凍った世界も悪くはない。

2.計画

「ちくしょー！バイクも凍って走れねー！」

　エンジンが一瞬で冷却されて走ることすらできない。500万円かけてカスタマイズした相棒も今はただのカッコいいだけの鉄塊。

　コイツとまた世界を駆けるにはあと200年間かかる事実を噛みしめるほかない現状につくづく嫌気が差す。

　冷凍されて二日目、気づいたことがある。どうやら俺は冷凍されない体質というより、冷凍されたまま動ける体質らしい。

　現に白い息が一切出ないし、一日なにも口にしていないが腹が一切空かない。なら動くためのエネルギーがどこから出ているんだという話になるが、それはこの状況においては些末な疑問というほかない。

　そしてそもそも体質のことなど死ぬほどどうでもいいというほかないが。たぶん今の俺、死にたくても死ねないけど。

「ひーん……」

　200年も行くあてもなく彷徨うのか。もし仮にアメリカで解凍の時間がきたら不法入国で逮捕されるのだろうか。新世界初の犯罪者として後世に名を残すのはご勘弁願いたい。

　そう考えるとやっぱり国内旅行だな。今なら海も凍って北海道から沖縄まで好きな所にいけるし。でもどうせするなら何か目的とか立てながらやりたいな。なんせ200年、ただ行き来するだけだと先に心が折れる。

　日本中の神社巡り、こういうのって計画立ててる時が一番楽しいんだよな。

「いや……国内でも海上で溶けたら死ぬだろ」