令和鬼合戦:氷獄の亡霊~百年の沈黙~
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藤林の放つ龍に乗り、一行は氷結地獄の脱出へと突き進みます。 しかし、そこは地図も理屈も通用しない、白銀の迷宮。
杉山白梅が展開する『空遁』の防壁が吹雪を辛うじて防いでいました。 響弦の超感覚を頼りに進む一行が辿り着いたのは、吹雪の届かぬ奇妙な「無風地帯」。そこで彼らが見つけたのは……。
氷結地獄の「空」は、もはや空気の流動ではなかった。それは、魂脈さえも凍てつかせる死の奔流。猿掌衆総大将、杉山 白梅が展開する『空遁・大気牢閣』の不可視の壁が、龍を包み込むように防護していなければ、精鋭たちとて数秒で氷像と化していただろう。
「……右だ! 氷柱の群れを潜り抜けろ!」
龍の頭上で、大阪雉翼衆 一番隊隊長 響 弦が鋭く叫ぶ。
彼は、何も見えない猛烈な吹雪の中、氷壁に反射する魂脈で周囲の複雑な地形を正確に描き出していた。しかし、時速300kmに近い龍の移動速度と、刻一刻と形を変える氷結地獄の地形に彼の精神は限界まで磨り減っていた。
「……止まれ! 急停止だ!!」
弦の悲鳴のような制止に、藤林が即座に龍を停止させる。一行が目にしたのは、吹雪のカーテンが不自然に途切れ、ぽっかりと口を開けた直径百メートルほどの大穴だった。
「これは……『無間地獄』への入り口か?」
副隊長の謙心が穴の底を覗き込むが、光すら届かぬその深淵は、ただ虚無を湛えている。急に目の前に開いたかのようなその穴の周囲だけは、吹雪が届かぬ無風地帯となっていた。
「……ここで結界を張るわ。全員、一分でもいいから休みなさい」
白梅の指示で一行は少し休憩することにした。防護結界を展開し鬼の襲撃や吹雪に備える。
氷結地獄という場所は、ただ存在するだけで魂脈と体力を吸い取る渇いた地だ。結界の守りの中でようやく人心地ついた一行は、体力を取り戻すべく深く息を吐いた。鬼が来ないことを祈りながら。
「いっ……」
岩陰に腰を下ろそうとした羅夢多が、鋭い痛みに顔をしかめた。ふと手元を見ると、雪に埋もれた「何か」に触れ、指先が切れていた。雪を払いのけると、そこから突き出ていたのは、一振りの忍刀だった。
「……刀? 」
「……まさか」
白梅がその刀を手に取り、刀身に刻まれた紋章を見た瞬間、その表情が凍りついた。羅夢多が刀の主を探して周囲を掘り起こすと、そこには犬牙衆の旧式外骨格を纏った遺体が埋まっていた。
「……この男、見覚えがあるわ。百年前、鬼人王討伐に送り出され、誰一人戻らなかった特務討伐隊の隊員よ」
白梅の瞳に驚愕の色が走る。だが、不可解なのはその死因だった。遺体を検分した源隊長が、冷徹な声で告げる。
「鬼の爪跡ではない。……この男、背後から忍刀で突かれている」
周囲を調べると、雪の下から次々と討伐隊の遺体が見つかった。どれも鬼と戦った形跡はあるものの決定的な致命傷はすべて味方であるはずの忍刀や忍術によるものだった。
極限状態での仲間割れか。それとも、鬼人王には「人を操る能力」があるのか。 百年前この地で一体何が起きたのか。
「……白梅様、嫌な音がします」
響弦が、ヘッドフォンを押さえながら穴の底を指差した。無間地獄の奥底から何かが聞こえてきた。
第十一話をお読みいただきありがとうございました!
杉山白梅の『空遁』に守られながら進む一行が、つかの間の休憩で見つけたのは百年前の悲惨な痕跡でした。 鬼ではなく、人によって殺された忍たちの謎。
次回、第十二話。 物語はさらなる深淵へと向かいます!
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※AIとの共同執筆作品となります。




