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『おもてなしが過ぎる! ~亡国の王女と最強執事の、ボロ屋台からはじめる接客無双~』  作者: 家守 慈絵夢
第六章 天空の島々と、竜の住まう国 編
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第69話 要塞変形と、王家式・黄金揉み解し

大理石の床に額を擦り付ける教皇ニンバスの背中は、

見事な筋肉に覆われているにもかかわらず、ひどく小さく見えた。


「私の力では教義を変えられず……妻を救えなかった。どうか、あの苦しみから解放してくれ!」

血を吐くような懺悔が、要塞の深部に響き渡る。


かつて共に空を愛した大精霊シルフ。


白翼教の極端な軽さ至上主義が暴走し、要塞の浮力を維持するための生体動力炉として、

彼女は冷たい鎖に縛り付けられてしまった。

極度の片頭痛と魔力過負荷に苛まれながら、ただ空を漂うだけの存在にされた悲しき精霊。


「……承知いたしました。当店の誇りにかけて、お客様の凝りをほぐしましょう」

オトモが静かに告げる。


だが、事態はそう単純ではない。

シルフの巨体は要塞の構造そのものと何百年もかけて癒着しており、

通常の指圧では凝りの中心である魔力結節点に到底届かない。


「ならば、この要塞そのものを『マッサージチェア』に改造します」

オトモの底冷えするような宣言に、ニンバスが顔を上げる。


「改造……だと?」

「ええ。ミルカ様、いけますね?」

「愚問ね。技術者の血が騒ぐわ」

ミルカが不敵に口角を上げ、弐号機のコンソールへと飛び乗った。


「弐号機の『多脚アーム』と『重力制御アンカー』を要塞の駆動系にリンク! 

 G-Logから届いた応援魔力と、みんなの“感謝パワー”も全部ぶち込んで、

 要塞をトランスフォームさせるわ!」


ミルカの指がキーボードの上で神速の乱舞を始める。


ガキンッ! ズゴゴゴゴ!


重厚な金属音が連鎖し、純白の要塞全体が激しく震動した。

弐号機がコクピットとして要塞の中枢にドッキングする。


白の要塞の巨大な塔が根元から折れ曲がり、巨大な指圧アームへと姿を変えていく。

強固な外壁は波打つように変形し、振動を生み出す超大型ローラーへと再構築されていく。


空に浮かぶ冷徹な城が、シルフの巨体を優しく包み込む

『超大型・魔導マッサージ要塞』

へと生まれ変わった瞬間だった。


「いきますよ……『執事流・要塞整体フォートレス・リリース』!」

オトモが操縦桿を握り、タクトを振るうように指先を動かす。


連動した巨大アームが、シルフの強張った魔力結節点を的確に押圧していく。

ゴリゴリゴリッ!

岩盤を削るような音が、大精霊の体内から響き渡る。


「そこです、もう少し深く!」

「キッド様、蒸気スチームで温熱効果を!」

「おうよ! 極上の熱気を送ってやる!」


キッドが巨大ボイラーを全開にし、

極濃豚骨スープの熱気を帯びたスチームがシルフの身体を包み込む。

だが――。


ガガガガッ! ピィィィィンッ!


突如、要塞のアームが弾き返され、甲高い警報音が鳴り響いた。


「なっ……硬すぎるわ! 長年の酷使で魔力回路が完全に石灰化してる!

 弐号機の出力じゃ押し切れない!」


「このままじゃアームの関節が砕け散るわよ!」

オトモの額に汗が滲む。


どんなに的確にツボを捉えても、それをほぐすだけの絶対的なパワーが足りない。


シルフの我慢と苦痛の歴史は、機械の限界を上回っていたのだ。


『ガァァァァァッ……!』

シルフが痛みに身をよじり、要塞全体が大きく傾く。


「……オトモ、代わって」

操縦席の横に、いつの間にかライラが立っていた。

手には半分食べかけのチャーシューを握っている。


「店長? 危険です、下がって……」

「いいから。オトモはツボに集中して」

ライラは操縦桿を握るオトモの手に、そっと自分の手を重ねた。


そして、眼下で苦しむ巨大な精霊と、軋みを上げる要塞の壁を真っ直ぐに見つめる。


『……このお城、なんだか懐かしい匂いがするの』

ライラの声は、いつもの能天気なものではなく、どこか遠い記憶をなぞるような穏やかさを帯びていた。


王の印章をあっさりと解いた彼女の指先。


亡国の王女の血脈が、この空の要塞の起源と深く結びついていることを、その魂が感じ取っていたのだ。


「ずっと、飛んでてくれたんだよね。痛いの我慢して、みんなを乗せてくれてたんだよね」

ライラは、要塞のコンソールに優しく頬を擦り寄せた。


「……いっぱい働いてくれて、ありがとう」


ドクンッ!!


