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18/24

18:わたくし、知らなかったのですね……?




 手繋ぎで植物園を回り終えたあと、馬車に乗りました。

 植物園は貴族街の外れにあったのですが、今度はさらに貴族街から離れて郊外に向かっているそうです。

 どこに行くのかと聞いても、ユリシーズ様は教えて下さいませんでした。

 馬車の中が静かになって暫く経ったころ、向かい側に座っているユリシーズ様がこちらをジッと見据えていらっしゃいました。


「イザベル」

「はい」

「今日は……いつものように話さないのか?」


 いつも、とは……以前の頃のように、という意味ですわよね?

 あの頃は、自身の自慢話ばかりしていた気がします。


「あの、質問してもよろしいですか?」

「ん?」

「ユリシーズ様は、お休みの日は何をされているのですか?」

「…………」


 あら? とてつもなく怪訝な顔をされてしまいましたわ。


「何故、それを聞く?」

「え……」


 だって、何も知らないんですもの。

 今まで好き好きと言っていたものの、ユリシーズ様の事を一切知ろうとしていなかったのです。

 もちろん表面上というか、一般的に知られているであろうことは、私も知っています。

 でも、本当のところはなんにも知らないのです。


「……今の時期は、よく風の通るガゼボに座って本を読んだりしている」

「っ⁉ どんな本ですの?」

「最近は――――」


 答えてくださいました!

 気になることを聞いたら、普通に答えてもらえるのですね。


 どんな格好で寛がれているのでしょうか?

 どんなお茶を飲まれているのでしょうか?

 お菓子は?

 甘いものは好き?

 塩っぱいもののほうが好き?

 

「ふふっ、そんなことを知りたいのか?」

「はいっ!」

「まず――――」


 沢山のなんてことないような質問に、ユリシーズ様は真摯に答えて下さいました。

 



 イザベル、イザベル、イザベル…………。

 何度も何度も耳元で名前を呼ばれている気がします。


「ん、もうそろそろ着くぞ」

「ひょぇ⁉」


 あら、何かに寄りかかっているわね、何だか温かいわね、爽やかないい匂いがするわ。

 ぼんやりする頭でそんなことを考えながら、ゆっくりと目蓋を押し上げると――――。


「もっ、申し訳ございませんっ」


 ユリシーズ様の肩に寄りかかっていました。

 お顔がドン近です! 柑橘のいい匂いがします。すんすんすんすん。……ってちがーう!


 勢いよく頭を上げて離れようとしましたら、そっと頭を押さえられて、またユリシーズ様の肩に戻されてしまいました。


「…………もう少しの間は大丈夫だ」

「あっ、ん……」


 ユリシーズ様は、押さえた(わたくし)頭をそっと撫で、その手をスルリスルリと腰に移動させると、クッと力を入れて抱き寄せました。


「チッ…………今、そういう声は反則だ」


 ――――はいぃぃぃぃぃ⁉


 ただただ、あまりにも甘々な空気と行動にびっくりして、息が詰まったような声になっただけなのですが、何故かユリシーズ様に舌打ちされてしまいました。




……悪化しますたぁ(結膜炎)

昨日は調子良かったのになぁ。 

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