待ってろよ
「ハビィネス!」
「リョータ!!」
ハビィネス達の元に戻ってきた俺は結界の中に入ると勢いそのまま、ハビィネスに抱き着いてしまった。
「っ!ごめん。ハビィネス。会えたのが嬉しくて。」
「もう、数時間しか離れてないじゃない。」
呆れた様に笑うハビィネスの体から離れながら話していると、マルがわなわなと震え始めた。
「マル?どうし…」
マルは俺の言葉を遮りながらもの凄い勢いで話始めた。
「美女の胸元に飛び込む憧れの体験をそんな簡単に出来てしまうなんて!許せません!何で貴方なんですか!?僕だって、抱き着きたいのに。そうですよ、僕なんてモテませんよ。一生美女へのボディタッチは出来ないんだ。大きな胸に飛び込むのはイケメンのみが許されたものなのですか?この世界は残酷ですね。僕みたいな人間にはチャンスすら訪れない!!大きくハリのあるその巨乳に顔を沈めたい。そして、あわよくば揉みたい。顔を胸に挟まれたい。胸は大きければ大きい程いいんですよ!あぁ揉みたい!揉みたい!吸い付いてバブバブ言ってみたい!頭を撫でられたい!!はぁはぁっ…ヨダレが……。まず、水着はビキニが一番!見える谷間、美しのボディライン。想像しただけで、ご飯三杯はイケる!」
結界内でガッツポーズをしながら話し出したマルを
「な、なんか熱弁しだしたな、、」
「ビックリですーしゃ。」
「そ、そうね。そっとしておきましょうか。」
と俺達は結界の端からあったか~い眼差しで見守った。
ーーー
「だから、美女は…はっ!」
「ようやく元に戻ったか。マル。」
いつの間にか三十分は過ぎていて、マルは自分が物凄く興奮して話していた事に気付き顔を青くした。
「す、すみません!!」
土下座するマルに、二人で「大丈夫だよ。」と言う。それでも本人はまだ納得いっていないのか、頭を地面にぐりぐり押し付けた。
「本当に大丈夫だから。」
「で、でも…」
「それより!俺、マルに聞きたいことがあったんだ。」
「聞きたいこと?」
戻ってくる少し前に俺は携帯でハビィネスと連絡を取っていた。内容はマルをどうするかで地上に送るのにもどうやったら安全に送り届けられるか、もしマルが俺たちと一緒に行きたいと言ったらどうするか、などを話し合っていた。
「マル、俺はマルが地上に戻るのが一番安全だと思ってる。でも、それは俺の意見だ。さっきは一方的に意見を言ってしまったから、マルの気持ちも聞きたい。」
数秒の沈黙の後、マルは話し出した。
「僕は、お二人と一緒にボス討伐をしたいです。でも、正直足手まといになる気がしています。」
「そっか、分かった。」
ハビィネスの方を見てハビィネスが頷いたのを見ると、俺はマルにバナナを渡した。
「じゃあ、俺達のパーティーに入らないか?あと、これ幻のバナナ。思ったよりも浅めの階層にあったから早く持ってこれたんだ。」
「いいんですか?こんな、僕でも。」
「もちろん。私達はあなたの事を歓迎します!!」
ハビィネスが明るく言うと、マルはバナナを大事そうに抱きしめ、うっすらと目尻に涙を浮かばせながら笑った。
ーーー
「まず、ボスを探さないとな。」
「そうね、どうやって探しましょうか。」
「それなら、俺からとある人にボスの事を聞いてみるよ。」
携帯を開くと、「バナーナ」に連絡をした。
【今、この迷宮のボスを探しているんですけど、何か知っていませんか?】
すぐに返事が来た。
【わしの居る階層の一個上にいるはずだ。それと、敬語は外して良いぞ。】
【分かった!探してみるね。ありがとう。】
携帯をしまうとハビィネス達に情報を伝えた。
「この階層のもう少し下に居るらしい。」
「ありがとう。ところで、その連絡をした相手は誰なの?」
「えーっと、幻のバナナを栽培している人」
「「「え?」」」
ハイビーに、ハビィネス、マルが信じられないと疑いの目を向けてくるが、無視して準備を始めた。
ポーションは何本も入れて、剣は血を拭き取り更に鋭くなるように研いだ。巾着には包帯なども入れ、最後に皆で持ち物を確認した。
「これで、大丈夫ね。それでは行きましょうか。」
「はいーしゃ!」
手を挙げるハイビー。
「は、はい!!」
杖を握りしめるマル。
そして、覚悟を決めた俺。
「それじゃ、ボス討伐へレッツゴー!」
(ボス、待ってろよ!)
心の中で叫んだ俺は階段に向かうために皆の先頭を歩いた。




