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BONUS STAGE2・虎一と悠紀

 大村虎一が梅津悠紀という男と出会ったのは、中学3年の頃だった。

 前の学校では手のつけられない程の荒くれ者で、その腕っぷしに絶対の自身のある俺は、強い奴と聞けば喧嘩を吹っ掛ける暴君だった。

 転校と、両親に泣いて懇願されたのを期に、俺は荒ぶる心を押さえつける様になった。

 一時期の様な暴れぶりはナリを潜めたものの、やはり時折熱くなるのは殴り合いたくなる、元来の闘争心。

 そんなに人を殴りたければ、何かスポーツにでもぶつければいい、と人は言う。ルールに雁字搦めになる格闘技モドキなどはまっぴらゴメンだ。

 そんなある日、「この学校に凄く強い男がいる」と噂に聞いたのは間もなくのことで。そうすると湧き上がってくるのはメラメラと心に焚べる火の付いた薪。

 殴り合う気はさらさらないが、どんな奴かは気になる。

 噂と情報をすり合わせると、どうやら同じ学年らしい。

 休み時間や、放課後に他のクラスに偵察の日々。

 いかつい同級生に話しけられた相手はもれなく顔面を強張らせ、怯む。

 結果分かったのは、目的の相手は隣のクラスの人間だった。

 うーん。思っていた感じと違うな。どんなに屈強な奴かと期待していたが。

 見た目にはごく普通の男だ。優男、とまではいかないが、少なくとも喧嘩で慣らしたようには思えない。まあ、人は見かけじゃない。ああ見えて手練れかも知れない。

 ターゲットの動きを観察するために跡をつける。

 商店街。俺の帰り道とは真逆だったが、好奇心の方が遥かに上回る。

 そいつは生活感溢れる商店街の中を突っ切ると、ある店の前で折れる。

 見ると、そこはゲームセンターらしい。ゲームに縁のない俺には、ガチャガチャと耳やかましい店内は不快で仕方ない。

 ターゲットは店員さんらしき女の人と2、3言葉を交わす。遠目から見ても巨乳のお姉さんに抱きつかれている姿を見ると、知り合いでもないのに軽い殺意が湧くのはなぜだろう。

 ターゲットは、財布から札を取り出し、両替機に投入。返って来た小銭を手に、ゲーム筐体へと赴いた。

 いつになったら客の胸ぐらを掴みカツアゲに走るのだろうと眺めているも、そいつの放課後は決まってゲーセンに通うという日々。その際巨乳お姉さんに頭を撫でられたり、過剰なスキンシップを見せられて、辟易した。なんだ、ただのゲームオタクじゃねえか、と。

 向かい合っているゲームは対戦型格闘ゲームとやらで、向かい合わせた筐体の向こうから、楽しそうな声とともに乱入が途切れることは無かった。

 強い、と噂されていたのは何のことはない。ゲームの腕にすぎなかった。  

 俺は、一気にターゲットへの興味が薄れた。

 

 ある日。

 学校の廊下でバッタリとアイツと鉢合わせた。興味の無くなった俺は、何を気にすること無くすれ違うつもりだった。

 だが、ほんの気まぐれ。ふとした疑問を投げかけた。それが俺の運命を変えた。

「・・・どれだけゲームが上手くても、実際に強くなるわけじゃない」

 見知らぬ奴に訳の分からない質問をされても、そいつは表情ひとつ変える事無く、こう答えた。

「俺より強い奴でも、ゲームの中なら勝てるかも知れないだろ?」

 虎一の目から、何か見えない物が吐き出された気がした。

 それが『鱗』だと理解したのは、そいつが廊下の向こう側に消えたのに気づいた時だった。

 それから俺は、そいつを意識する様になった。厳密には、そいつが目を向けるゲームへと。

 ゲームなんて、ガキの遊ぶもんだ、と軽視していた。とんでもない。

 幾重にも重なり合った思考と戦略。小手先だけではない。しっかりとした技術の有無を必要としていた。それは娯楽の先を行く領域に思えた。

 道を極めようと研鑽を積む者にしか踏み入れられない、戦場。

 はじまりはこんな感じだ。

 悠紀には感謝している。何も目的も無く生きていた、さもすれば将来も変わらない人生であっただろう自分をここまで引っ張り上げてくれた。

 俺は、お前のことが好きだ。

 だから、俺は万感の思いを持ってお前にぶつかる。

 人は俺達のやっていることを大げさと嘲るだろう。かつて、俺も抱いていた思いだ。

 それもお前は関係ないよ、とか言うんだろうな。お前はいつだって自分の楽しいことを追求してきた。

・・・そろそろ始めるか。

 俺と、お前の。

 血の滾る様な熱いバトルを!

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