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『おもてなしが過ぎる! ~亡国の王女と最強執事の、ボロ屋台からはじめる接客無双~』  作者: 家守 慈絵夢
第七章 超機動接客要塞と、情熱の追跡者
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第75話 彗星の父と、超機動接客要塞オモテナシオン爆誕

「あはははっ!消えなさい、バッドエンドのゴミどもぉ!」


 狂気のヒロイン、モモ・ピーチが高らかに嗤う。

 絶対寵愛神兵トゥルーエンドの巨大な砲口から、参号機スカイ・オモテナシを存在ごと消し飛ばすための極太のピンク色レーザーが放たれた。

 いかなる物理も魔力もヒロイン補正の前に無効化される理不尽な世界で、ジュリアは死を覚悟し、ギュッと目を閉じた。


「隊長ォォォ!!置いていかないでくださいよォォ!」


 その時、鼓膜を破るような泣き声と共に、三機のボロボロの帝国飛行ユニットが参号機の前に乱入した。

 第十三小隊の不憫な部下たち、ザックス、ニコ、ミレイの三人だ。彼らは自らの機体を盾にするように展開し、全魔力を振り絞って巨大な防護結界を張った。


「お前たち!?なぜここに!」


「隊長を死なせるわけにはいきません!隊長が死んだら、この飛行ユニットの莫大なリース代が俺たちの自腹になるじゃないですか!すでに俺の第三腰椎は限界で悲鳴を上げてるんですよォォ!」

 ザックスが血走った目で、悲痛な敬語と叫びを交えながら結界を支える。


「そマ!?マヂでこれ労災案件っしょ!ウチの今日のカンペキなアイメイク、強風で全部落ちて激萎えなんですけど!」

 ミレイが派手な爪を食い込ませ、怒り狂いながら魔力を込める。


「隊長殿!我が深淵を見通す魔眼が限界を告げているであります!このピンク色の不純な魔力、これ以上防ぐのは不可能であります!」

 ニコが分厚い眼鏡を押し上げ、冷酷な真実を中二病ワードで突きつける。


「お前たち……!わかったわ、リース代も労災も化粧品代も、私が全額保証してやるから耐えなさいィィ!」

 ジュリアが部下たちの俗物的な魂の叫びに応えて絶叫する。


 ズガァァァァンッ!!

 ピンク色のレーザーが結界に直撃し、凄まじい衝撃波が空を震わせる。


「脇役がしゃしゃり出てこないでよぉ!目障りなのよ!」

 モモが不快げに叫び、レーザーの出力をさらに引き上げる。


 ピキ、ピキィッ。

 魔法盾に致命的な亀裂が入り、ボーナスゥゥゥ!とザックスたちが血を吐きながら限界の防衛線を死守する。


「持たないわ!このままじゃあいつらまで死ぬ!」

 ジュリアが悲鳴を上げたその時、背後で凄まじい魔力の渦が巻き起こった。


「出し惜しみはなし!今まで貯めた感謝エネルギー、全部叩き込むよ!」

 怒りに燃えるライラがコンソールに飛び乗り、メイン機関の魔力リミッターを物理的に蹴り壊した。


「右舷スラスター停止!機関出力の百パーセントを主砲へ回すわ!回路が焼き切れる前に撃ちなさい!」

 ミルカが凄まじいタイピング速度で船体のシステムを戦闘用に書き換え、余剰魔力を前方に収束させる。


「極大圧縮・灼熱スパイス爆弾、接続完了だ!この船のコンロの全火力を乗せてぶっ放せ!」

 キッドが超高圧の圧力鍋を魔力砲の砲身に無理やり結合させ、オトモが音速で巨大な銀盆を射出し、ビームの収束レンズとして空中に固定した。


「船体が反動で崩れますわ!わたくしの筋肉でフレームを固定します!」

 ロザリアがドレスを破らんばかりに広背筋をパンプアップさせ、巨大な魔力砲の砲身を素手で抱え込んで安定させる。

 串焼きを消された不快感と怒り。万事屋の面々は、この理不尽なエゴの塊を全力で接客するため、各々のタスクを完璧にこなしていた。


「いくぞ!極上おもてなしパワー、全開だァァ!」


 キッドの咆哮と共に、参号機から極太の黄金ビームが発射され、モモのレーザーと真っ向から激突した。

 光と光の拮抗。しかし、無情にもヒロイン補正というバグの力は、正義の熱量をじわじわと押し返してくる。


「馬鹿な……全員のフルパワーでも押し負けるだと!?」

 キッドが歯噛みする。参号機の装甲が熱で溶け始め、いよいよ防衛線が突破されそうになった、その瞬間。


 キィィィィンッ!!

 空の彼方から、空気を切り裂くような異音が響いた。


「……え?」

 ジュリアが空を見上げる。黄金に光り輝く一筋の彗星が、超音速で落下してきていた。それはモモの機体に向かうでもなく、万事屋のビームを助けるでもなく、真っ直ぐに参号機の中央大浴場へ向かって落ちてきた。


 ズドゴォォォォォンッ!!


