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異能対策室〜王来王家燕〜  作者: イクサ


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33話【責任】


魏藍と温羅部が多くの異なる形のケースを抱えて研究室を出ると、廊下には王来王家燕率いる異能対策室CS班のメンバーが揃っていた。


「全員揃ってるな。来な」


広い作業室に通された燕達はその場に整列する。


「急に呼んで悪かったな」


「いえ、大丈夫です。それで話というのは?」


「色々話すことはあるだろうがまずはこれだ。出来たぜ。お前達の要望に沿った擬似能力が」


魏藍はケースを燕以外のメンバー、それぞれの目の前に置いた。


「ついにか……」


誰かが小さく漏らす。


魏藍は頷くと、もう一つ別のケースを手に取った。


「それでこいつは王来王家、お前の分だ。お前に馴染み深いのにしておいた。その重みをよく感じろ」


燕はそのケースを開くといつしか預けたアサルトナイフだった。

燕はナイフを手に取り少し観察した後、自分の持っていた別のナイフと交換して(しま)う。


「ケースの中にはAM液もストックしておいた。そうそう無くなりゃしないだろうが、無くなったらまたここに来てくれ。支給する」


「……その支給ってのは、テールム社の奴らにも行ってんのか?」


竜崎が不意に口を開いた。


「…そうだ。何か問題があるのか?」


「問題しかなかったぜ?警察でも軍でもないただの極道に擬似能力が出回ってんだぞ」


「それは俺達じゃなく、テールム社に言ってくれ。俺達は武具を提供してもらってる代わりに擬似能力の完成品を渡してるだけだ」


「竜崎さん、落ち着いてください。その話は私直々に狗波社長に話しましたが狗波さんも同じような意見でした」


燕の言葉に竜崎は何も言わずに顔を顰めた。


「ですが、魏藍さん。擬似能力が出回ったのも事実。擬似能力が完成したら当初は警察関係で扱いを試し、危険性の有無が解消されたら一般に広めるというはずの事が行われてない以上、私達からの疑問が出るのも当然です」


「王来王家…」


魏藍は静かに続けた


「擬似能力を作ろうと最初に提案したお前がそんなこと言うとは思わなかったな」


魏藍の問いに燕は返答を出す。


「…擬似能力というものを使い、そして使ってるのを目の前で見て、対峙してきました。…思いましたよ、立案者の私自身”なんてモノを世に生み出したんだろう”って」


「私は擬似能力を非異能者が異能者に向ける武器としてしか考えてなかった。でも、蓋を開けてみたら非異能者でも異能者の立場になる武器に過ぎないのかもと」


「王来王家っち、何が言いたいの?」


今まで黙っていた温羅部も口を開いた。


「私は今の世の中に”異能者と非異能者”という構図から””異能者と擬似能力を使う者”という構図に変えようとしていました…けど、実際に起きる構図は”異能者と擬似能力を使う者と非異能者”という構図になるのではないかと…そう思えてしまうんです」


「使う人間によっては異能者と同じ立場になり得る…っていうわけか」


竜崎が続けて言った言葉に燕は頷いた。


「けどさぁ王来王家っち、これは君が何年も前に提案してそれをずっとここのラボのみんなと続けてきた事でしょ?それを否定しちゃうわけ?」


しばし沈黙が落ちた。

燕は自分の胸の奥に沈殿していた“答えの形を持たない重さ”を確かめるように、ゆっくり息を吸った。


「……否定は、してないわ」


そして静かな声で言った。


「私は魏藍さんや温羅部さんのおかげで擬似能力を完成に落としてくれて良かったと思ってます。

これがあれば、救える命がある。

ただ……私は、自分が想像していた未来よりも現実は上手くいかないものなんだって思っただけです」


燕はケースを触れながら続けた。


「擬似能力を持てば救われる非異能者の方がいる。

だけど同じだけ、擬似能力を救う側として使う力のない人もいる…それによって今よりも混沌とした未来が起こる事を私は恐れてる…」


温羅部を口をへの字にしながら聞いていた。


「だからと言って俺達も止まることは出来ない。俺達は研究者であり技術者だ。作れと言われたものを作るだけでそこから先には干渉する事はない」


魏藍の芯のある言葉を燕は黙って聞いた。


「だが、お前はもう研究者じゃない。お前は異能対策室で警察だ。…お前は擬似能力を生み出して終わりじゃないだろ?」


「…えぇ…!私は擬似能力を異能者に対抗できる非異能者の武器として生み出しました。その構図を作り上げます」


「俺ちゃん達はこのまま擬似能力をテールム社に渡していくけど、テールム社がどんなやつに擬似能力を提供してくのかは俺ちゃん達はわからない。イカれたバカやろーに渡しちゃった場合、王来王家っちはどうするの?」


「擬似能力の生み出した張本人として、正しい使い方をしてもらうために取り締まります


「へぇ…良い覚悟だね。俺ちゃん見直しちゃった」


「だが途方もない話になってくるぞ?擬似能力は何れ必ず世に普及する武器の一つになる。その時はお前が考えてる何十倍にも擬似能力を使った異能犯罪者が出てくる。お前はそれに対しても出来るのか?」


「もちろんです。それが擬似能力を生み出した私の責任です」


竜崎が腕を組んだまま言った。


「……私達だろ。俺達も擬似能力(こいつ)を扱う側になるんだ。俺達で示さねぇとな」


「お、竜崎さんがそうな事言うなんて今日は槍でも降るんすか?」


竜崎に続いて神室が茶化す様に言った。


「紫苑は異能犯罪者と戦う。それだけ」


「私は班長のために頑張ります!だから一緒に背負わせてください!」


村崎と時陰も続く様に燕に言った。


「みんな…えぇ。頼んだわ」



その空気を破ったのは、作業室内に響いた電子音だった。

燕の腕輪方のデバイスから鳴っている。


画面に表示された名前を見た瞬間、室内の空気が一気に研ぎ澄まされた。


〈比嘉警視監〉


燕は通話ボタンを押し、スピーカーに切り替えた。


「おぅ、王来王家。擬似能力は受け取ったか?」


「はい、丁度今受け取りました」


「タイミングバッチリだな。なら急いで対策室に戻ってくれ」


少し急かす様な口調でそう告げた後、通話は切れた。


「では、魏藍さん私達は行きます」



燕はケースを手に持ち、作業室を出た。

その先にただの任務では済まない、これから待ち受ける“現実”があることを知らずに…


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