令和鬼合戦:深淵の残響~黄金の胎動~
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禁忌の「血」により、肉体的な死を免れた羅夢多。
夢の中で交わされる水杯、歓喜の後の惨劇、そして現れる「真なる王」。
深い、暗い闇の中だった。
医療カプセルの中で眠る羅夢多の意識は、現世の理から離れ、遥か遠くの残影へと堕ちていた。
視界に広がったのは、篝火に照らされた古風な広間だった。
そこには、現代のものとは明らかに異なる、古の装束を纏った忍たちが数名。彼らの前には、威厳ある華族の姿があった。
重苦しい静寂の中、彼らは互いに『水盃』を交わしている。二度と生きては戻らぬ覚悟、あるいは、人であることを捨てるための契約か。
場面は突如として戦場へ切り替わる。
そこには、巨大な鬼の骸を囲み、勝ち鬨を上げる忍者たちの姿があった。彼らはついに『鬼人王』を討ち果たしたのだ。
だが、その輪の中から一人、外れた男がいた。
男は歓喜の声を上げる仲間たちを、絶望に染まった瞳で見つめていた。やがてその目から涙が溢れた瞬間、彼の身体からどす黒い鬼魂脈が噴き出した。
「……ア、アアァ……アガァァァッ!!」
咆哮と共に、男は武器を手に取った。先程まで背を預け合っていた仲間たちを、無差別に、そして冷酷に斬り裂き始める。
勝利の宴は、一瞬にして同族殺しの惨劇へと塗り替えられた。
血の海の中、羅夢多が立ち尽くしていると、目の前の空間が歪んだ。
そこには、自分たちがこれまでの戦いで知ったどの「鬼」とも違う、圧倒的な格を備えた存在が立っていた。
それは、今まさに倒されたはずの王ではない。もっと古く、もっと巨大な『真なる鬼人王』の意志だった。
『……我が血を取り込んだか。忠誠を誓え。さもなくば、永き眠りにつくがよい』
王の言葉が、羅夢多の魂に直接刻まれる。
逆らえば精神は崩壊し、従えば「人」ではなくなる。究極の二択を前に、羅夢多は蒼い鬼火を掌に灯した。
「……断る。俺は、俺たちのやり方でおまえを倒す!」
「……ピ、……ピ、……ピ……」
規則的な電子音が耳に届く。鼻をつくのは、地獄の硫黄臭ではなく、清潔でどこか冷たい消毒液の匂いだった。
ゆっくりと、鉛のように重い瞼を持ち上げる。視界に飛び込んできたのは、見慣れた移動要塞の金属天井ではなく、白く塗り固められた見覚えのある天井――岡山の総合病院の天井だった。
「……気がついたのね。羅夢多」
傍らから聞こえたのは、心底安堵したようなモモの声だった。彼女の瞳には深い隈があり、まともに休んでいなかったことを物語っていた。
「……ここは、地上……か?」
「ええ。源隊長があの白鬼を消し去った後、地獄富士の裏側に安定した『門』が形成されたの。そこを通って、負傷者の一次帰還が行われたわ。貴方は……あれから二週間、一度も意識が戻らなかったのよ」
羅夢多は身体を起こそうとしたが、全身に走る鈍い痛みがそれを拒んだ。白鬼の血によって肉体は再生したものの、その激変に魂脈の調整が追いついていないのだ。
「……夢を、見ていた」
羅夢多の言葉に、記録を取っていたモモの手が止まる。
その夢は、今も網膜の裏側にはっきりと焼き付いている。単なる妄想ではない、血を通じて流れ込んできた「記憶」の断片。
「あれは……一体なんだったんだ」
羅夢多が独り言のように呟き、洗面台の鏡に己の姿を映す。
そこには、以前と変わらぬ自分の顔があった。だが、右目の虹彩だけが、あの白鬼の怒りを受け継いだかのように、鋭い「黄金色」に変色していた。
「血を変換して飲ませた際の影響ね……。身体の損傷は完治しているけれど、その瞳が何を意味するのかは、今の医療技術では解析不能よ」
モモは不安げに視線を落とした。
羅夢多が夢で見た「仲間を殺す忍者」の姿。それは、鬼の力(鬼脈)を取り込みすぎた忍が辿る、一つの可能性なのかもしれない。
「……九十九や源隊長は?」
「九十九は、天照の最終整備のために先に出発したわ。源隊長は……一足先に『門』の向こうへ戻っている。地獄の底で、何かが動き始めたって」
羅夢多は黄金の右目を強く閉じ、再び見開いた。
現世の病院という安らぎの中にいても、彼の魂はすでに、あの暗黒の深淵へと引き戻されていた。
「……行こう。夢の続きを見なきゃいけない」
「何言ってるの!もう少し休みなさい!」
二週間の眠りを経て、一回り大きく、そしてどこか異質な気配を纏った少年が、再び戦場へと立ち上がる。
第三十八話をお読みいただきありがとうございました!
羅夢多が見た、忍者の悲しい過去と古の鬼人王の幻視。
次回、第三十九話。お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




