第一話)赤い馬鹿と、緑のやる気者
「レッドさん、我々はこれでもヒーローですよね?」
全身緑色のタイツに緑色のお面を被った緑装束の男が、レッドと呼ばれた男に尋ねた。レッドと呼ばれた男もまた全身タイツにお面を被っていた。ただ、緑装束の男と違うのは全身赤色のタイツに赤色のお面を被っているところだった。
「何を言っているんだ、イレイサーグリーン。我々はちゃんと戦闘服を着ている。それに我々は今まさにヒーローらしいことをしているではないか。そんな我々を見て誰が我々を悪者だとみなすだろうか。」
イレイサーレッド(以下、レッド)はイレイサーグリーン(以下、グリーン)の質問にそう答えた。だがグリーンはレッドの答えにあまり納得をしていなかった。
「いや、全身タイツに縁日の屋台で普通に売られてそうな安っぽいお面を被った戦隊を見たことがありません。それにご町内の清掃活動をしているヒーローなんか見たことがありません。…レッドさん、周りの人々の視線が痛いです。」
そう、レッドとグリーンは今、ご町内の清掃活動に勤しんでいた。そして彼らの奇妙な格好に、一緒に清掃活動に勤しんでいる一般人はそんな彼らを見て不気味そうに見ていた。中には彼らを見て笑うものもいた。
「何を言っているんだイレイサーグリーン。最初はどの戦隊だってタイツにお面だ。そしてグリーン、この視線は我々ヘの感謝の眼差しである。我々を見て笑うものはただ馬鹿なだけだ。」
いや、僕たちを見て笑う人間よりもレッドさん、あなたの方が馬鹿ですよ。グリーンがレッドに対しそう言おうとしたとき、悲鳴が聞こえた。
「レッドさん、この悲鳴は……!」
グリーンはそう言ってレッドを見た。しかしレッドはとんでもないことを口にした。
「イレイサーグリーン、今はただ清掃活動に従事せよ。今の悲鳴はきっと黒いアレを見て上げたものなのだろう。ほら、黒いアレが出たというだけで消防に通報するという話がある位なんだ。…全く、黒いアレを見て悲鳴を上げるようなヤツは木の上でゴーゴーダンスでもしていればいいんだ。」
冷静な口調でレッドは言った。
ツッコミ所が多すぎる。どのようにツッコめばいいのか。そして、これでもレッドはグリーンからしてみれば上司である。そんなレッドにツッコンでいいものなのか。グリーンは分からないでいた。
そんなグリーンを見てレッドは言った。
「イレイサーグリーン、何か言いたいことでも?」
「ええ、ありますよ、色々と。…レッドさん、何故戦おうとしないんですか。仮にも私の上司的立場の人間であるあなたが、こうもヒーローらしくないことを言っていいものなのでしょうか。レッドさん、もしかして戦うことが恐いんじゃ…。」
「別に恐いというわけじゃない。ただ、二人で戦うヒーローなんているわけないじゃないか。それに俺達のチーム名は[イレイサーファイブ]といって二人で戦うのはちょっと…。」
今更ではあるが今この清掃活動の場で全身タイツにお面を被っている人間はレッドとグリーンしかいない。そして彼らは[イレイサーファイブ]の一員として戦っている。では、残りの三人は誰なのか、そして今何をしているのか。今この話をするのはやめておこう。なぜならこの時、レッドのあまりにも勝手すぎる発言に、グリーンの堪忍袋の緒が切れたからだ。
「オイ赤人間、何言ってんだよ!二人で戦うヒーローは探せばいくらでも見つかるんだよ!それに五人で戦うヒーローだってはじめは一人で戦うってこともあるんだよ!オイ、赤人間、お前と一緒に行動するのはうんざりだ。僕一人で悲鳴のあったほうに行ってきます!」
そう言ってグリーンは悲鳴の聞こえた方に向かって、ゴーゴーダンスなんて古すぎるんだよ、と大声で叫びながら走って行った。それを見てレッドは、行ってらっしゃい、と言ってグリーンを見送って清掃活動に勤しんだ。
それから二、三分してグリーンはトボトボとした足取りでレッドの元に帰ってきた。
「おかえり。で、どうだった?報告しなさい。」
レッドが聞くとグリーンはこう答えた。
「すべてがレッドさんの言うとおりでした。悲鳴は黒いアレを見てあげたもので、悲鳴をあげたと思われる人間は木の上でゴーゴーダンスをしてました。」
「報告ご苦労。イレイサーグリーン、引き続き清掃活動に従事せよ。」
「イエス、サー!」
レッドの命令にグリーンはそう言って敬礼し、引き続き清掃活動に勤しんだ。
余談だが、その後イレイサーグリーンはイレイサーファイブから脱退することはなかった。
稚拙な文章を読んでいただきありがとうございます。「佐津佐耀」と書いて「サツサアキラ」です。あらすじにも書いてあるとおり、この作品はオムニバス形式で送る予定なので次回の話にレッド達は出てきません。しかし、またいつか彼らを出す予定です。…しかし、ヒーローが戦闘服に着替えた状態での清掃活動。こんな事実際にあるんでしょうか。(笑)