その瞬間、弐号機の燃料タンクである『感謝メーター』が限界を突破し、計測不能の光を放った。


それだけではない。


ライラの「ありがとう」は、単なるエネルギーの枠を超え、

要塞の深部に眠っていた『王の回路』と激しく共鳴したのだ。


『生態認証クリア。……真なる主の帰還を確認。第一級リミッター、全解除』

無機質なシステム音声が鳴り響く。


純白だった要塞アームが、眩い黄金色へと変化していく。


ライラの王女としての感謝が、要塞の隠されたポテンシャルを何十倍にも増幅させたのだ。


「……お見事です、我が主」

オトモが不敵に微笑み、黄金に輝く操縦桿を強く握り直した。


「さあ、極上の癒やしを……『王家式・黄金揉み解し』!!」


ズドォォォォォンッ!!


黄金の要塞アームが、シルフの最も深い凝りの中心――絶対の魔力結節点を貫いた。


もはや弾き返されることはない。


ライラの感謝によって無限のパワーを得たアームは、何百年分もの強張りを、

優しく、そして力強く粉砕していく。


『あぁぁぁぁぁ〜〜』

シルフの口から、苦悶とは無縁の、純粋な極楽の吐息が漏れた。


溜まりに溜まった疲労物質が黄金の光とともに霧散し、

濁っていた魔力の流れが清らかな風となって循環していく。


パァァァンッ!


シルフを縛り付けていた冷たい光の鎖が、限界を迎えて完全に弾け飛んだ。

自由を取り戻した大精霊が、歓喜の雄叫びを上げて空を舞う。


それに呼応するように、要塞全体が形を固定した。

無菌の冷たい城は、シルフの生み出す極上の風が吹き抜ける、

温かな巨大リゾートへとその姿を変貌させていた。


「おおお……シルフ……!」


妻の解放を目の当たりにした教皇ニンバスは、

あまりの極楽マッサージの余波と安堵感から、

極楽顔のまま白目を剥いて気絶した。


心地よい風が、要塞の最下層まで吹き抜けていく。


強制労働させられていた飛べない鳥人や竜人族の拘束も解かれ、

自由の空気が満ちていった。


■ 現在のG-Log掲載情報(自動更新)


【店舗名】 万事屋オモテナシ・天空リゾート支部

【現在地】 旧・白の要塞(巨大リゾートへ改装完了)


【従業員ステータス】

・ライラ:【真なる主】

 王家の記憶と「感謝」の力で、要塞の隠されたポテンシャルを完全解放。

・オトモ:【超大型整体師】

 要塞をアームとして操り、大精霊の数百年来の凝りを完治させる。

・ミルカ:【狂気の設計者】

 弐号機と要塞の合体システムを確立。さらなる魔改造を画策中。

・キッド:【宴の仕掛け人】

 大精霊解放を祝し、下層の民へ振る舞うカロリー飯の仕込みへ移行。

・ドラ:【魂の解放者】

 同胞の鎖を断ち切り、重き大地の温もりを空へもたらす。


【施設状況】

・大精霊シルフ:【極楽浄土】

 長年の肩こりと魔力過負荷から解放され、心地よい風を循環中。

・教皇ニンバス:【極楽昇天中】

 妻の解放に安堵し、筋肉を見せつけながら最高の笑顔で気絶。


【次回予告】

何百年もの苦しみから解放された大精霊と、自由を手にした鳥人や竜人たち。

空の国に、カロリーと肉食を全面解禁する史上初の「チートデイ」がやってくる!

どんちゃん騒ぎの大宴会の中、自らの重さを肯定したドラが下した決断とは?

要塞そのものをマッサージチェアに変形させるという、規格外の超大型整体劇でした!

ライラの「ありがとう」が要塞の王の回路と共鳴し、無事に大精霊シルフを救い出すことができました。

皆様の熱い応援(魔力)のおかげです!


次回は第六章のエピローグとなる大宴会となります。

続きが気になる方は、ぜひ【ブックマーク登録】と【★★★★★評価】での応援をよろしくお願いいたします!

オトモ「皆様からの高評価が、明日の活力カロリーとなります」

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