令和鬼合戦:古き直刀の謎~新たなる牙~
興味をもっていただきありがとうございます。
帰還の祝宴から一夜明け岡山基地・特殊忍具開発局。 今回、大ノ木 モモが着手したのは羅夢多が父・雷電から受け継いだ「一本の直刀」の最終解析でした。
科学の限界を超えたその刀に冠された「名」とは。
岡山基地・特殊忍具開発局。精密機械の駆動音が響くラボの中で、モモは一本の刀をスキャンモニターに映し出していた。
それは羅夢多が所有している先祖伝来の、鍔のない古びた直刀だ。
「……信じられないわね。何度もあらゆる角度から再調査したけれど、やっぱり結果は『不明』よ」
モモが眉間にシワを寄せ解析結果を羅夢多に突きつける。
羅夢多は、自分の愛刀が最新機器で調べられるのを不思議そうに眺めていた。
モモが示したスキャン画像には、刀の細部が克明に写し出されていた。
装飾の一切を省いた実用本位の古い直刀。鍔はなく、柄も使い込まれている。かつて羅夢多の父・雷電が愛用していたもので先祖代々受け継がれているものだ。
切っ先が鋭く斜めに欠けている。一見すれば、激しい戦闘で折れかけた「なまくら」に見える。
「鋼の成分自体はありふれたものよ。特別な霊石や鬼脈伝導体も混ざっていない。……なのに、一切の刃こぼれも、さらなる欠けも起きていない。切っ先の『欠け』すら、雷電が使っていた頃から一ミリも形が変わっていないわ」
「……不思議だよな。俺も地獄で岩を斬ったり、S級の硬い皮膚を叩いたりしたけど、研ぐ必要すら感じなかった」
モモは溜息をつき、モニターを消した。
「魂脈の伝導率にいたっては測定不能――つまり100%無損失で伝わっているわ。……数字には出ないけど損失どころか強化されている気がするのよね」
組織の古文書と照らし合わせた結果、一つの可能性が浮上した。
「……今までの調査と同じで切っ先が欠けていることから『天羽々斬』あるいはその写し。かつて神が八岐大蛇の尾を斬った際、中に入っていた『天叢雲剣』に当たって欠けた――その時に使われた伝説の剣ね」
「神話の剣……そんなわけないよな!」
羅夢多が直刀の柄に手をやる。父・雷電がただの「折れない刀」として使っていたそれが今や世界の命運を握る牙に見えた。
モモは次に、九十九に向き合った。その手には、組織が極秘に開発した「身体強化剤」のアンプルが握られていた。
「九十九、あんたにもこれを使う権利があるわ。身体能力を爆発的に高める薬よ。……でも、一つリスクがある。細胞レベルでの変質が起きればあんたの繊細な重力忍術が使えなくなる可能性がある」
九十九は一瞬だけアンプルを見つめ、静かに首を振った。
「……やめておくよ。俺は重力をやっと理解し始めた。俺は俺のやり方で一番を目指す」
「……そう言うと思ったわ。なら、代わりにこれを持っていきなさい」
モモが差し出したのは、二つの異なる色をした小さなカプセルケース――特製『強化吉備団子』だった。
「羅夢多のは身体強度と回復力を極限まで高める吉備団子で、九十九のは魂脈の強化と回復力を最大化したものよ」
「摂取は1日3個まで。人によって違うけど4個目で魂脈が暴走し肉体に甚大な損傷もしくは死亡してしまう場合があるから個数は守ってね」
「……1日3個か。わかった。ここぞという時まで取っておくよ」
「実戦の前に、その力を体に叩き込みなさい!」
モモの号令で二人は基地内の地下二階、雉翼衆訓練場へと移動した。
羅夢多は新型籠手『煉獄』を装着する。
「九十九、行くぞ。……一個目だ」
二人は同時に「強化吉備団子」を口にした。
「――っ、あ、ああああ!!」
羅夢多の血管が浮き上がり蒼白い『鬼火装』が爆発的に膨れ上がる。
フィジカル重視の吉備団子が地獄で鍛えた肉体をさらに強制活性化させていた。
「……ふぅ。……視界が、澄み渡るようだ」
一方で、魂脈重視の吉備団子を摂取した九十九の周囲では、空間が目に見えて歪み始めていた。魂脈が跳ね上がり術の制御が難しくなっている。
「来い、羅夢多!」
「おおおっ!!」
羅夢多が地面を蹴る。籠手『煉獄』が『鬼火装』の熱を吸い込み「蒼炎の籠手」として補完する。
九十九はそれを迎え撃つべく掌を向ける。
「『土遁・重圧連陣』!」
演習室の床が九十九の意志一つで陥没していく。羅夢多は身体強化による異常な反応速度で一気に九十九の懐へと潜り込んだ。
「……捕まえたぞ!」
「甘いな、羅夢多」
九十九が指を弾くと羅夢多の全身に局所的な超重力がかかり、その突進を強制停止させる。
二人は汗だくになりながら数十分間にわたり極限の組手を繰り返した。
第十九話をお読みいただきありがとうございました!
父・雷電の直刀が伝説の「天羽々斬」である可能性。そして、九十九の誇り高い選択と強力ながらも危険な「吉備団子」の導入。
次回、第二十話。お楽しみに!
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