二話 眠りそして醒めた先にあるのは
ーーー人の後ろ姿が見える。だかぼやけてよく見え ない。
ーーー自分と同じくらいだろうか。
ーーーどこか懐かしいように感じる。
ーーーどこかで会ったことがあるのだろうか?そん な気がするし、しないような気もする。
〜〜〜
「君、おーい君、そろそろ時間だよ。」
そういって女は俺の肩を揺すりに無理から醒まそうとしてくる。
「聞くまでもなさそうだが、どうだった?よく眠れたかい?」
「ぐっすりと眠れました。」
本当にあの青い球が効くとは思ってもいなかった。
「そうかい。ならよかった。ところで聞きたいのだが何か寝ている時、夢でもみなかったかい?
どんなものでもいい何か覚えていたら話してみてくれないかい?」
………夢。誰かはわからないが懐かしく思えたあの後ろ姿。それくらいしか覚えていない。
「人の後ろ姿を見ました。それだけ。でもぼやけていてどんな人なのかはよくわかりませんでした。」
「………そうかい、まぁなにを見ていても私にはあまり関係ないんだがね。まぁ今日のところは帰ってまた明日ここにきなよ。経過も見てみたいしね。料金はその時でいいよ。」
意味がないなら聞くなよ。
僕はそう思う。だがそれにしても経過か副作用とかあってくれるなよ?
「わかりました。また明日今くらいの時間にきます。ありがとうございました。」
「はいじゃあ、また明日。あぁないと思うが言っておこう。もし料金を踏み倒したらなんかしようとしたら。………わかってるな?」
こわっ。
そんなことはもとよりするつもりもないが背筋がゾッとした。こわいね。
「そんなことするわけないじゃないですか人として。じゃあ失礼しますまた明日。」
そう言い僕は店を祈り屋を後にした。
〜〜〜
店の窓から女が見ている。
ただ客を見送っているというわけではないのだろう。
「さぁてどんな結果になるかな?予想が当たればまぁいいが、違う方だと面倒だな。明日になればわかるか。まぁどっちにしろ私にとっていい方に働くだろう。楽しみだなぁ〜。」
言い終えた女の顔はニヤリと笑みを浮かべていた。
僕は眠りから醒めベッドから起き上がる。こんなにぐっすり眠れたのは久しぶりだ。祈り屋で飲んだあの青い球のおかげだな、たぶん。気持ちのいい朝だ。
「夏生ー朝よー。」
したから母の呼ぶ声が聞こえてくる。母に呼ばれる前に起きるのも久しぶりになるな。
僕は部屋を出、階段を降り、リビングに行く。
「おはよう母さん。」
「いつもは何回も呼んでやっと起きてくるのに珍しいものね。」
「うん。少し寝覚めが良かったんだ。」
こんな会話をしながら朝食を食べることから始まり学校へ行く準備を終わらせていく。
〜
「行ってきます。」
いつもの言葉と共に家を出る。まだそんなに急がなくていい時間帯なのでゆったりゆっくりと僕は進んでいく。
おかしいな、寝ぼけているだけかもしれないが。視界の隅に小さな黒い影とかそんなものが目につく。
後もう少しで学校に着くと言うところまで歩くと後ろからバタバタと誰かが走ってくる音が聞こえる。そう思ったのも束の間僕の方に重さがのしかかってくる。
誰だと思ったがそいつは自分から正体を表してくれた。
「おはよー夏生、昨日の行った?どうだった?」
藤だった。朝から元気だなこいつ。
「昨日行ったよ。おかげで今日はぐっすり眠れたよ。サンキューな。」
「どうってこたぁねえよ。解決したようで何よりだ。」
その後僕たちは他愛もない話を続けるうちにいつの間にか教室まで来ていた。
いつもに比べそれなりに遅い時間だからなのかいつもより人が多かった。
〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン
最後の授業を終わらすチャイムが鳴った。これで今日も学校が終わりだ。今日は授業で一回も眠たくならなかったあの青い球の効能は強いらしい。
これで学校も終わったことだし。当初の予定通りあの店へと赴くことにした。
向かっている途中相変わらず変なものは見えたまんまだが。やっぱり寝ぼけているのだろう。よく眠れるのも考えものだな。
そうこうしてるうちに店が見えてくる。
昨日のように階段を登り二階へと行く。そうして中に入ると昨日と同じように女性は座っていた。
「やぁ、いらっしゃい。時間通りだね、その後調子はどうだい?」
「おかげ様で快眠ですよ。今までのが嘘のよう。」
「そうかいなら良かったよ。ところでこれ何かわかる?」
女性は昨日と同じように机の引き出しの中から瓶を取り出した。だが昨日と変わりその中に入っているのは青い球ではなかった。赤い球だった。
「なんですかそれ。」
「これどんなふうに見える?どう?綺麗?」
「赤いですね。後キラキラして綺麗です。」
「おっけー。わかった。」
「君さぁここで働いてみない?」
…………は?
