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ピンチ

 どうして、ハイビーが人型になったのかは分からないが、今は俺がやるべきことをやろうと思う。階段を降りて、玄関から外に出る。ハイビーと並んでまずは武器屋に向かった。煉瓦の舗装された道を歩いて行く。ハイビーと手を繋いで歩いているとなんだか、皆で学校に行っていた頃を思い出した。


 武器屋に着いた。金属が至る所に貼ってあり、どしっとした見た目だ。店の外に向いているショーケースには様々な武器が飾ってあった。


「こんにちは。」

「おぉ、いらっしゃい!」

扉を開け中に入ると、髭を生やし、エプロンを着た小太りの男性が居た。胸元には大きく店長と書いてある。店内には余す所なくびっしり武器が並べられていた。


「魔物を倒す用のナイフが欲しくて……良いのありますか?」

「それなら、これがおすすめだよ! ナイフってことは小さい魔物を倒す予定か?」

「はい。」

俺が返事をすると、店長は店の中にある一本のナイフを渡してきた。

「ハンティングナイフだよ。」

木製の持ち手に鋭い刃。切れ味がとても良さそうだ。


「動物から魔物まで狩れるよ! ちなみにお値段はこのくらい……」

何処からか値段を書いた紙を取り出して見せてくれた。


(そこまで高くないな。)

「このナイフください!」

「あいよ! まいどありー!」

会計の間に初めての武器だと伝えたら、名前をサービスで彫ってくれる事になった。数十分待てば、丁寧に木製のハンドル(持ち手)に名前が刻まれていた。大事にシース()とハンティングナイフを受け取るとギルドへと向かった。


ギルドに着くと、魔物討伐依頼書を取りと受付に行った。

「この依頼受けたいです。」

そう言い、依頼書を置く。

「分かりました。魔物討伐の依頼ですが大丈夫ですか?」

「はい。」

「報酬は、銀貨数枚になります。怪我しないようにしてくださいね。いってらっしゃい。」

「いってきます!」

と言い、ハイビーと一緒に駆け出した。


 渡された依頼書には【ランクFの魔物討伐ウォータースライム討伐報酬銀貨数枚】と書かれている。依頼書に書いてある地図通りに西門を出て行き、こないだの森とは別の森に入る。森に入ると、ハンティングナイフを持ってスキルを発動した。


『スキル発動!』


 発動したスキルは三つ。【身体強化】【マップ】【鑑定】鑑定で魔物を調べ、身体強化で敵の急所を突き、マップで今いる場所の確認をする。スキルを発動した俺はハイビーと一緒にスライムを探す。すると、茂みにスライムが居るのを発見。そのまま依頼書に書いてあった急所を一突きした。音を立てることなく溶けていくスライム。スライムが解け核が出てきたのでそれを回収した。


 魔物には核が存在していて核を回収して持っていくことで討伐したことを証明できる。らしい。周りにいたスライムも討伐すると核を回収して森の入口に向かおうとした。



その時――グルルルルッガウッ!

白色の魔獣が襲い掛かってきた。右に回転をし、またすぐに左前に前転をして攻撃を避ける。スキルのお陰で攻撃を避け怪我はしなかったが、転んでしまって起き上がることが出来ない。


食われる――!

死を覚悟しハイビーを守るように手を広げると目をつぶった。その直後にすぐ痛みがくるはず――だった。


「大丈夫!?」

「え? ハビィネスさん!」

襲ってきた獣はハビィネスによって空中で剣に刺されていた。ハビィネスが剣を空中から降ろすとこっちを心配したように見る。ハビィネスのお陰で僕は助かった。


「助かったよ。ありがとう。」

ハビィネスの手を借りて起き上がる。俺はお尻に付いた土を払った。どうしてここにいるのか尋ねるとハビィネスは仕事でこの森に来ていた所、人が襲われているのが見えて駆けつけてくれたらしい。


「にしても、浅い所にタイガーが出るなんて。どうしたのかな。」

ナイフでタイガーをさばきながらハビィネスは言った。

「ここには出ない魔獣なの?」

「うん。本来ならもっと深いところに出る魔獣なんだ。」

「そうなんだ。あ、そういうのってギルドに報告する?」

「そうね。報告した方が良いわね。一緒に行きましょう。」


タイガーをさばき終え核と肉をハイビーと俺、ハビィネスで持ちギルドに向かった。受付で肉と核を渡し、タイガーの件を伝えると、マスターを呼んでくれた。


「会議室で話そう。こっちに来てくれ。」

「はい。」

会議室に着くと、マスターが最初に口を開いた。

「タイガーが凶暴化したのは本当か?」

「本当です。」

ハビィネスが答える。俺とハビィネスで具体的な状況を説明すると、マスターからこんな提案をされた。


「明日、リョータ殿の薬草採取を見学させて欲しい。それと同時に魔物、魔獣についても調査したい。ハビィネス殿も一緒に来てくれ。」

「「分かりました。」」

「それと、この話とは別なのだが、そこの少年は誰だ?」

そう言いマスターはハイビーを指差す。

「あ、俺の友達です。」

「そうか、それを聞きたかっただけだ。」

「じゃあ、俺たちは失礼します。」


扉を開け、外に出ると階段を降りて受付へと向かった。ウォータースライムを討伐したことを報告するために。

「依頼書とウォータースライムの核です。」

核を受付の人に渡す。

いろんな道具で核を調べると、報酬をくれた。報酬を受け取るとハビィネスが宿を探している事をハイビーが教えてくれた。


「じゃあ、俺と同じ宿泊まる?」

今泊まっている宿しか知らないので、俺が同じ宿に泊まらないか提案すると、ハビィネスは了承してくれた。宿に向かう途中もハイビーとハビィネスは仲良く話していた。受付に行っている間にずいぶんと仲良くなったようだ。2人の会話を親の様な気持ちで見守っていると、あっという間に宿に着いた。


宿の入り口でハビィネスと分かれると、俺は散歩に出かけた。

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