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一話 泥団子は臭くないだけでほぼ糞です。

一章 首吊り少女の晴れ願い


公園の隅っこにある小さな砂場で彼はよく遊んでいる。彼とは言ったものの性別も名前も年齢も何が好きかも、要するに僕はその子のことを何も知らない。その子も僕のことなんか全く知らないだろう。知ろうとも思っていないのかもしれない。

今日も同じ場所で彼と会話をしている。


「最近ずっと暑くない?地球温暖化しすぎだよ。温暖化って言うかもう熱帯化って感じだよそんな言葉あるのか知らないけどさ」


僕は手を団扇代わりにしてパタパタと顔を扇ぐ。こんなことしても気休め程度だが気が休むのならやった方がマシだろう。


「ねぇ知ってる?こんなに暑いのはこの町だけなんだよ。他の町では普通の冬らしいしなんか特別感があって良くない?」


冬で三十度を超える異常気象。辺りを見回して見ても全員半袖を着ている。ここだけ南国のリゾート地のようだ。


「しかもしかもこの町ってずっと晴れてるんだよ。

ニュースで見たんだけと半年間連続で晴れてるらしいよ」


こっちとしては泥団子作れるしありがたいけどね。と彼は続けた。雨でも雪でも台風でも泥団子作ってたやつが季節を気にする物なのか。今だって僕を見向きもしないで泥団子と見つめあっている。

.....わざと壊してみようかな。

やっぱやめとこ、ボコボコにされそうだ。


「そういや最近なんか流行ってる物ないの?」


「流行ってるものかーそうだなーー良く知らないけど可愛いシールとか可愛い鉛筆とかわいい筆箱とかそんぐらいかな。小学生なんて単純な脳みそしてるからね。丸っこくて可愛い色してるものに惹かれるものなんだよ」


「その理論で行くと君にとっての泥団子は丸っこくて可愛い色ってことになるけど?形はわかるけど色は可愛くないでしょ」


茶色は可愛いかも知れない。丸という形も可愛いだろう。だがその二つが組み合わさると最悪の物に変貌する。


「センスない人はみんなそう言うんだよ。泥団子はいいよ。何が良いって元が汚い砂なのに磨けば磨くほど綺麗に固くなっていく、その過程が人間の努力みたいで美しいんだよ。色だっていっぱい磨けば綺麗な黒色になるしね」


彼は泥団子を自分の子供のように優しく撫でている。

長い間磨き続けるから愛着も湧くのかもしれない。

泥団子のことをそんな風に見る人がいたとは。しかもそれが小学生の口から出るとは。

と言うか黒い泥団子とかほぼ糞だ。

ヒェッめっちゃ睨んだきた。


「まぁ磨くの頑張っておくれよ。僕はもう帰るよ。また明日」


僕はベンチから重い腰を上げると砂場に座っていた彼も立ち上がった。手についた砂をぱんぱんと叩いて落とした後に泥団子を持ってついてきた。


「・・・泥団子持つならさ汚れ落とす必要あった?」


「こう言うのは気分だよ。じゃ途中までご一緒するよ」


作った泥団子の中でも特に綺麗な二つを手に取って落としてしまわないようにゆっくりと赤子を抱くように歩き始めた。


「そうそう、そう言えば流行ってるかわ分からないけど面白そうな都市伝説があったよ」


しばらく会話をせずに歩いていたところ思い出したように話し始めた。


「ふーんどんな?」


「モザイク男って知ってる?」


「モザイク男?知らないな。全身が規制されてるってこと?」


「いや、全身じゃなくて顔だけモザイクみたいなノイズみたいのがかかってて顔だけが見えないんだって。その男は決まってスーツを着てるらしいよ。

そのモザイク男に会ってしまうと自分の顔の皮が剥ぎ取られて顔に黒いノイズが走ってしまうんだとさ」


随分と恐ろしい都市伝説だ。それが事実じゃなくて空想の類であることを期待しておこう。現実にそんな奴がいたら気味が悪い。まだ口裂け女の方がマシだろう。口裂け女はハサミが武器だから遠距離から倒せそうだし。


「へぇそんな奴がいるのか。どんな仕組みでそうなっているのか気になるな」


はぁ、やっぱり自覚なかったか。という声は僕の耳には届かずに霧散してしまった。


「じゃこっちとは帰るルートが違うからここでお別れだね」


彼はそういうと先程まで赤子のように大事に抱えた泥団子を全て道路に叩きつけて踏みつけた。

当然、綺麗に磨かれた泥団子は無惨にも砕け散った。


「あーあ勿体ない。人間の努力みたいで美しいんじゃなかったの?」


そう言っている間にも彼の足は先程まで泥団子だったものを踏みつけている。


「一つ勘違いをしてるよ。人の努力が好きだけどそれよりもその実った努力を思いっきり踏み躙るのが楽しくて楽しくて仕方がないんだよ」 



「そうかい。ま、いいんじゃない」


平然と恐ろしいことを口にする彼の将来が楽しみだ。いつかニュースで見る時があるかも知れないなぁ。

殺人事件とかそっち方面で。


「人間誰しも人を蹴落としたくなるもんなのさ。親友さん」


「じゃまた明日」


「じゃまたいつか」


「そうだ最後に言っておかないと行けないことがあるんだった。晴れ女に気をつけてね」


どういう意味か問う前に彼は走り去ってしまった。

僕も深く考えずにその忠告を頭の片隅に留めておこうと思ったまま仕事に向かった。

ちなみに彼がまたいつかと言うのは約束破った時に言い訳するためらしいです。通用するのかはよくわかりません。


やることない時とか暇な時とかに見てください。

多分週一で投稿できたら嬉しいなぁ。

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