3.祈祷
愛洲神社。自分の住む愛洲市の地名の由来となった神社の前に俺は立っていた。
「いつ見てもちっさいなぁ」
賽銭箱は一丁前にあるが肝心の本殿はいつ見てもしょぼい。たぶん祀られてる神様もしょぼいんだろうなぁ。
しかしそれにしても名前が酷い、今の状況を考えると皮肉がすぎる。もしかしてこんなトコで生まれ育ったからご利益もらっちゃってこんな目に遭ってるんじゃねぇの。
「……そんなわけないだろ、うん」
今日は今後の安全のために賽銭を納めにきたのだ。今だって吹雪の中何度も吹き飛ばされても諦めず、必死に鳥居に掴まっている。
「ひいぃあぁぁ……」
風に揺さぶられて情けない声が漏れ出す。こんな目に遭ってる時点でここは聖域でも何でもない気もするが一度賽銭を納めに来た以上、中断は許されない。
「うおりゃっ」
ポケットに入っていた2万円を握りつぶし賽銭箱に投げ入れる。丸まったそれは箱に飛んでいき、入る寸前で吹雪に吹き飛ばされてはるか彼方へ飛んでいった。
「あーあ……」
そもそも200年分の安全を2万円で保証してもらおうとするのはかなり厚かましい考えだったのではなかろうか。それも内心しょぼいだのボロカス言っていた分際で何を都合のいいことを言っているのか、神様もほとほと呆れたことであろう。
「何やってるんだよ、キミ」
「えっ!?」
どこからともなく声が聞こえてきた。落ち着いた女性の声……これはまさか神様が降臨してくれたのか!?
すごいな神様。2万円で降臨してくれるとかサービス精神旺盛すぎるだろ。ていうかそれもどっか行っちゃったし。
だがたしかに向こう200年も賽銭がないこと考えると安売りもしたくなるか。なるほど、納得した。
「後ろだよ、後ろ」
言われた通り振り返るとそこには……長い黒髪を携えた小さい女の子がいた。それにしてもさすが神様、ジャンパースカートだけで防寒着を一切着ていないのに寒そうにする素振りすら見せていない。
「……案外ちっちゃいな」
「はぁ!?」