 ドデカい水柱とクレーターが作られ、甲板に大量の温泉が降り注ぐ。レーザーの撃ち合いすら一時停止するほどの、あまりにも唐突な物理的衝撃。


「な、なによあの乱入キャラ!?」

 モモが目を丸くする。もうもうと巻き上がる温泉の湯気の中から、筋骨隆々で、信じられないほど暑苦しいオーラを放つ全裸の大男が立ち上がった。


「ジュリアァァァ!!遅くなってすまない!私が来たぞォォ!」


 ビシッとポージングを決めながら、見知らぬ筋肉の塊が叫ぶ。

「だ、誰よアンタはァ!」

 ジュリアがサーベルを震わせながら怒鳴りつけた。


「フッ……無理もない。だが聞いて驚け」

 黄金の大男は、キラリと白い歯を見せてサムズアップを決めた。


「私は……未来から来た、お前の父だ!!」


 一瞬の静寂。そして、ジュリアの喉から血を吐くような絶叫が迸った。


「私の父は帝都で書類仕事してる神経質なハゲよ!こんな全裸のゴリラじゃないわよォォ!嘘つくならもっと設定練ってきなさいよォォ!」


「おやおや。規格外の熱量を持った、頭のおかしな不法侵入者ですね」

 ジュリアが激しくツッコミを入れている横で、オトモが泥だらけの顔で電卓を弾いていた。


「ミルカ様。この全裸の男が放つ無駄な情熱エネルギーを、ただの着火剤としてメイン機関へ強制バイパスしてください。……店長、許可を」

「ええ。あんな不快な勘違い女、私の胃袋の全カロリーを賭けてでもぶっ飛ばすわ」


 ライラが手にしていた特大パフェのグラスを床に叩き割り、自身の規格外のカロリーと怒りの魔力をコンソールに直接流し込んだ。


『ピーッ!店長の過剰カロリーと、全裸男の謎エネルギーを検知。機体構造を強制再構築します』


「了解!設計図にだけあった変形機構のプログラム、全部リミッター外して組んでみるわ!」

 ミルカが狂ったような笑みを浮かべ、キーボードを叩き割る勢いでエンターキーをターンッ!と叩き込んだ。


「おいコラ!船が傾いただろうが!火加減が狂う!姿勢制御システムはどうなってんだ!」

 キッドが厨房でひっくり返りそうになる寸胴鍋を必死に押さえながら喚き散らす。


「ガハハハ!お前たちのその熱い魂、確かに受け取ったぞ!」

 自称未来の父は、万事屋の異常な適応力に呼応するように熱く燃え上がるポーズを取った。

「この漲る情熱、極上のおもてなしパワーの源泉と交わり、今こそ真の姿を現す時!」


 男が温泉の底にある動力炉のコアに向かって、全裸のまま生体パーツとして自らダイブした。


 チャァァァーッ、チャラララッ、チャッチャチャァーン!


「……は?」

 ジュリアが間の抜けた声を上げた。どこからともなく、暑苦しいブラスバンド調の軍歌風BGMが、大音量で空に鳴り響き始めたのだ。


「な、なんなのよこの歌は!?」


 ズゴゴゴゴゴッ!!

 参号機全体が、凄まじい地響きと共に謎の変形を開始した。船体が二つに割れ、巨大な腕と脚が組み上がる。大浴場の湯船が強固な胸部装甲となり、極彩色ネオンの看板が頭部のV字角へとスライドする。

 ライラのカロリーと全裸男の情熱を動力源とし、雲海の中に、全高五十メートルを超える超巨大二足歩行ロボットが立ち上がった。


「きゃあぁぁっ!?」

 ジュリアの足元の床が突然開き、彼女は強制的に機体内部へと落下した。ガシャン!と鋼鉄のシートベルトが、彼女をロボットのメインパイロット席へと強引に固定する。


「うわー!ロボットだ!私助手席ー!」

 ライラがどこからともなくポップコーンの巨大な袋を抱えて乱入し、ジュリアの隣のサブシートに勝手に座ってシートベルトを締めた。


「さあジュリア様。貴女がメインパイロットです。我々はサポートに回りますので、あのヒロイン症候群のお客様を存分に接客してください」

 通信機越しに、オトモの涼しい声が響く。


「ちょっとアンタ!なんで私が最前線なのよォォ!」

 ジュリアがパニックに陥る中、正面のモニターに先ほどの男の暑苦しい顔文字が浮かび上がった。そして、野太く脂ぎったシステム音声がコクピット内に響き渡る。


『待たせたな、我が娘よ!俺の名は……超機動接客要塞オモテナシオン!!』

「誰が娘だァァ!そしてなんで私がロボットの操縦士にされてるのよォォォ!!」


『さあ行くぞジュリア!あのお客様の凝り固まったエゴを、全力で揉みほぐすぞ!』


 圧倒的なバグ兵器と、完全にジャンルを間違えたスーパーロボット。

 万事屋の怒りとカロリーが生み出した鋼鉄の巨神が、読者の常識とジュリアのツッコミの限界を置き去りにして、熱血接客プロレスのゴングを今、高らかに鳴らした。


■ 現在のG-Log掲載情報(自動更新)

【機体名】 超機動接客要塞オモテナシオン(旧:参号機)

【状態】 店長の怒りと全裸の情熱による暴走モード(謎変形完了)


【搭乗員ステータス】

・メインパイロット(ジュリア):【強制拘束】ツッコミ過労死寸前。

・サブパイロット(ライラ):【傍観者】ポップコーンの塩味を確認中。

・メインシステム(自称未来の父):【全裸のゴリラ】ただの着火剤。

・サポートクルー(オトモとキッドとミルカとロザリア):【裏方】異常事態をノリノリで完全制圧中。


【共闘者ステータス】

・第十三遊撃隊:【ボロボロ】リース代とアイメイクと魔眼を守るため、全魔力を使い果たし墜落中。


【敵対機体】

・絶対寵愛神兵トゥルーエンド(モモ・ピーチ):【困惑中】突然のロボットアニメ展開に絶句。

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