やることがないな
ハビィネスと階段前で別れた後、俺は部屋に戻ってもやることがないなと思い、散歩に出ることにした。でも、まだ土地勘のない俺は迷子になってしまう可能性が高いためスキルの【マップ】を発動した。
目の前に表示された四角い地図。まだ見えないところがたくさんあったが、拡大をすると俺が今いる場所の付近の道が表示された。これで、道に迷うことなく進めるはずだ。試しに動いてみると、雲のような形のもやがかかり、見えなかったところが徐々に見えるようになっていった。入り口の門を出て、寮の裏手にある森の方に行こうと進むと、誰かにぶつかった。
「「あ、ごめんなさい!!」」
二人同時に謝るという何とも言えない状況の中、俺は顔を上げた。
「え…!?お隣さん!?」
「リョータくん!?」
ぶつかったのはまさかのお隣さん。レベシーだった。
まさかのお隣さん登場にビックリしてると、レベシーが口を開いた。
「リョータくん、どうしてここに?」
「え、えぇっとそれは……」
言葉に詰まっていると、レベシーさんが、
「もしかして、動物を狩りに?」
動物狩りかと聞いてくれた。
「いえ、散歩に。」
レベシーが聞いてくれたことにより、嘘をつけない俺はするりと本当のことが口から出てきた。
「そう……でも、こっち側は辞めといたほうが良いわ。隣国との境が近いの。だから不法侵入者が後を絶たないらしくって。」
隣国との境目が近い!? だから、ナトリー様は自分の身は自分で守れと言ったのか。
「そうなんですね。じゃあ、街の方に行きます。」
「うん、それなら大丈夫ね。」
さっきマップに街のようなものが見えたのでそっちの方に行くことにした。
「ぶつかってすいませんでした。あと、こっちにはあまり行かないほうが良いことも教えてくれてありがとうございます。それでは俺は行きますね。」
「えぇ、気を付けて。」
「はい、行ってきます!」
レベシーに手を振りながら俺は街の方へと進んだ。でも、この時俺は彼女が森に行くなと言ったもう一つの理由に気がついていなかった。