特訓は身体能力強化
「よろしくお願いします。」
お辞儀をすると、庭師のいる部屋の扉を閉めた。
「ふぅ。挨拶も一通り終わったしこれからどうしようかな。」
ーーー
挨拶も一通り終わり、ポストに何か入ってないかの確認をしにエントランス来た。ポストの中に手を入れると何かが入っていた。手紙だ。白い封筒に大きく書かれた「アダチ・リョータ殿へ」の文字。封筒を開け手紙を読んでみる。何かこれからについて書いてあると良いな。と思いながら。
『アダチ・リョータ殿。寮はどうだ?良ければ今度感想を聞かせてくれ。そろそろ寮の中も見終わった頃だろうと思い手紙を出した。明日から身体能力強化の特訓を受けてもらう。寮の運動場に来てくれ。国王より。』
国王から届いた手紙を読み終わると、俺は部屋の中に置いてあった寮の地図を開いた。
(ここに、運動場があるのか。明日は少し早めにここに向かおう。)
運動場の位置を把握した俺はお腹が空いたので食堂に入った。
ーーー
食堂に入ると中は思ったよりも広く、沢山の机と椅子が置いてあった。食堂は多くの人で賑わっていた。
(ここが食堂か。結構広いな。)
食堂の入り口から真っ直ぐ進むと、突き当たりにはおかず達がのったカウンターがあった。どうやら自分で好きなのをとるスタイルのようだ。トレーを取るとお皿を並べた。そのまま横に進む。
(この世界って魔物とか食べるのかな? この世界の食材が俺の口に合いますように。)
お米と、葉玉と野菜の炒め物を乗せたトレーを押しながら進むと、美味しそうなおかずを見つけた。
「あ!これ美味しそう。」
バイキング形式でカウンターに並んだおかずに手を伸ばす。すると、隣からも手が伸びてきた。
「「あ!」」
隣から伸びてきた手に俺の手が当たる。
「「ぶつかってごめんなさい。」」
それと同時に隣の金髪の女の子と俺は謝った。お互いに手を伸ばしたおかずは、「地下鶏の旨辛煮」隣にいた女の子に「先に取って下さい。」と言う。女の子が取ると、その後に俺も鶏を取る。女の子は頭を下げてお会計に向かった。「可愛かったな。」なんて心の中で思うが、頭を横に振りその考えを消す。
俺はなんてことを思っているんだ!と一人ツッコミをしているとあっという間に俺の会計の番になった。
「葉玉と野菜の炒め物。地下鶏の旨辛煮。それに白米ですね。このレシートを月末に来る係りの者に見せてください。無料か、追加料金がかかるか分かります。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
俺が初めてここを利用することを見抜いた会計係の人がレシートの使い方を教えてくれた。月末に係りの人が来るのか……でも追加料金って、俺、お金持ってないよ! どうしようかと悩むがナトリー様に聞いてみようと思い席を探す。相席しか開いておらず、先に席を取ればよかったと少し後悔する。近くの空いている席に行き、座っていいか聞くために顔を上げると、さっきの金髪の美女が居た。
「あ、さっきカウンターに並んでいた方。あ、席座ります? どうぞ。」
どうぞ、と言われ俺は椅子に座った。
「すみません。相席しか開いていなくて……。でもまさか向かった先のテーブルに貴方がいるとは。」
「すごい、偶然ですね。」
「びっくりしちゃいました。」
狙ってやったわけでは断じてないが、すごい偶然だとビックリする。
「お名前聞いてもいいですか?」
少し首を傾けて聞いてくれた。やっぱり、可愛い。なんて考えが出てきてしまう。でも今は自己紹介をするんだ! と気持ちを切り替えて名前を伝えた。
「俺はアダチ・リョータです。」
「私はメアリー・ハビィネスです。宜しくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
この後は他愛のない会話をしながらご飯を食べ、ハビィネスとはエントランスで別れた。ハビィネスと別れた後、俺は自室に戻り寝る支度をする。備え付けの歯ブラシで歯磨きをすましたので寝るだけだ。
「おやすみなさい。」
当然返事は返ってこない。でも、いつもの癖で言ってしまった。そして、自分の部屋で初めて寝たことを思い出だした。少し寂しいが、朝起きればきっと一人な寂しさもいつの間にか忘れているだろう。
翌日。朝日の光で俺は目が覚めた。昨日は疲れていたのかすぐに寝付く事が出来て、なおかつぐっすりと眠れたようだ。体が軽い。目が冷めきっていない俺は顔を洗うと化粧水が無いことに気付いた。顔は持っていたハンカチで拭けたが、早い内に日用品を揃えないとまずい。でも、今日はナトリー様の特訓がある。取り敢えずはそれに集中する事にした。
手紙に書いてあった時間の十分前に運動場に到着した。体育館よりも広い運動場に着くと、時間の五分前にナトリー様が来た。
「よし、始めるぞ。」
「はい、よろしくお願いします!」
気合を入れて返事をする。
「今日やるのは、身体能力強化だ。一日で終わる予定のプログラムだ。」
「一日で出来るんですか?」
身体能力強化と聞くと一日で終わりそうにないが、本当に終わるのだろうか? その疑問にナトリー様は、しっかりと答えてくれた。
「あぁ、魔法やスキルで体を強化するだけだからな。早速やるぞ!」
「はい、よろしくお願いします。」
こうして、ナトリー様による特訓が始まった。
葉玉という食べ物は玉ねぎのような野菜です。地下鶏とは鶏肉に近い食べ物です。