11:わたくし、エスコートしてもらえませんの……?
王城夜会の為の準備を終わらせて、サロンでゆったりとしていましたら、アリアからユリシーズ様が迎えに来てくださったと言われました。
「え……何で⁉」
「何でと言われましても。来ているものは来ているので、さっさとポーチに向かってください」
「え、えぇ?」
アリアに怒られながら、おずおずというかノロノロと玄関ポーチに向かいました。
ユリシーズ様はいつもと変わならい落ち着いた雰囲気で佇んでいらっしゃいました。
「こん……ばんわ?」
「ああ。ん」
ユリシーズ様が右肘を出されたので、そうっとそうっと内肘に手を添えると、何故か驚愕されてしまいました。
「……今日は、妙に大人しいな」
いつもは腕に抱きつく勢いで来るので、熱でもあるのかと心配されてしまいました。
いつもそんなに激しく飛びついていたのでしょうか?
「飛びつく、か。フッ……ん、そうだな。飛びついてきていたな」
あらぁ? 目尻を下げて、なんだか可愛い感じで笑われましたわ!
そして、私飛びついていたんですねぇ。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「迎えに来ていただけたのが嬉しくて…………つい」
「……ん。そうか」
また『そうか』です。
でも、最初の頃のお手紙から感じていたような冷たさは、あまりないような気がしました。
馬車に揺られながらユリシーズ様にどう話しかけようかと悩んでいましたら、何の奇跡なのか彼から話しかけて来ました。
「さっき、迎えに驚いていたようだが?」
「あ…………」
なんと答えたらいいのでしょうか?
今までなら『別に、何でもないですわ! それよりも――――』とか言って、ユリシーズ様の話を逸らしたうえに、私自身が話したいことだけを永遠と連ねていたような気がします。
「私、ユリシーズ様に…………嫌われていたので。その…………もう来てもらえないんだと」
「まだ婚約者だから」
「っ! はいっ! ありがとう存じます」
嬉しくて嬉しくて。
ユリシーズ様はいつも誠実で。
あぁ、好きだなぁ。と思うと心がポカポカとしてきました。
「…………今も、そんな顔が出来るんだな」
ユリシーズ様がポソリと呟いたあと、頬杖をついて視線を窓の外に向け、無言になってしまいました。
何かやらかしてしまったのでしょうか?
その後は、何を話しかけても、気もそぞろな返事しかしてもらえませんでした。
次話は夕方19時に更新します。