いやなに?急にどした?話の変わり方おかしいだろ。今、たまについて話してなかったっけ?
「いやぁそろそろ人雇おうかと思ってたところにいい人材が来てくれたもんだから。その球が赤く見えることができる奴。是非ともそんな奴にここで働いて欲しいと思っていてね。」
わけがわからない。赤く見えただけでなぜ雇おうとする?
「いやなんでそれが赤く見えただけで雇おうとするんだ?意味がわからない。」
「あぁ〜そうかそれについても説明しないとか。めんどくさ。」
ほれっ
そういい女は何かをこちらに向けて投げてくる。
それは机の上に落とされた。
「うわっ、なんだこれ!?」
それは手のひらサイズだが頭と胴体がアンバランスな人形だ。こう言葉にできない気持ち悪さというか嫌悪感というかそんなものが沸々と湧き上がってくる。
「それはね、君たちが俗に言う妖怪やらなんやらそう言ってるものだよ。まぁこいつ自身に特に名前はないんだがね。」
「急に言われて信じられるわけないだろ、なんだよ妖怪とかそんなものがあるはずないだろ!?」
「はぁ………なんで目の前にあるのに信じれないのかなぁ?まぁ仕方ないのか?流石にこれを見たら信じられるか………」
女はぶつぶつ呟き、僕に対して文句を言う。
そして両手を合わせパンッと一回叩いた。
なにをしているんだと思った。だがそれは、理由は、なにをしていたかすぐにわかることになった。
机の上に置きっぱなしにされた女が言う自称妖怪それがピクピク動きだし、一度それが止まったかと思うと机の上にあったそれはバッと立ち上がった。
「グギャギャァダァダァダァ」
立ち叫びこちらに向かって走り出してくる。
僕はそれを避けるように避けるように椅子から飛び降りるように逃げた。
「信じた?これを見て信じないとかいわないよねぇ?」
女はニタニタ笑いながらこちらを見てくる。
こちとらそんな余裕ないっての。
「信じるっ、信じるからっこいつをどうにかしてくれぇぇぇ。」
「全く、わかればいいんだよわかれば。」
女はいつの間にか手に持っていたなんだあれ?針?………いや違う爪楊枝だ!いや……なんで?
それを僕に向かう妖怪に向けて投げる。
「ほいほいほい。」
頭、胸、腰、そこに次々と当てて差し込んでいく。
いやそんな刺さんねぇだろ爪楊枝。おかしくない?
そんなことを思っていたが存外目の前のものには有効だったようで。
「グギャ………」
という断末魔と共にぼうっと消えていった。
「はい。というわけでね、ひと段落したわけだが。
なぜここで働いて欲しいかと言うと君がこれを見えるようになったからだよ。まぁ君には拒否権はないからここで働いてもらうことは確定なんだよけどね。」
「なんで拒否権がないんだよ。選択の自由を僕によこせ。」
「いやぁだって君から見えるようになったし、悩んでたって言う不眠についても解決してあげたし、
後料金の代わりに働いてもらおうと思って。」
「……不眠が解決したのは感謝してる。だけど料金の代わりに働くって言うのはあまりよくわからないぞ。普通に払う、払わせてくれよ。何円なんだ?」
「違う違う料金をタダにしてあげるんだよ。」
「は?」
「いや見えなかったら払ってもらうつもりだったんだけど君見えるんでしょ?だから料金の代わりに働いてもらおうかと。」
「いやまだなんで見えるようになったのかはわからないんだが?」
「ぶっちゃけると見えるようになったのはこの前飲んだ青い球のせいなんだけどね。」
「ならお前のせいじゃないか!そんな副作用があるなんて聞いてないぞ!」
「いや〜だって見えるようになるかは君の素質次第だし、それにほら君は不眠が治って良かっただろ?私は働き手が見つかって嬉しい。Win-Winじゃないか。誰も不幸にはなってない。
それに見た感じ君の不眠治すのにそれ飲ませるしかなかったし……」
「いやそれで、なるほどーじゃあ仕方ないね☆
とかなるはずないだろ!」
「せめて事前に話しておいてくれよ。」
「いやいや、そこで私がこれを飲むと妖怪とか見えるようになるよ。とか言っても信じないでしょうが。」
それもそうか。多分僕もそれを言われれば絶対に飲まなかっただろう。
「まぁまぁ落ち着いて。それで仕事なんだが時給1100円からでどうだい?働く気にはなったかな?」
変なものが見えるようになったとは言え不眠を治してもらった恩があるからなぁ。しばらくここで働いてもいいか。
「ここで働きます。」
「しゃあ!現地取ったからな後からあーだこーだ言っても無駄だからな。男に二言はないからな?」
うわ、どうしよちょっと後悔しそう。
〜
「無事、快く働くことを決めてくれた君にまず自己紹介をするよ。私は白峰祈だ君は?」
「水野夏生です。どうぞよろしく。」
こうして僕はこの変な女、白峰祈と共にここ、祈り屋で働くこととなった。