19:わたくし、試されていますの……?
ユリシーズ様に舌打ちされてしまい、肩に寄りかかったままでいることが駄目な気がしました。
んが! 何故か離してくださいません。
「あんのぉぉ」
「ん?」
そもそも、何故にユリシーズ様は真横にいらっしゃるのでしょうか? 出発したときは正面に座られていたと思うのですが。
「イザベルがゆらゆら揺れていて危なかったから」
「あ、なるほど! ありがとう存じます」
とても嬉しいのですが、既に目は覚めましたし、落ち着かないので解放していただけないかなぁ……などと思い、抜け出そうと体を捩りましたが、腰をガッツリと掴まれていて抜け出せませんでした。
「何を暴れている。危ないぞ?」
「離していただければ……と」
「………………嫌だ」
――――い、嫌だ⁉
ユリシーズ様が何か変です! ものっっっっそい、変です!
いつものスンとした感じが全然ありません。
嫌だって言いながら唇尖らせてます。超絶可愛いです!
結局、目的地到着まで、ユリシーズ様にべったりとくっついたままでした。
少し荒れた道を進んでいた馬車がやっと停止しました。
そこは郊外にある小さな湖でした。
「手を」
「はい」
ユリシーズ様にエスコートされながら馬車を降り、泉のそばの木陰に移動しました。
爽やかな風が頬をくすぐり、小鳥たちの可愛らしい鳴き声が耳を楽しませ、とても穏やかな時間が流れる場所でした。
「ここでランチにしようと思っている」
「はい! 素敵なところですね」
「……こういう場所は嫌いじゃなかったのか?」
――――あらら? また?
「もしかして……私が過去に嫌がった場所を今日のデートコースにされたのですか?」
「っ…………あぁ」
ユリシーズ様が苦虫を噛み潰したような表情で、ふいっとお顔を反らされました。
「嫌がらせとかじゃない。ただ………………イザベルを試すような事をしてすまない」
「え……試されていたのですか⁉」
大丈夫でしょうか⁉ 合格なのでしょうか⁉ え、どこからどこまでがどう試されていたのでしょうか⁉
どどどどどどどうしましょう!
「イザベル!」
「ひゃいっ⁉」
ユリシーズ様の言葉に焦りを覚え、辺りをキョロキョロと見回して、誰か審査する人物が潜んでいたりしないか確認していました。
「逃げるな」
あ、いえ、逃走経路を探していたわけではないのですが……。
「側に……」
腰に腕を回され、木陰にしていた木に背中を預けるように誘導されました。頭の横にトンとユリシーズ様が左手を置き、私の顎を右手で支えました。
これは、いわゆる壁ドンですわ。
しかも! キスする直前のっ!
ユリシーズ様の真っ赤な瞳が私を射抜くように見つめてきています。薄く開いた唇から、ちらりと舌が覗いていて、とても艶めかしいです。
心臓がバクバクと鳴り響いて、先程までは聞こえていた鳥の囀りや草木の擦れ合う音などが一切聞こえません。
徐々に顔が近づいて――――。
「はいはい、失礼しますよー。敷物広げてランチ並べるんで、そこ退いてくださいねぇ」
「「……」」
ガッサガサと大荷物を揺らしながら現れたアリアに、全てをぶち壊されてしまいました。
ずびばぜん。投稿忘れてました……。
ほんとうに、申し訳ないです(泣)