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世紀末サバイバルライフ  作者: 九路 満
北の地 編
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2.別れ道(4)

 奴らの車両が見えなくなってようやく俺は単眼鏡から目を離せた。だが頭を吹き飛ばしたあの場面はしっかりと俺の脳裏に刻まれており気分が落ち込む。たとえ俺が助けに出たとしても恐らく結果は何も変わらない、それどころか他の彼らにも被害が出たかもしれないし、何より俺自身とマルの命も危うかっただろう。論理的に考えて何ら間違いは犯していないと頭では分かってはいても心の整理はそう簡単にはつけられない。俺は困った時用にと、リュックの底に入れておいたビールを取り出し一気に飲み干す。俺の様子を見つめるマルの頭を一撫でし、奴らが戻ってこないかさらに監視を続けた。

 時計は午後一時を表示している。あれから数時間が経過したが、奴らが使う車両の音はあれから聞こえない、ショッピングセンターにも変化はなく初老の女性は変わらず野晒しになっていた。空には野鳥達が集まりつつありこの後に起こる凄惨な光景が目に浮かぶ。

「なぁマル、もしかしたら残りの二人もショッピングセンターの中で殺されてるかもしれないぞ」

 マルは横になりながら目を開けて俺を見つめた。

「わかったわかった。わかってるよ、もし死んでいたとしても行くべきだよな」

 自分の中で決めた事を確かめるようにマルへ話をした。覚悟を決めて荷物をまとめる。部屋を出る前にホルダーから取り出したナタを軽く振り昂る気持ちを抑え込む。

「行くぞ、マル」

 喫茶店から出てビルの管理人に敬意を表して俺は扉の鍵を閉めてショッピングモールへと向かった。


 大通りを横切りショッピングセンターの駐車場へと入った。散らばるカートを縫って歩いた先には高みに集まる野鳥達が標的にする彼女の死体が転がっていた。先行している俺は少し離れた場所にマルを待機させ、一人で死体の確認に向かった。ナタを構えて近寄ると彼女の最後の姿が鮮明になる。やはり至近距離で発砲された彼女の頭部の一部は欠損し、辺りに肉片となって散らばっていた。せめて上に何かかけてやりたいが奴らに見られてしまう恐れがある為、このまま野晒しにせざるを得ない。俺は屈み手のナタを地面に置き両手を合わせた、この人はどんな人でどう生きて来たのかは知らないし興味もないが、こんな死に方はあまりにも悲しい。拝み終わった俺はショッピングセンターの方を見てみたが、近くで見た入り口はやはり派手にガラスが割られており、もう少し別の侵入方法があっただろうと思わずにはいられなかった。

 ショッピングセンターの入り口に着いた俺は入り口周辺に人気が無いかを探ったが、辺りには気配はなかった。マルに手で合図を送り、側に呼び寄せ担ぎ、ガラスが散らばる入り口から店内に入った。前から思っていたが外観で見るよりも広さを感じる店内だ。まだ日常だったあの頃、休日になると大勢の人がこの店に買い物に来ていた。ふとその光景を思い出すと今のこの光景は寂しい限りだ。マルを下ろして行方がわからない二人の探索を始める。広い店内をマルだけを先行させる訳にはいかず、常時行動を共に探索を進めた。静かに動いているつもりでも静まり返った店内では俺の足音とマルの吐息が嫌に大きく聞こえる、店内に入ってからはナタではなく、リュックから取り出したカランビットナイフを隠して手に握っている。食料品売り場には無数のハエが飛び回り、生鮮食品売り場の棚には腐った肉や魚が並べられたままだった。

 店内は大方見たが人の形跡は特に感じられない。そこで俺はバックヤードに向かった、店内と繋がれるスタッフ以外立ち入り禁止の扉をスタッフでない俺が通るのにはまだ変な緊張がある。バックヤードにはそこかしこにダンボールが積み上げられとても整理されているとは思えないが、客に見えない所は何処も似たようなものだと妙に納得した。町では有数の大きさを誇っているだけありバックヤードには複数の部屋があった。廊下には窓がないため進むにつれて周囲が暗く見えなくなる。俺はリュックの外ポケットからペンライトを取り足元を照らした。

