17:わたくし、召されてしまいますの……?
ユリシーズ様が到着したとの報告を受け、玄関ポーチに向かいました。
いつもと変わらない雰囲気だけど、なんとなく柔らかい空気を纏ったユリシーズ様にそっと近づき、彼の左腕に右手を添えると、ふわりと微笑まれました。
いつも凛としているお顔があまりにも甘くなるので、驚いて見つめていると、ユリシーズ様がまた厳しめの凛としたお顔に戻ってしまいました。
「あっ……」
「なんだ?」
「ぅ……いえ、なんでもございませんわ」
「? では、行くか?」
「はいっ!」
何でしょうか、何なんでしょうか、心臓がドキドキします。
今までのお出かけや、デートの時はワクワクばかりでしたが、今日はなんだか違います。
心臓がドキドキバクバクで上手に息が出来ません。
ユリシーズ様に微笑まれただけなのに。
「まぁ、素敵な庭園ですわね」
「……好きなのか?」
「え? はい」
ユリシーズ様に王国が管理している植物園に連れてきていただきました。
美しく管理された庭園には季節の花々が咲き乱れ、温室には国外や季節外の花々や草木が燦々とした陽光を浴びて元気に咲き誇っていました。
「…………昔、室外でデートは野蛮だから、大嫌いだと言ったろ?」
「い……言いましたかしら?」
どうしましょう。記憶にありません。
「草木をただ眺めることの何が楽しいのか、とも」
「ひょえっ…………ももももうしわけございませんっ」
「ん、いい」
ユリシーズ様がフフッと笑いながら、私の頬をそっと撫でてきました。何故にこのタイミングでそんなに素敵なお顔をされたのでしょうか⁉
意味が不明すぎて、ちょっとパニックになりそうです。
「頑なになっていたのは私もだったんだな。今まですまなかった」
「ほへぇぇぇい⁉」
「んはははっ」
何故か謝られました!
そして、今世紀一番か⁉というほどの笑い顔です。
え? 何なの? 私、召されますの?
「さぁ、もう少し見て回ったら、次の場所に移動しよう」
「はい」
クスクスと笑い続けるユリシーズ様に手を握られました。手を!
しかも、指が……指ぐわっ!
指を絡める『恋人繋ぎ』たるものをされてしまいました。
ユリシーズ様の長い指が私の指に絡んでいるのですがぁぁ!
……え? なにこれ?
心臓と内臓がが口から飛び出しそうです。
「それは流石に怖いな。手を離そうか?」
「駄目っ!」
「っ、はははは」
あまりのパニックで、考えていた事が全部口から出てしまっていました。
ユリシーズ様が手を離すとか言い出すものだから、慌てて全力で手を握り返しましたら、ユリシーズ様がお腹を抱えて、少年のように笑いだしてしまいました。
ユリシーズ様が、可愛すぎますっ!
段々と治ってきました(結膜炎)