤケクソでボタンを叩き込むと、オモテナシオンの巨大な黄金の拳がトゥルーエンドの関節の隙間を的確に打ち据えた。


「きゃああっ!?なんでモブの攻撃が当たるのよぉ!」

 絶対のバリアをすり抜けた衝撃に、モモがヒステリックに叫ぶ。

 彼女は苛立ちに任せ、装甲に繋がれた生体バッテリーであるヘリオス王子たちの生命力を限界まで搾取し始めた。


「私の愛の重みを知りなさい!」

 トゥルーエンドの頭上に、空を二つに割るほどの巨大なピンク色の光の剣、ヒロインの断罪剣が形成された。空間そのものを歪めるほどの圧倒的な質量が、オモテナシオンの脳天へ真っ直ぐに振り下ろされる。


「こんなの避けられないわよ!」

『いまだ娘よ!お客様の重いプレッシャー、真正面から受け止めろ!』

 自称未来の父のシステム音声が、鼓膜を震わせるほどの熱量で叫ぶ。


「だから娘じゃないって言ってるでしょォォ!」

 ジュリアの絶叫と、万事屋全員のタイミングが完全に一つになった。


 ズドォォォォォンッ!!

 オモテナシオンが両手を天に掲げ、振り下ろされた巨大な光の剣を頭上で見事に挟み込んだ。

 真剣白刃取り、いや、極上ハンドマッサージである。


「万事屋流・極上指圧ゥゥ!」

 ジュリアの叫びと共に、オモテナシオンの黄金の腕から凄まじい情熱エネルギーが放たれる。


 パァァァンッ!

 巨大な光の剣のエネルギーが粉砕され、その物理的な衝撃が逆流した。


 ピキッ。

 澄んだ音が空に響く。

 モモの機体を覆っていた、絶対不可侵のはずのヒロイン補正障壁に、初めて明確な亀裂が入ったのだ。


「私の……絶対バリアが……!?」

 モモが驚愕に見開いた瞳で、ヒビ割れた空間を見つめる。


「お待たせいたしましたお客様!ここからが本番のフルコースよォォ!」

 ジュリアが操縦桿を力強く握り直し、反撃の狼煙が高らかに上がった。


■現在のG-Log掲載情報(自動更新)

【機体名】超機動接客要塞オモテナシオン

【状態】接客シンクロ率120パーセント

【搭乗員ステータス】

・メインパイロット:ジュリア(万事屋のクレームに完全適応)

・サブパイロット:ライラ(ポップコーン完食・魔力供給中)

・メインシステム:自称未来の父(絶好調)

・サポートクルー:オトモ、キッド、ミルカ(己の仕事のついでにロボットを完全制御中)


【敵対機体】

『絶対寵愛神兵トゥルーエンド』

・パイロット:モモ・ピーチ(バリアにヒビが入りパニック寸前)


【次回予告】

ついにモモの絶対障壁をこじ開けたオモテナシオン!

しかし、追い詰められたヒロインが帝都全体を巻き込む最悪の魔法陣を展開する!

次回、第77話『暴走するバグと、帝都上空の決戦』。

お代はきっちり、いただきます!

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