 長い間、人の出入りがなかった廊下には見てわかる程度の埃が積もり、奴らと彼らが残したであろう足跡が確認できた。その足跡を辿ると扉の上に会議室と書かれた札がある部屋の前で途切れていた。扉には磨りガラスが付いており、部屋の中の窓からの光で少し室内の様子がわかる。ペンライトをリュックに戻し、マルを少し離れた場所に待機させて、部屋の前で五分程動きがないか様子を見たが、何の変化も見られなかった。俺はマルを待たせたまま部屋に入ると決め、ノブを静かに回して扉を開けた。部屋に入ると会議に使われていたであろうテーブルやイスが荒らされている。恐らく奴らが彼らと争った形跡だろう。しかし妙だ、部屋には荷物らしき物が見当たらない。俺が彼らを見つけた時にはそれぞれが荷物を抱えていた。奴らが持ち出した荷物も見ていたがそれらしい物は見受けられなかった、外から差し込む明かりを頼りに俺は、部屋に荷物が隠されているか探したが見当たらない。会議室の扉を開けて廊下の先を見るが、残されている扉は外へと続く扉だけだ。廊下で待機しているマルを呼び寄せもう一度会議室に入った。

 倒れた椅子を一つ起こして腰を下ろした。ゴーグルとマスクを目と口からずらして一息つき、リュックから出した水をマルと分けて飲んだ。部屋の隅々を見たが荷物が無い、彼らの人数を数え間違えたのかと自分を疑うが、俺が見た中には間違いなく子供がいた。それに彼らの荷物が無い。頭を悩ませ天井を見上げると天井裏への扉を見つけた。扉はロックされており、引っ掛け棒で開閉する仕様になっているようだ。部屋をもう一度探すと、荒らされた机の下敷きになっていた引っ掛け棒を見つけた。引っ掛け棒を壁に立てかけ、ゴーグルとマスクを元に戻し、何か問題が起きても即座に避難できるように逃走ルートを確保する。まずは会議室の扉を開いた状態に固定する、次にマルを伴い廊下の先にある外に出られる扉を開けた。扉は都合がいい事に通りには面していない、外に出て問題なく通れるかの確認の為、建物に沿って歩くと特に障害物などはなかったが割れた瓶の破片が通り道に散らばっていたので拾い集めてバックヤードのゴミ置き場に捨てた。

 外へ繋がる扉も開けた状態で固定をして、マルを待たせた。天井裏には扉を開いて急で狭い階段を登り降りしなくてはいけないので四足歩行のマルでは俊敏に動けない。だからマルには外の状況に異変があればすぐにわかる様に外で待機をさせた。立てかけた引っ掛け棒で天井裏の扉のロックを外し階段を下ろした。天井裏は恐らく物置なのだろう、階段の下からは明かりはなく真っ暗に見えた。リュックのポケットからペンライトを出して照らすが天井裏の天井以外何も見えない。手に持つカランビットナイフをいつでも使える様に握り変え、ゆっくりと階段を登った。

 天井裏に顔を出してライトで辺りを照らすが、天井裏にしては広く保管されている荷物があちこちに積み上げられているので全ては見渡せない。階段を登り切り改めて周りを見渡すと一番奥にリュックらしき物が積まれているのを見つけ、ナイフを構えて荷物が積まれた奥へと歩いた。近づくにつれて積み上げられたリュックと棚の隙間に小刻みに震えて丸々背中が見えた。俺の心拍は急上昇し、ナイフを握る手の力が強まる。二メートル程離れた位置で俺は足を止めた。

「誰か、そこに居るのか?」

 マルがいない場所で発した久しぶりの言葉だが、心配していたよりも普通に話せて安心した。だが俺の問いかけに対する返答はない。

「危害を加えたりしない、だから出てきてくれないか?」

 再度、問いかけた俺の言葉に反応してようやく物陰から荷物を避けて出てきたのは二十歳前後の男の子と十歳前後の女の子だった。

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