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覚醒への道③

白く輝く光が消えた後、そこには長髪で銀髪、純白の上着に漆黒のズボンを身に着け、凛とした表情のとても言葉じゃ言い表せないほどの美しさの少年が居た。

「ハイ、ビーか?」

「そうですーしゃ」

目の前にいるのはハイビーで、でもいつもの姿とは違う。

俺は地面に尻をつきながらハイビーの事を見守ることしか出来なかった。


「なんだ?お前は」

漆黒は言った。ハイビーに何者かと。

ハイビーは漆黒に問う。

「俺が何に見える?」

「人型神獣、エレクターン」

「残念、それは黒獣の化身に出てくる神獣の名だ。姿が似ている?とかいうわけではないだろう。俺は神獣じゃあ、ねぇ魔族だ!」

そう言うとハイビーは地面を蹴り奴から離れた。

「何!!」

奴が驚くのも無理はない。

だって今ハイビーは人間を抱き抱えて漆黒から遠く離れたところに数秒で避難させたのだから。

「おれーしゃはな。人間に愛をもらったんだ。だから、これくらいのことはするさ。」

「馬鹿な。魔族が人間を助けるなど聞いたことが…」

俺は地面を強く蹴り奴の目の前まで一瞬で移動する。

「だから、魔族だろうと関係ねーだろそんなこと!」

驚いている奴の顔めがけて拳を放った。

ドガァァァ!

大きな音を立てて後ろに吹っ飛んでいく漆黒にさらに追撃をする。

一発、二発、三発、四、五…

殴るたびに風圧で土ぼこりが舞い視界が悪くなる。合計十回の打撃を与えると、動く気配のない漆黒に足を高く振り上げ踵を容赦なく落とした。

「げぇっ、ぐっ、あっ、」

漆黒の頭は半分ほど潰れた。

「おれーしゃを怒らせるな。」

「別に、お、おれは怒らせたつもりはな、い。おれ、はただしじに従っただけだ。」

頭が潰れてもなお話すことの出来る生命力に驚きながらも指示を出したのは誰だと聞く。

「あ、、あ、、あいつ、、だ、、。あいつだ!―――だ!」


――――

「口を開くなとあれだけ言ったろ。」

深いため息をするハディカルをスズランは心配そうに見ていた。

「無理をなさらないでくださいね。」

スズランはテーブルに紅茶を置く。いつもは【魔界産】のワインを飲んでいるハディカルだが、今日はとても顔色が悪いのを心配してスズランが入れた紅茶を大人しく飲んでいる。

「こいつ、べらべらと口を開けばうるさいほど喋る。だから、余計な情報も喋るんだ。」

まったく、どうしようもない奴だと眉を下げるとスズランが心配そうにハディカルの顔を覗き込んだ。

「今日はどうしたんですか?何かあったのでしょう?」

「心配かけて悪いな。実は、部下が俺の事を喋っちまってな。魔獣の暴走に紛れて帝国を壊そうとしたが、あの例の人間の友達と言うやつに倒されちまった。まぁ、最後は俺が殺したがな。」

「あなたの部下が、、、すぐに別の者を派遣する?」

「いいや、こいつは四天王クラスじゃねぇと、相手に出来ないよ。」

そうなのねと悲しそうな表情をするスズラン。何とかハディカルを元気づけようと腰を上げる。

「何か、持ってきますね。」

部屋を出ていったスズランを申し訳なさそうに見るとハディカルは空中に映像を写す魔法具を見た。

「こいつも、そろそろ画質が悪くなってきたな変え時かな。」

と人間界から盗んできた技術を使って魔法具――魔力を必要とする道具――を作ったがそろそろ変え時のようだ。

面倒なことになったと魔法具への魔力の供給を辞めると椅子に深く座り直した。

――――

ハイビー視点

「あ、あ、魔王が!魔王がぁ!おれ、をは、はけんした、のだ、、、!グガァ…」

バタンと音を立てて倒れた後漆黒は塵となって消えた。

恐らく魔王が遠隔で殺したのだろう。口封じのために。

でも、漆黒が魔王の名を言う方が少し早かった。

「魔王か、、、。」

何とも言えない表情をした後ハイビーはリョータの元へ駆け寄った。

「リョータ、今直すからね。ってどうしよう、おれーしゃ、人間を治せない。」

「大丈夫だ、は、ハイビー、そこの巾着に治癒のポーションが、入ってる。」

腰に付けていた巾着を指差す。

「あったですーしゃ!」

ポーションを口に持っていきリョータに飲ませると傷があっという間に治癒された。

「ありがとう、ハイビー。」

――――

リョータ視点

体が動くことを確認した俺は、倒れている間に考えていた事を実践することにした。

「ハイビー、今から俺、スキルを取得してみるよ。」

「スキルを?」

「うん、スキルはポイントを支払えば獲得することが出来るらしいんだ。俺はまだまだ弱い。だから、少しでも役立つスキルを。」

【ポイントを使用しました。スキル【華冠・1】を獲得しました。】

「よし、ハイビー、ハビィネスの所に向かおうと思っている。一緒に来てくれるか?」

「もちろんですーしゃ!」

立ち上がると俺はハイビーと並んでハビィネスの元へと急いだ。

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