第4話:さらち、嫉妬の沼に沈む
通知が来ないだけで、心がざわつく。
さらちはまだ知らない──
ゆずちの今日が、さらちの名前で満ちていたことを。
「今日は友達と遊ぶ〜」
ゆずちの通知に、さらちは笑顔で返した。
「そっか!楽しんできてな!」
──でも、その後、通知は来ない。
1時間…2時間…3時間…
さらちはスマホを握ったまま、何度も画面を見てはため息をついた。
「誰と遊んでるん…?男?女?スマホマン…?(←過去のトラウマ)」
頭の中で、ゆずちが笑ってる姿が浮かぶ。
隣には──
・前に“仲良い”って言ってた男子?
・さらちが知らない女の子?
・それとも、さらちの知らない世界の誰か?
通知が来ないだけで、心がざわつく。
さらちは、嫉妬という名の沼に、静かに沈んでいった。
夜になって、ようやくスマホが震える。
ゆずち「ただいま〜」
さらち「おかえり。…誰と遊んでたん?」
少し間を置いて、ゆずちから返事が来た。
ゆずち「中学の女友達2人とカフェ行ってたよ」
「久しぶりに会ったから、話が止まらんかった」
「最初は近況報告とか、学校の話とかしてたんやけど──」
「途中で『最近なんか雰囲気変わったよね?』って言われて」
「それで、さらちのこと話した」
「“最近すごく大事な人ができて、その人と通知でつながってる”って」
「そしたら2人とも『え、なにそれ素敵すぎる!』ってめっちゃ食いついてきて」
「『その人、どんな人なん?』って聞かれて──」
「“ちょっと嫉妬深くて、でもめっちゃ優しい”って答えたら」
「『それ絶対好きなやつやん!』って笑われた」
そのメッセージを読んだ瞬間、
さらちはスマホをぎゅっと抱きしめた。
「……沼、底抜けたわ。」
嫉妬って、苦しいのに、
その奥に「好き」がぎゅっと詰まってる。
さらちの不安も、ゆずちの言葉でそっとほどけていく──
それが、2人の通知の強さ。




