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12/24

12:わたくし、怒らせてしまいましたの……?




 異様なほど静寂に包まれた、重ーい空気を醸す馬車の時間をどうにかこうにかやり過ごし、これまたどうにかこうにか王城に到着しました。

 精神的にヘロヘロです。


 今までは、ユリシーズ様が馬車の中でどれだけ静かでも、無言を貫いていても、気にせずに話しかけ続けていました。

 ユリシーズ様が小さな声で『あぁ』と返事されたり、無言で頷いていたのが、私の話を聞いている……聞きたいと思っているからだ。とか思い込んでいました。

 勘違いも甚だしすぎて、恥ずかしいです。


 そして、それに気づいてしまった今は、間の繋ぎ方が全く分かりません。

 半泣きになりかけていますが、化粧が崩れるのだけは阻止せねばならないという余計な使命もあり、踏んだり蹴ったり感です。


「手を」

「あでぃがとうどんじましゅ」

「……どうした?」

「ひえ、おきになざらずっ」


 気にしないでほしいとお伝えした瞬間、ユリシーズ様の眉間に大峡谷が出来上ってしまいました。


「そうか。いくぞ」

「は、はいっ。あ……とと」


 グイッと腕を引かれて少しよろめいたものの、数歩で体勢を立て直してホッと息を吐きましたら、ユリシーズ様があわてて謝って来られました。


「すまない」


 眉間の大峡谷はそのままに、少ししょんぼり眉毛になられました。

 またまたユリシーズ様が可愛らしいです!

 クールで無口はどこにいったんですか⁉

 いえ、可愛らしいユリシーズ様も大好きですけど!




 久しぶりのダンス。

 手を握り、腰を支えてもらい、身体を寄せ合い…………。

 始まりから終わりまで、眉間に大峡谷(アンド)無言でした。

 馬車を降りたときは、なんだかイケそうな気がしましたのに。

 

「おい、何をしている」

「あ、つい」


 あまりの『ユリシーズ大峡谷』具合に、眉間を指でコシコシと擦ってしまっていました。

 眉間のシワは癖になると言いますし、赤色の瞳が細くつり上がって怖いですし…………ちょ、ちょっとかっこいいけれどもっ!

 眉間大峡谷は反対派なのです。


「寄ってるのか……」

「物凄く」

「はぁ…………クソッ」


 低く小さな声でユリシーズ様が呟かれた言葉は、貴族らしくないうえに、少し怖ささえ感じるものでした。


 ここ最近、希望を持ったり、心折れたり、何度も何度も繰り返し過ぎて、疲れました。


 二曲目のダンスが始まり、意を決してユリシーズ様に話しかけました。


「ユリシーズ様、もう婚約解消でいいです」

「――――は?」


 ユリシーズ様のお顔が『憤怒』になってしまいました。




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