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異能対策室〜王来王家燕〜  作者: イクサ


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25話【尋問】



東京・多摩市付近の山岳地帯。

夜は静かで、風がうまく音を立ててくれる。

榊昴はゆるやかな斜面を駆けながら、口の端をわずかに上げた。


榊は腕につけたデバイスで何者かと話し始めた。


「僕です、榊です。…えぇ、上手く用心棒君が機能してくれまして…僕は多摩市に来ています…はい、はい…

それで指導者様、あの遺体達遅かれ早かれ…えぇ、如何しましょう?僕の信者達で根回しする事も…なるほど…では、その形で、はい…失礼します」


榊はデバイスを閉じ、口角を上げながら歩き出すと同時に辺りを見回した。

明らかな殺気を感じ。


「…誰ですか?この山で僕になにか用ですか…?」


その言葉に榊の後ろの木陰から1組の男女と小柄な女性とスーツ姿の刀を携えた女性が姿を現した。


「あら?よく気づいたわね」


和服姿の女、宮代(ミヤシロ)葛の葉(くずのは)が驚いた顔で言った。


「誰でございましょうか、殺気を出したお方は。」


小柄な女性が和服姿の女の方を見る。


「まさか円角(えんかく)隊長、私の隊長が殺気を出していたと?」


スーツ姿の男、十倉(とくら)極楽(ごくらく)が切り返した。


「ではないのでしょうか?(ワタクシ)はそう思っていますわ」


「あら、正解よ、みゆ」


「……隊長、殺気は隠してください」


スムーズに受け答えする宮代に十倉は呆れた様に言った。


「なんなんだ、君らは…コントに付き合ってる暇はないんけど」


「榊昴、だな?貴様に尋問したいことがある。大人しく拘束されてもらう。」


スーツ姿の女性が刀に手をかけながら詰め寄った。


「…君ら、もしかして異能対策室の別動隊か何かかい?

悪いけど、大人しく従いはしないよ?」


「異能対策室…?勘違いしてもらっては困るな。」


スーツ姿の女性は鼻で笑いながらそう言った。


「アタイらは【No Trace】聞いたことないかしら」


その言葉と共に榊は警戒態勢へと変わった。


「僕らの同胞をやった組織か…ッ!」


「あれは(わたくし)達の同僚が手加減を知らないせいで無駄な殺生をしてしまい、申し訳ありません。ねぇ?十倉副隊長」


「いや、9割貴女の妹のせいですよ円角隊長」


男は呆れた様に言い返した。


「あら?そうでしたか、うゆにはよく言い聞かせておかないといけませんね」


「【No Trace】の連中が僕になんの用だい…」


「先ほど言ったが貴様に行うのは尋問だ。真能連盟、そしてその後ろについてる者達の情報を」


「先に言っておくけどアタイらと真正面からやり合おうなんて思っちゃいけないわよ?

アタイらはほぼ全員が異能者。」


宮代は近づきながら言う。


「故にその命、無駄に捨てたくはないでございましょう?」


円角みゆが微笑みながら続けて言った。


「安心してくださいませ、(ワタクシ)達は情報が欲しいだけでごさいます」


「…僕が言うと思うかい」


「”黒き氷の魔女(アナスタシア)”」


宮代がそう言うと、榊昴の両脚が黒い氷で覆われた。


「チッ…このまま拷問でもする気かい?こんな場所で」


「えぇ、もちろんでございます。戌亥(いぬい)さん」


スーツ姿の女性はすぐに片膝をつきながら斧を円角に渡す


「こちらに」


「斧…?」


榊の額からは汗が垂れる。


「そう言えば自己紹介がまだでございましたね?

(ワタクシ)、警察庁対異能排除特殊異能部隊【No Trace】第10小隊隊長を務めさせていただいています円角(えんかく)みゆでございます。こちらは戌亥朱佳(いぬいしゅか)

