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第四話)愛しのビックウェスタン・ライスフィールドリバー様

 戦場で一人の男のが敵の女に恋をするという作品をよく目にするかもしれない。例えば近年上映された3D映画がまさにそれであるといってもいいかもしれない。


 では、現実世界でそれは起こりうるのか。おそらく上記の事はまず起こり得ないだろう。だがこれに似たケースは幾つか存在する。今回は私の友人を例にとってみる。




 それは一ヶ月前のことだった。突然私の友人であるX氏から電話越しにこう言った。


「なあ、大西田川。俺、恋をしたんだけど…。」


 ちなみに、X氏が言った大西田川というのは私の名字である。こんな奇妙な名前だが紛れもなく私の名字である。笑いたければ笑うがいい。私は少なくともこの奇妙な名字を気に入っていたりする。


 話が若干脱線してしまった。あのX氏が恋をした。…いや、『した』というより『してしまった』といい変えた方がいいのかもしれない。事実、私はX氏は恋愛事には全くの無頓着かと思っていた。


「…なあ、嘘じゃないよな?」


 私はそう聞くと、X氏は断固否定した。


「嘘じゃない、嘘じゃないんだ大西田川。マジで、マジで俺は恋をしたんだ。」


 そこまでX氏が言うのだからおそらく本当の事なのだろう。では、X氏は誰に恋をしたというのか。私は気になってX氏に聞くと彼はこう答えた。


「それは今から二、三ヶ月前のことだった。私は職業柄、人を更正したくなる。正義の味方だからな。もちろん彼女もそのうちの一人だった。当初私はあれこれと色々なことを試したが、彼女を更正することはできなかった。そして気づいたら彼女を好きになってしまった。」


 途中を省略しすぎているX氏の発言に私は妙な違和感を感じた。はて、何なのだろうか。私はその違和感を感じたまま、一つ質問をした。


「…全く、今まで恋愛事には無頓着のお前が恋をするとはな。ところで、お前が恋をした女というのはどんな感じなんだ。」


 あの恋愛事には無頓着のX氏が恋をしてしまった女とは一体どういう人物なのか。私はその時無性に気になってしかたならなかった。


 だがこのあとすぐに、私はX氏にその質問をしてしまった事に後悔をしてしまった。


「先に言っておくが俺は恋愛事に全くの無頓着じゃないんだ。俺の好みの女がいなかっただけなんだ。…まあそれは置いといて、どんな女かって?それはそれはとても可愛いんだ。長髪で黒い眼鏡から覗かせる鋭い目つきなんか、もうむっちゃくちゃサイコー。そして彼女の白くか弱そうな腕はなんかは究極のチートだ。名前は分からないけど、仲間からは『ビックウェスタン・ライスフィールドリバー様』って呼ばれてる。」


 間違いない、それは私の愚妹の浩だ。以前彼女の友人と思われる人物からそう呼ばれていたのを聞いたことがある。因みに彼女のあだ名の『ビックウェスタン・ライスフィールドリバー』とは彼女の名字である大西田川をそれぞれ英語に直したものである。余談だが、ライスフィールドとは日本語で田んぼを意味する。


 そういえば先日、愚妹がこんな事を言っていた。『最近妙な男が私の周りでうろついてる。最初のうちはまだ良かったが、最近は色々と変なものをおくって来る。今日なんか鞭を渡してきやがった。』間違いない、その男がX氏に違いない。さっきまで感じていた違和感が消えた。それにしても、鞭を渡してくるとは…。X氏はマゾなのか?


 話を戻そう。とにかく私はとんでもないことを聞いてしまった。X氏が恋をしたあの愚妹のどこがいいのか。鋭い目つきをする愚妹のどこが可愛いんだ?X氏の好みが私には理解できない。とりあえずX氏には『君の恋した女は私の妹だ。』なんて事は言わないでおこう。言ったら言ったで厄介なことになるのは確実だ。早いうちに電話を切りたい。


「それで、そんなことを言いたいがために俺に電話をかけてきたのか?」


「違う。俺は大西田川に相談をするためにかけたんだ。どうも俺は色々と素敵な贈り物をしているのに、彼女に全く好かれてないんだ。どうすれば私は『ビックウェスタン・ライスフィールドリバー様』に好かれる思う?」


 そのような贈り物、お前と一部の人間にしか喜ばれないだろうよ。何だかこのような人間の質問に答えるのが馬鹿馬鹿しい。私はX氏にあまりにも適当すぎる助言をした。


「適当に踊っとけ。」


 そう言うとX氏は分かったといって電話を切った。果たしてX氏は本当に愚妹の前で踊るのだろうか?




 それから数日後、私は居間でグッタリとしている愚妹を見かけた。いつも無駄に元気のいい愚妹がどうしてグッタリとなっているのか。私は愚妹に聞くと、彼女はこう答えた。


「私の目の前でヲタ芸をされるとそりゃあグッタリするよ。」


 そう言って愚妹は力尽きた。




 X氏の恋が実ることはまずないだろう。私はそう思ったのだった。

読んでいただきありがとうございます、佐津佐です。X氏の好みは作者の私でさえ理解できません。そもそもビックウェスタンをどう想像しても私には可愛いとは思えません。むしろかっこいいの方が合ってそうな…。

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