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異能対策室〜王来王家燕〜  作者: イクサ


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41話【統率】


東京・赤羽——


【No Trace】本拠地ビル。

その会議室…

そこには異能対策室の責任者、比嘉と

【No Trace】の総監、井土が面を向けて座っていた。


「…何度も言わせるなよ比嘉。【No Trace】の邪魔をした以上、俺達はそれ相応の動きをするって前にも言ったよな」


「分かってる…だが、今回は偶然だ」


「偶然?そんな言葉で片付けるつもりか!」


井土の怒りは最もだ。

自分の組織が別の警察組織に攻撃を加えられた。

そのトップとして怒りを露わにするのは当然の行いだ。

井土と比嘉の間に別の何かしがらみがあろうとも、そこの怒りは至極真っ当だ。


「…あの狐面の男、一ノ瀬って言ってたか?あいつが今回の発端だよな。Dirty Dog…テメェらの暗部の躾がなってねぇ様だな?」


「Dirty Dog自体に問題があるんじゃねえ…あるとしたら一ノ瀬だ…」


比嘉の言葉には後悔の念が聞こえた。


「俺はあいつの事を泳がせすぎていた…その結果がこれだ」


「…なら、どう責任取る気だ?」


井土の言葉は比嘉を呑み込むほどの重圧が纏われていた。


「…俺がこの無益な争いを終わらせる。この手で一ノ瀬を執清する」


井土は比嘉の言葉を聞き、何も言わずにその場を立ち去る。

それに続く様に比嘉も井土とは反対方向に向かってその場を去っていった。





——川崎


竜崎達や神室達に背中を押され駆け回った燕達。


その場に辿り着いた瞬間燕は感じた。

空気が変わった、と。


「……近いわね」


来栖は答えない。

視線だけが、前方の路地を見つめていた。


次の瞬間、金属音が弾けた。

鈍く何度も斬り合った後の様な金属音が鳴り響く。

地面を抉るような衝撃。

周囲の物体が壊れる音。


二人はゆっくりと近づいた。


音は近づき、一歩進むことに2人の身体に圧が通り抜ける。


崩れたフェンス。

抉れたアスファルト。

そして、その中心。


割れた狐面の男がいた。

2本のナイフを構え、呼吸一つ乱さず立っている。


その正面、数歩の距離に黒猫の様に全身が異形化した人物——乕若深雪の姿と

白い刀を抜いた白髪の男——はじめ一人かずとが立っていた。


「……間に合った、のかしら」


「…どうですかね。もうやり合ってる以上間に合ったとは言い難いですかね」


来栖は、一ノ瀬と乕若、その間に張り詰めた空気を見る。


「…来たんだな!来栖!それに王来王家班長!悪いが手を貸してくれ!!」


2人の気配に気づいた一ノ瀬は振り向きもせず声を掛けた。


「…一ノ瀬さん。私達は戦いには——」


燕は一ノ瀬の声に自分達が来た意味を教えようとしたが、その言葉を掻き消す様にはじめが口を開いた。


「援軍か?構わない。どの道、異能対策室はここで潰す事になっている」


「つ、潰すって…私達をですか?」


「そう言ったんだ?聞こえなかったのか?」


「私達は戦いに来たのではありません!」


燕は臆せず声を上げた。

その意味を伝えるために。


「私達は一ノ瀬さんに用があって来ました。【No Trace】の皆さんとは戦う意志がないんです!」


「………俺に…か」


一ノ瀬はその言葉にも振り向かず一達のみを見つめていた。


「だ、そうだ。狐面の男。仲間がお前に用だそうだが、まだやるか?」


「………あぁ、当たり前だろ」


一ノ瀬は静かに肯定した。


「一ノ瀬さん班長…もうその2人に構う必要ないじゃないんですか?事件、ちゃんと捜査しましょうよ?その2人はほぼ関係ないですよ」


「………だからなんだ…」


「え?」


「…あいつらは”闇”だ。日本の”闇”は炙り出さなきゃならねぇ」


「な、何言ってるんですか」


急な一ノ瀬の言葉に来栖は困惑を出した。

今まで見た事ない一ノ瀬に、収容できない異能者を処理する時の一ノ瀬よりも、ずっと冷徹なその声に。


「一ノ瀬さん、やっぱり何か知ってるんですね」


「…やっぱり?」


「あの時もそうです。貴方は何かを探していた。確かト——」


「「待たせたな!!!一人かずと君!!!私がここに来たぞ!!!!」」


燕が詰め寄り、一ノ瀬に問いかけた所でその声に掻き消された。

鼓膜を劈く声のデカさ。

思わず燕はその声の方向を向く。

—いや、探した。何せデカすぎて何処から声が届いてるのか分からなかったから辺りをキョロキョロと探した。


そしてその声の主は燕達の後ろに立っていた。


そこには今の時代に似合わない軍服を着た背が高く、更にこれまた時代錯誤な制帽。眉尻がこれでもかってほど上に上がった、いかにもさっきの声の主だなと思う男とその隣にフランス系の顔つきの大男と共にそこに立っていた。


「神々ししばさん…それにアレクさんも。貴方達まで来てたのか」


「あぁ!!!そうだとも!!!上からの命令でな!!!

