15:わたくし、期待しましたのよ……?
◇◆◇◆◇
すすすすすすすすすすすすすすす好きにぃ、なってもらえていました!
「だが、婚約解消したいんだよな?」
「いいいいいええぇぇぇ! しませんっ!」
深紅の瞳を鋭く光らせて、真顔でそんなことを聞かれてしまったので、大慌てて叫びましたら、ユリシーズ様がフッと口の端を上げて笑われました。
少し、意地悪そうなお顔で。
「ん」
ユリシーズ様がゆったりと私の方へと近づいて来られました。
これはもしや――――⁉
………………頭を撫で撫でされました。
「ぶふっ!」
頭上から変な音が聞こえましたので、顔を上げて確認すると、ユリシーズ様が笑いを堪えたようなお顔をしていました。
「ユリシーズ様?」
「ん。イザベルは、そうやって素直に感情を出している方が可愛い」
「っ⁉」
頭を撫でていたユリシーズ様の手が、するりと頬へ滑り落ちました。
親指で私の下唇をツツとなぞり、そっと顔を近づけて来られます。
今度こそ、本当に⁉
「今日は何もしないと約束したからな。来週、デートしようか?」
耳元で、低い声で、艷やかに、そんなこと言われて腰が抜けてしまいました。
ユリシーズ様がサッと腰を抱えてくださり、ソファに座らせて頂きました。
再度、頭を軽く撫でてからユリシーズ様がサロンを出ていったのですが、心臓がバクバクと早鐘を打ち続けていて、お礼のひとつも言えぬままでした。
「はぁぁぁぁぁ⁉」
部屋に戻り、事の顛末をアリアに話していましたら、驚愕の顔で叫ばれてしまいました。
「え? ユリシーズ様ってチョロイン属性? でも魔性感もある……いやでも、根元は無口クールですし。キャラブレ? あ、ヒロインにはデレる系か……」
アリアがよくわからないことをボソボソと呟いているのですが、とりあえず無視して来週のデートのための準備や注文の話に切り替えようとしました。
「お嬢様、毎回毎回、新品のドレスで行く必要はないのですよ」
「え?」
「皆様は、ドレスに飽きた時は、飾りレースを替えたり、リボンの色を替えたりして、リメイクして何度も着用されています」
飽きた時?
「え? 何度も袖を通しているの?」
どうやら、お母様もそうしてあるようです。
知らなかったといいますか、気付かなかったといいますか。
言ってくだされれば良かったのに。と呟きましたら、アリアがどでかい溜め息を吐きながら「遠回しに何度も伝えましたけどね」と呟き返されました。
「えと、ごめんなさい?」
「はいはい。さぁ、デートで着るドレスを、決めましょう⁉ この大量の中から!」
クローゼットに入っていた、一度限りで袖を通さなくなったドレスたち。それらをアリアに指し示されました。
ちょっと引くくらいありますね。そして、小さい頃のも残されているのですか。
「幼い頃、お嬢様が『捨てたらダメ!』って言われたせいなんですけどね」
「…………えっと、なんか、ごめんなさい?」
「はいはい」
アリアに苦笑いされながら、デートで着るドレスを楽しく選びました。
今度はちゃんと皆の意見を聞きつつ、少しだけ手を加えてもらいましょう。
明日も、どうにかこうにか、更新……したい。