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第三話)小林さんと大林さん

とあるレストランに一人の長身の男が座っていた。彼の名は小林直樹という。小林はある女性を待っていた。彼女の名前は大林というがまだ一度も会っていないのでどんな姿をしているのか小林は知らなかった。


「あの、小林さんですか?小林直樹さんでいらっしゃいますか?」


 唐突に小林の後ろのほうで声がした。小林は後ろを振り返ってみると、そこには一人の小さな女性がいた。どうやら彼女が大林のようだ。確認のため小林は声を掛けてきた女性に聞いてみた。


「あなたが大林さんですか?」


「はい、私が今日からあなたとタッグを組む大林隆子でし。」


 何なんだ、この萌え要素は。小林はそう思った。大林という女、あまりに小さいので小学生のように見える。いや、本当に小学生なのかもしれない。そして恐ろしいほどかわいい。さらに大林は自己紹介で噛んだ。これはさらに彼女をかわいくさせる。まさに彼女は歩く萌え要素といっても過言ではない。


「聞きたいことがあるんだけれど、君って二十歳すぎてるよね?」


 そう小林が聞くと大林はすぐさま答えた。


「もちろんですよ。こう見えて私、二十五なんですよ。」


「でも、絶対小学生に間違われるよね?」


「よく言われます。お譲ちゃん、小学生だよね。おじさんと一緒に楽しいことをしないって、今までに何十回も言われたことがあります。そして…。」


「まじで!?言わなくていいから、これから先のことは全く何も言わなくてもいいから!」


 大林の衝撃告白に小林はただただ驚くしかできなかった。名前の割に体の小さな大林のことだ。確実に本人にとって嫌なことをされているに違いない。これ以上大林につらいことを思い出させたくない。そう思った小林は大林にこれ以上話さないようにさせるため何か別の話題はないか探した。


 しかし大林はなぜか目を輝かせてこう言った。


「そして私はそんなことを言ってくる男どもを全員、これでもかというくらいボッコボコにしてやりました。」


 なんかすごいことを大林は言っているが、小林はどう言えばいいかわからなかった。かわいい顔してえげつないことを言いやがる。大林が言ったことは本当なのか。とりあえず小林は大林に事の真相を聞いた。


「ええっと…、それはは本当のことなのかな?どうも君が言っていると信用ならない。」


「本当ですよ、信じてください。こうみえても腕っぷしは強いんですよ。なんならここで証明しましょうか?そこにいる割と恐そうなおじさんで。」


「いやいやいやいやいや。やめやめやめやめ。とりあえずそれだけはやめろ!」


「えー。人を殴るのって割と快…」


「もうその話はやめろ!俺たちはそんな話をするために集まったのか?違うだろ。…全く、肝心な話が一つも始まってないじゃないか。」


 小林がそう言うと大林はそういえばそうだった、すっかり忘れていたわと言わんばかりの顔をしてこう言った。


「あー、そうでしたね。すいません、はしゃぎすぎちゃいました。ところで私たちは何と戦えばいいんでしょうか?」


 小林の質問に大林は腕を組みしばらく唸りながら考えた。何と戦えばいいのか。現実はテレビの特撮と違って自分たちで決めていかなくてはならない。だが、何と戦うかについては別に何でもいい。たとえそれがある一つの些細な事件であってもだ。正直なところ小林はどちらかというと事件と戦っていきたいほうだ。それはただ単に小林の腕っぷしは全くないに等しいからだった。もしタッグを組む相手の腕っぷしが弱ければ一つの事件と戦っていく方針で何とかなったかもしれない。だが現実は腕っぷしの強い人間と組むこととなったので小林の思い通りにはなりにくそうだ。


 しかし、ものはためしという。小林は大林に聞く。


 「とりあえずさ、一つの社会問題と戦って行くって方針でどう?たとえばある不祥事の徹底追及とかをさ。」


 もちろん、大林は小林の案を受け入れようとはしなかった。


「だめです。そんなのは企業に勤める人間とかテレビの関係者に任せればいいです。」


 大林の言い分はもっともだった。確かにそういうものは企業に勤める人間かテレビの関係者に任せればいい。だとすれば何と戦えばいいのか。再び小林は腕を組んだ。


 しばらく考えてもなかなかいい案が浮かばない。しばらく考えているうちに大林がぽつりとこんなことを言った。


「あのですね、私には許せないことがあります。それは私を小学生間違いをすることです。そのおかげで嬉しいことがありますが殆どのことは許せません。もちろん、そんなつらい目に逢っているのは私だけではありません。ですので私は小学生間違いをする人を、…する人を…」


 大林の発言に小林は感動しかけていた。大林は身長が高いので小林のような目に会ったことはないし、これからもないだろう。だが実際は全員が全員小林のように身長が高いわけではない。大林のように身長が低いものだっている。大林のようなつらい目に逢っている人のために戦う。それなら別に文句はない。いや、むしろ戦いたい。小林はそう思っていた。


 大林は続けて言った。


「…そんな人をこれでもかというくらいに殴りたいです!」


 前言撤回、今の大林の一言で小林の感動は一瞬で覚めた。そして小林は言った。


「だめだだめだ、そんなの駄目だ。人を殴るのはナシだ。もう一度考え直そう。」


 小林はそう言い大林のブーイングをかわしながら、三度(みたび)考えたがこれといってなかなかいい案が浮かばず、その日のうちに何と戦えばいいのか決まることはなかった。

読んでいただきありがとうございます、佐津佐です。この二人たちはいったい何と戦うのか気になります。そしてなんという名前で戦うんでしょうか。

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