君達の援護をしろと言われてここに来たわけだ!!!!」


「相変わらず、騒々しいですね。神々ししば隊長」


乕若はその声から耳を守る様に首を遠ざけながら言った。


「おっと、乕若君、すまない!!!その状態だとさぞ大きく音を拾ってしまうだろう!!!すまない!!!」


「…うるさい」


「ミスターカズト、ここには、他に第4と第7も来ている」


アレクと呼ばれたフランス系の男は、その身なりに似合わないほどの流暢な日本語で説明した。


「そうか、佐田原達はともかく、宮代さん達まで来てるとは。余程暇なのか…それともそれほど異能対策室に全力を出せって事なのか」


一人かずと君!!!!この2人は私達が引き受けよう!!!!君は存分にその狐君とやり合いたまえ!!!」


「助かりますよ神々ししばさん。何より貴方がいることが」


はじめはそう言うと直ぐ様一ノ瀬に斬りかかった。

一本の白い刀の刃が一ノ瀬の持つ2つのナイフと鍔迫り合いとなる。


「…さっきの擬似能力は使わないのか?」


「…黙れ」


一ノ瀬ははじめを押し返して静かに言った。


「あの2人がいるとその2つは使えなくなるのか?」


「…下手な挑発だな。乱発して使っても意味ないんだよ。擬似能力っつうのは——ッ!?」


その瞬間一ノ瀬は気配を感じた。

獣の気配だ。

肉食動物の肉を喰らう気配。

その獣——乕若の爪が一ノ瀬の首へと迫っていた。


鈍い金属音とそれに勝るとも劣らない音がぶつかり合う。

一ノ瀬の咄嗟に振ったナイフが乕若の爪を弾いた音だった。


「…っチ…」


「獣が…」


乕若は牙を出し、一ノ瀬を睨む


「…2人がかりでも案外大したことないな。【No Trace】ってのはそんなに強い組織でもねぇのか?」


「お前も安い挑発だな。だがそうだな、本気を出してはいないとはいえここまで粘られとも思ってはいなかった」


「負け惜しみか?」


「いいや。褒め言葉だ、純粋にな。だけどお前も間が悪い」


はじめは神々ししばの方を視る。


「彼が1人いるだけで戦場は俺達に有利には。組織であればあるほどにな」





「ちょっと待ってください…!私達は貴方達とやり合うつもりはありませんよ!」


「何?!?!そうなのか!!!」


「隊長、敵の言う嘘を簡単に受け入れないでください」


「何!!!??嘘なのか!?!?」


「…なんなんですか、この人達…」


来栖は再び困惑した。


「私に聞かれても困るよ…それに敵ってどう言う事ですか」


「敵でしょう貴方達は。ボクはそう聞いていますよ」


アレクと呼ばれた男はまるで日本人の如く燕達に言った。


「敵じゃありません!!争う気はないんです!!」


「…それを聞き入れるわけにもいかないんですよ?組織同士がぶつかった以上、その下っ端の我々だけじゃあ勝手に止まることは出来ないんですよ。それが組織です」


「そう言うわけだ!!!!すまないが、ここで異能対策室は終わってもらう!!!!」


神々廻は警棒を抜いた。


「自己紹介がまだだったな!!!!私は警察庁対異能排除特殊異能部隊【No Trace】第2小隊隊長を務めさせてもらってる神々ししば秀泉ひでずみだ!!!!よろしく!!!」


