令和鬼合戦:石切の呪縛~氷結の共鳴~
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特別秘匿資料室の最奥で、羅夢多の黄金の瞳が暴いたのは、歴史から抹消された「地獄遠征隊」の凄惨な最期でした。
羅夢多の七代前の時代。勝利という名の絶望でした。
埃の舞う資料室で、羅夢多は一冊の煤けた古文書――『万延元年初代鬼神王討伐記録』を見つけた。モモが開き読んでくれると鮮明な映像が脳裏を埋め尽くした。
【秘匿資料:犬牙衆精鋭部隊 鬼人王討伐隊】
かつての岡山犬牙衆を総動員した、総勢百名の特攻部隊。それは当時の「最高戦力」を全て注ぎ込んだ文字通りの決戦軍だった。門の向こうは氷結地獄、門は閉じないで鬼人王を倒しすぐに戻ってくる作戦。門を閉じるための決死隊二人も決まっていた。
預言者:時貞 未来予知の忍術を持つ、これまでに何度か未来を当てている。信憑性あり。透き通るような白い肌の少年。魂脈の乱れと引き換えに鬼神王の膝元へと繋がる「門」を予言し、直後に死亡。門は現れ鬼人王が見えた。
総大将:鈴木 鉄斎 羅夢多の七代前、当時の九番隊隊長。勇猛果敢な剣豪であり、部隊の精神的支柱。
技術班:石切家の一族 隊長格ではないものの、特殊な「蟲の忍術」を持つ五十台になるだろう石切 羅門、妻の沙也、成人している二人の子、連と結。病気でもう長くない連と結が門を閉じる決死隊を志願していた。
「羅夢多……見て。この名簿……」
モモが震える指で一行の記録を指し示した。そこには『石切羅門』とその家族の名が刻まれていた。
「い……し……。あの夢の声は、この家族のことだったの……?」
「かもしれないな……この作戦はどうなったんだ?」
モモはページをめくり結果を見る。
「成功かどうかは不明ね。部隊が侵入と同時に門が閉じたみたい」
「勝手に閉じたのか?」
「わからないわ……その後も門は出現し鬼も現れているから全滅したと考えられているの」
「そうか……」
羅夢多の意識が激しく揺れ、視界が『氷結地獄』へと切り替わった。
多くの犠牲を出し、長く激しい戦闘の末に彼らは確かに鬼人王を倒した。だが、王を討っても鬼は無限に湧き出し、氷壁の安全地帯に閉じ込められた討伐隊は、帰還の門すら見失った。
「……意味は……あったのか? 王を倒して、我々はここで死ぬのか?」
疑心暗鬼が広がり、食料が尽きた。極限状態の中、彼らは禁忌に手を染めた。倒した鬼の肉を喰らい始めたのだ。
どのくらいの月日が流れたか。多くの忍者は異形へと変じ、人としての姿を失っていった。だが、「蟲の術」により多くの毒に耐性のある石切一家だけは、強大な力を得ながらも、奇跡的に人の姿を保ち、病だった子供たちも病が治ったようだった。
食料としての「鬼」さえ尽きた時、飢えた同胞たちの濁った瞳が、一際純粋なエネルギーを宿す石切一家に向けられた。
「石切を……食え。アレこそが……一番の薬だ……」
襲いかかったのは、かつての戦友たち。羅門は叫び、応戦したが、多勢に無勢。その乱戦の最中、妻と二人の子供、連と結は、半鬼化した忍たちの顎に消えた。
「――ああ、あああぁぁぁぁ!!」
最愛の我が子を食べられた沙也の絶望。そして、羅門の怒りが臨界を超えた。 羅門は自らの人の皮を脱ぎ捨てるように仲間を殺し徐々に変貌した。
そして、羅門を庇い、血を流しながら狂乱の仲間を斬り伏せていく鉄斎。彼もまた、己の皮を脱ぎ捨てるように変貌していった。それこそが、羅夢多が夢で見た「仲間を殺す裏切りの忍者」の正体だった。
「……っは、はぁ……っ!!」
羅夢多は資料室の床に膝をついた。黄金の右目から、熱い涙が零れ落ちる。
「い……し……きり……」
夢の中で聞き取れなかったあの言葉。
「石切を食ってはだめだ」という悲痛な叫び。鉄斎が既に鬼へと堕ちた自分の最後の人間性だったのか。今となっては分からない。
羅夢多が現在持つ剣。
それは、惨劇の果てに鬼と化した鉄斎が振るい、その後、鬼に刺さったまま地獄をさまよっていたものを、鈴木家の先祖が「戦果」として持ち帰ったものだった。
「……モモ……鬼に殺されたんじゃない。味方に喰われたんだ」
羅夢多の掌が震えている。
悲劇を終わらせるために。羅夢多は石切の血と、天羽々斬に刻まれた呪いを全て背負い、地獄の王を討つ覚悟を固めた。
第四十話をお読みいただきありがとうございました!
ついに明かされた「石切家」の悲劇。 鬼を喰らい、ついには味方に喰われた先祖たち。 羅夢多が手にした黄金の瞳と鈴木家の剣は、その惨劇の生き証人でした。
次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