私の部隊の副隊長でございます。」


「我ら部隊の名目は尋問だ」


「【No Trace】…ッ!君らが…」


「安心してくださいませ。私の尋問は1分以上耐えた方は居ませんので。」


円角はその小柄な体型に似合わない斧を振り上げた。


「ではいきます。”他者に等しく(フェイタル)命の重さを(・デッド)”」


円角はそう言い斧を振り下ろしたーーー


鈍い音と共に静寂の山の中で騒めきが風と共に抜けていった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




東京都上野。

駅から少し離れた所に、テールム社の本社があった。

中は様々な武器や道具が飾ってあったり、乱雑に並べてあったりとまるで武器屋敷に似た様子であった。


そこの社長室に燕は1人で訪れていた。


「単刀直入に聞きます。釈迦堂罪武に擬似能力を渡しましたね?」


燕はそこの社長、狗波に対面するや否や断言した。


「あぁ、そうだよ。それの何が問題なんだい?」


「問題しかありませんよ!」


燕は声を荒げて言った。


「なぜ?」


狗波は続けて言う。


「王来王家さん。貴女も既に擬似能力を付与したその銃を持っているじゃないですか」


「これは軍用かつ試験品です。私が問題視してるのはなぜ既に軍事関係以外の人に所持させたのかと言う話です。イノベーション事務局は軍事品として運用し、然るのち一般用として世に出していくはずではないんですか?」


燕の切り返しに狗波は少し考えてから口を開く。


「なるほど。それなら答えますが、まず我々は武器商人です。そして前にも言いましたがテールム社は貴女が居たイノベーション事務局とは利害の一致があるため業務提携として武器具の提供をする代わりに擬似能力を譲り受けるようにしています。それに貴女の当初の目的がこの擬似能力でしょう?」


「それはそうですが…」


「釈迦堂君にはお返しをしただけです」


狗波は近くに置いてあった刀を持つ。


「これはね釈迦堂君が使っていた村正のレプリカ…のコピー品でね。これを”記憶”させてもらったお礼に彼には完成品を渡したというわけさ」


「完成品…擬似能力ということですか」


「ええ、彼だけじゃない。”記憶”をさせてもらった方々には返礼品として擬似能力を贈っている。

事務局の魏藍班長には無理を言って早急に製作させてしまってるけど…」


「そんな勝手な…!」


燕は怒りを露わにした。


「それよりもどうでした?彼と戦ったんでしょ?」


狗波の質問に燕は怒りをしまい、淡々と答えた。


「…非常に危険な力でした。まず既存の武器具では太刀打ちできません…それだけでなく擬似能力同士がぶつかった際、単純なパワーの押し合いになるわけなので彼の持つ擬似能力より劣る物は押し負けますね…」


「…なるほど、その銃には勝ったわけですか”妖し”は」


「何を考えてるんですか…まさかまだ擬似能力を広める気ですか…!」


「ええ、それが我々とイノベーション事務局の取り引きです。

今や異能対策室に移った貴女が、口を出せる範疇をもう超えてるんですよ」


燕は口を継ぐんだ。


「貴女はこう感じたのではないですか?擬似能力は思った以上に異能力として成立してしまった。これを世の中に出していいのか、少なくともまだ早いのではないのか、軍事利用のみで終わらせるのが良いのではないか、と」


狗波は刀を燕に向け、断言する。


「否!これは異能犯罪者に対抗する非異能者の切り札になり得る物だ!僕たちが製作した武器具とイノベーション事務局の合同製作品。それが擬似能力です!ならばテールム社の代表として僕は思う。すぐに世に出していくべきだ!」


更に狗波は燕に詰め寄る。


「貴女の危惧する気持ちもわからない事もない。

前に言いましたね最初に擬似能力を見た時危険だと思ったと。だがそれは異能も同じ事だよ!だからこそ世の中のバランスを整えなければいけない!」


狗波は少し息を吸ってから言葉をゆっくりと吐き出す


「それにね僕は貴女には感謝しているんだ」


「感謝…?」


「ええ。だってこれは貴女が”望んだ結果”でもあるんだ。貴女が擬似能力を作ろうと思わなければこれは生まれなかった。ならば、武器商人として感謝の他もないよ!」


狗波は刀を下ろし、燕から離れた。


「漸く歯車が周り、時代は一つ先へと進むんです。…話は終わりです。お引き取りを王来王家さん。有意義な時間でした」


燕は狗波の言葉を重く受け止め、扉へ向かう。

燕は扉を出る際に狗波の方を向く。


「…狗波社長、貴方ももうその歯車にハマっていますよ。急な訪問にお時間をいただきありがとうございました。失礼します」


燕はゆっくりと扉を出、その場を後にしたーーー





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