「同じく第2小隊副隊長、デュッセル・アレキサンダーです。アレクと呼んでくれて構いません」


「第2小隊…強いって事か…」


来栖が身構えた。


「いや!!!正直戦闘力は第4の佐田原君や第7の宮代君の方が私より断然上だ!!!」


「声高らかに言うことじゃないですよ隊長。…しかしこれもまた本当ではありますけどね」


アレクは神々廻にツッコミながらも更に続けた。


「【No Trace】の小隊はそれぞれに小隊としての役割があります。数字はその役割が出来た順。戦闘力の強さ順ではないんで、安心してください」


「じゃあアンタ達は何の役割を持ってここにいるんですかね」


来栖の質問にアレクがゆっくりと答える。


「第2小隊の役割は”戦闘支援”。我々の小隊を含む他の小隊の戦闘を支援するのが役割です」


アレクの前に神々廻が立つ。


「そのための私だ!!!!”強固なる結束ストロング・ユア・ユニティ”!!!!!この場に2人の対象者を置く!!!対象者の1人は君だ一人

《かずと》君!!!!」


宣言をしはじめを指差す神々廻。

その瞬間、はじめと乕若は一ノ瀬に向かって動き出した。

その動きはまるでシンクロしたかの様な無駄のない連携。

はじめが右から攻撃するなら追い打ちをする様に一ノ瀬が避け部分に乕若が爪を立てる。

遠目からでも分かるほどの連携力。それも異常なレベルで…



「何をした…」


「まだだ!!!!そしてもう1人の対象者は私だ!!!」


親指で自分指差しながら神々廻は高らかに宣言した。


「…な、何も起きてないけど」


「”了解”です隊長。その動きで行きましょう」


急に喋り出したアレクは来栖に向かって走り出した。


「…く、くるッ!!」


勢いよく来栖に向かったアレクは来栖の横に立ち、身体を捻った。

回し蹴りだ。

その勢いから繰り出されるのは回し蹴りだ。

来栖はそう思い、蹴りが来栖自身の背中に当たる前に身体を屈める

空気を切る音と共に蹴りは自身の頭上を振り抜けた。

咄嗟の判断にしては早く反応できた。

来栖はそう思った。


が、その瞬間来栖の視界は真っ暗になり

そして吹き飛んだ。


——顔面への衝撃。

背中ではなく何故か顔面。

晴れていく視界の中で自分が居た場所に目をやる。

そこには屈んでいた自分と同じ目線に、屈みながら警棒を突き出した神々ししば秀泉ひでずみの姿が合った。


「来栖さん!!!」


燕の声が響く。


「ッッつうぅ…なんなんだ…」


「やはり狙い通りですね隊長。」


「あぁ!!!私の考えた”相手に躱される前提の蹴りを放って私が吹き飛ばす”初歩的だが連携としては良い」


「どういう事ですか…」


「隊長の異能”強固なる結束ストロング・ユア・ユニティ”の効果ですよ」


神々廻がそれに続く様に言う。


「君達は組織というものは何か分かるか!!?それは統率力だ!!!それは結束力だ!!!それは団結力だ!!!!それが無い以上組織というのは成り立たない!!!」


「…そんなのは分かっていますよ…!」


「そうだろう!!君も班長という立場なのだろう?ならば組織を動かすための大変さも知っているだろう!!!」


「ですが、それは10年、20年と前の時代ならその大変さも分かりますが、今は時代も変わっています。戦争も起こりあの頃と今の日本は違います。組織のあり方に多様性も生まれています」


「ああ!!!それもよく分かっている!!!だがしかし、どれだけの組織が起きようと、その在り方は統率力に収束される!!!だからこその私だ!!!だからこその戦闘支援部隊である第2小隊なのだ!!!」


「何が言いたいんですか…!!」


「私の異能は!対象者を定める事でその対象者を中心に絶対的な統率力を齎す《もたらす》異能だ!!!だが必要条件はある!その対象者と縁のある者だけにしか効果がないというのだが組織という広い条件下なら、例え小隊であろうと機能する!!その対象者と縁が深ければ深いほど意思疎通は愚か文字通りの阿吽の呼吸となるんだ!!!!」


「だからボクは隊長のしようとした動きが分かった。いや頭の中に流れ込んできた。ボクがこう動けば、隊長はこう動くだろうと…ね」


「…なるほどねそういう異能ですか」


来栖はゆっくりと起き上がった。


「来栖さん…」


「…統率力を高める異能、ですか。それは厄介ですね…どうしますか王来王家さん」


来栖の言葉に燕は悩んだ。


———ここで私達も戦いを起こしたら、それこそ本末転倒。ミイラ取りがミイラです。だけど、この神々ししばという人の異能はおそらくあのはじめという方にも掛かってる。

一ノ瀬さんとあの2人の戦闘が激化したらそれこそ本当に異能対策室は終わり。

…いやそもそも竜崎さん達も他の【No Trace】の小隊に阻まれている以上、そんな悠長な事も言ってられないのかもしれないか。

説得も無理、一ノ瀬さんだけ連れ戻すのも状況的に無理。



そして燕は口を開いた。


「……どうもこうもありませんね。覚悟を決めるしかないようです」


燕は腰からナイフと”暁”を抜いて構えた。


「即席でも連携はできるという所を見せますよ!」









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