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異能対策室〜王来王家燕〜  作者: イクサ


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32話【三傑】


警察庁会議室の照明は低く、冷たい空気が張り詰めていた。

集まったのは異能対策室責任者の比嘉公太郎、警察庁対異能排除特殊異能部隊【No Trace】総監の井土仁蔵(いづちにぞう)、そして警察庁長官の九条兇然。

かつて異能戦争を生き抜いた十傑の三人。


「で、まず榊昴の件だが、何か言うことはねぇのか?井土」


比嘉の声は落ち着いているが、指先の震えがほんの僅かに見えた。

それを見逃さず、井土は眉を吊り上げ、声を荒げる。


「言うこと?ねぇな。俺からしたらただの警察の特殊課のお前らが俺らの山に入り込んだだけの様にしか見えねぇけどな!」


比嘉は肩をすくめ、静かに反論する


「俺たちはイノベーション事務局の襲撃の捜査で榊を追ってたんだ。それをお前らの山なんて調べてる暇なんかねぇんだよ」


「イノベーション事務局如きの襲撃なんかどうだっていいんだよ、こっちは各界隈の著名人共の捜索の重要参考人として真能連盟が名にあがった。それに都合が良かったのが榊だったんだよ。どっちが優先されるのかなんて理解できるだろ?」


「なら好き勝手に暴れる事が許されると思ってんのか?

少し暴れすぎじゃねぇのか?榊の消息不明…ありゃお前らが始末したからじゃねぇのか!」


「必要な情報を得て、捜索対象の著名人が殺されてた。真能連盟とかいう異能犯罪に足を突っ込んでるカルト集団の幹部。イノベーション事務局襲撃の指導者なんだろ?処理しても問題ねぇだろ」


「それを好き勝手やってるっつってんだよ!」


九条は二人の間にゆっくりと割って入った。


「……落ち着け。互いの言い分は理解している。だが、今は揉めている時ではないだろ」


二人は互いを睨みつける。だが九条の言葉には、かつての戦争を中心に立ち生き抜いた者だけが持つ確固たる説得力があった。

それぞれが呼吸を整え、視線を九条に向ける。


「今回の榊昴及びそれに付随する真能連盟の件は両者不問とする。」


そして話題は自然とカルペ・ディエムに移った。

比嘉は資料を手元に置き、言葉を選ぶ。


「カルペ・ディエム。お前達両者にも探らせているこの組織についてだ。」


「表向きはほぼ無名に近い…というかこの名称も合ってるのかどうかも分からない」


比嘉は資料を見ながら言った。


「今年の4月ごろ、お前ら異能対策室が出来た頃だな。その時期にこいつらの名前も出てくる様になった…

4月以降に関東を中心に起きて、未だ未解決になっている異能事件には間接的にこの名前が出てくる」


井土は腕を組み、眉間に皺を寄せた。


「本当に存在するかもわかんねぇな。何を目的にしてるのすらも」


井土は欠伸をしながら言った。


「俺の部下にも探させてるが、何をするのかも、何人いるのかも、何の組織なのかも、存在しているのかさえも分からないこいつらをなんで探さなきゃなんねぇんだ九条」


九条は少しの沈黙の後、口を開いた。


「……感だ」


「それは長年警察をやっているアンタだから言える言葉ってわけか?」


井土が茶化す様に言った。


「…さてな」


「ま、何でもいいさ。カルペ・ディエムなんてのは俺達がさっさと潰してやるよ。良いおもちゃも貰ったしな」


井土は徐に木刀を持ち出して言った。


「…お前、まさかそれ擬似能力か」


「そうそう、そう言う名だったなこれは。こんなんよく作ろうと思ったよな。お前んとこの王来王家とか言うのがこれを作ろうと思った言い出しっぺだろ?大したもんだぜ。異能者の異能を道具に移し替えて異能だけを再現させるなんて…ハハっ、イカれてなきゃこんな発想ならねぇよな普通」


井土が言い終えると同時に比嘉が井土の胸ぐらを掴み、こめかみに拳銃を突き立てた。


「次、うちの部下を侮辱してみろ…テメェのその脳みそ吹き飛ばしてやるよ…ッ!」


「やってみろよ…!丁度このおもちゃの使い勝手を調べてみたかったところなんだからよォ!」


井土が木刀を比嘉の首元に翳す。


「やめないか、2人とも」


九条の一言で一触即発の両者はゆっくりと互いの武器を下ろす。


「井土…お前は昔から嫌いだった」


「奇遇だな…俺もだ」


「正直テメェの様な元極道がが【No Trace】の総監になった時は意味がわからなかったぜ…なんで”白崎(しろさき)”じゃねぇんだって…」


「白崎?あぁアイツか…そういやお前ら戦争の時から仲良かったもんな」


「…今からでもお前は【No Trace】の総監を降りるべきだ」


「お前にそんな権限はねぇだろ比嘉」


2人はジリジリと睨め付け合い、手に持つ武器には力が入る。


しかしそれを見かねた九条が静かに声を発した。


「いい加減にしないか。かつての十傑ともあろう者共が仲間割れとは情けん…」


九条はそう言い自分のスーツのポケットから液晶のついた腕輪を取り出す。


「良い機会だ。ワシも”これ”の実戦をしてみたかった。

お主ら暴れたいのならワシが相手をしよう」


九条の発言に引っ掛かった比嘉がすぐに聞き返す。


「兇然…それまさか」


「ああ。ワシも先ほど受け取った。擬似能力を」


「なんだよアンタもか…つーかいらねぇだろアンタにそれは」


井土が呆れた様に言う。


「ワシももう歳だ。それに若い者達が作った最先端の技術はワシらが使ってやらねば示しもつかん」


「もう警察組織には普及し始めてるみたいだな」


「イノベーション事務局は良くやっている。襲撃されてからそこまで日が経ったわけでもない」


九条は腕輪をしまい続ける。


「だが、擬似とはいえ異能は異能だ。使い方を誤ればそれは異能犯罪者と何も変わらん。井土、お主らもくれぐれ使用には気をつけろ」


「ジジ臭え説教だな、安心しろよそこの誰かさんの組織が関わってこなきゃ間違いなんか起こさねーよ」


「井土…ッ!」


「九条はああ言ったが、お前分かってんだろうな?

俺達とお前の組織の成り立ちこそは同じだが、目的や行動範囲、組織の志向は違えんだ

次に同じ様な事があった場合、ウチらはお前ら異能対策室にも相応の行いをするつもりだ。覚えとけ」


井土はそれまで茶化す様な言い方から圧のある真剣な声色で比嘉に言ったあと会議室を後にした。


「相変わらずな男だ」


九条はそう言うと静かに資料をまとめた。


「変わってねぇだけだ」


「そうだな。まぁ、井土達【No Trace】はあのままカルペ・ディエム、真能連盟の調査を続けさせる。お前達はいつも通り普段の仕事に戻れ」


「言われなくても分かってる」


頭を掻きながら会議室を出ようと椅子から立ち上がる比嘉。


「それと比嘉」


それに対し、九条はすぐに引き留めた。


擬似能力(これは)いずれ渦を呼ぶぞ」


腕輪をデスクの上に置き九条は静かに言った。


「……それもお得意の感か?…ま、注意はしとくさ一応な」


比嘉は片手をひらりと上げ、そのまま扉へ向かった。

扉が閉まる小さな音が響く。


九条は机に置かれた腕輪へ視線を落とす。

それは、ただ静かにそこにあるだけだ。


静寂が過ぎた頃、九条も席を立った。

会議室には誰もいなくなり、冷えた空気だけがそこには残った。


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