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転校生に振り回されてますっ!  作者: らびっと!!
1/1

おんにゃのここわい(まんじゅうこわいのこわいじゃなくて!)

最後まで読んでいただけるとありがたいです!!

今日は2学期が始まる最初の日だ。

ただでさえ学校に行くこと自体が面倒だと言うのに、この日差しである。なんなんだ。せめて日差しくらい大人しくしておいてもらいたい。




 

なーんて朝は思ってました。けれどその後の出来事の方が、こんなものよりも鬱陶しく、面倒なことなのであった。

1日が終わる頃には学校や日差しなんかは些細なことのように感じるどころか、すっかり忘れてしまうほどに。(まあこんなふうに回想してる時点で覚えてるんだけどね。物の例えというか)



ことの始まりは朝のSHRだった。

__


久しぶりに来た教室はいつもよりも騒がしい。

もちろん夏休み明けだと言うこともあるのだが、それにしても騒がしかった。

もちろん原因は一つ。このクラスに転校生(女の子)が来るのだ。



それもイギリスから。


海外からの転校生。海外からの転校生というのは

多分クラスのほとんどがしたことがない経験だろう。

うわつきまくってしまうのも頷ける。


かく言う私も正直とてもうわついている。

なんなら、その転校生と懇ろな関係になれたりしたら期待が止まらない。



「おいお前ら席につけー」


担任の気怠げな声がSHRの開始を告げた。


いつもはみんなゆっくりと席に座るのだが、今日はみんなさっと席に座った。

転校生効果しゅげぇ。




みんなが席に座ったのを確認すると担任がドアの窓のほうへ合図をする。



ガラッ



「…!!」


転校生が入ってくると、教室の空気が一気に変わった。私を含めたクラスメートはみんな転校生の彼女から目が離せなくなるほどの、めちゃめちゃな美少女だったからだ。


「アリス・カーター…です。よろしくオネガイします。」

わ、天使さんがしゃべった。じゃなくて。

まだ日本語に慣れていないのだろうか。カタコトだ。


はっ、見惚れてた。思わず周りの様子を確認すると、

あれ!?みんな固まっちゃってる!

拍手だよ!拍手!転校生ちゃんもシーンとした雰囲気に戸惑ってるよ!?




この静寂を打ち破るには、えいっ。私が先陣切って拍手してやるよ!



パチパチパチパチ



一斉にみんなの視線がこっちにあつまり、それから、はっとしたようにみんなが拍手をした。

転校生ちゃんも心なしかほっとしているように見える。勇気絞って拍手して良かった。


「じゃあ自己紹介も済んだと言うことで。カーターは、吉祥院の隣の席に座れ。

じゃあSHR始めるぞー」




えっ!?!?!私の隣!?!?!




なーんて驚きはしませんよ。

朝来た時に、私の隣に新しい席があったとき察した。



みんな私のことを羨ましそうに見て…いや、睨まれてないか…?これ。


あ、というかお前の名前って吉祥院だったのって?

ええ、そうです。私の名前は吉祥院久実です。

吉祥院なんて大層な名前をしてるけど

うちの家は別にお金持ちとかではなくて、普通の家だよ。


そんなことを思っている間に転校生ちゃんは席に座ったようだった。

うっ。神々しい。後光でも差してるんじゃないのか。



「…おい…!」


ん?


「おい、吉祥院!聞いてるか!?」

ひっ。考え始めると止まらなくなる悪い癖が出てしまっていたらしい。


「あっ、と。すみません。聞いてませんでした。」

…くそう。周りから失笑の雰囲気を感じる。


はあ、と担任がため息をつき


「吉祥院。お前が責任を持ってカーターの世話をしてやってくれ。」


「はぃ?わかりましたっ」


「まあそんなわけでSHRはおわり。1限移動教室だから遅れんなよー」


と言って担任は去っていってしまった。






「…」


おいいいいいいいいいい!!!なんか軽すぎやしないか!?

もうちょっと、その、ねえ、あってもいいじゃない?


てかまてまて事前に何も言われてないぞ?

事前にアポ取るのが常識だろうが。


でも頼まれたものは仕方がない。人間やらねばならぬこともあるのだ。


「あっ、あの…」


と勇気を出して転校生ちゃんに話しかけるが、

彼女はすでにクラスメートに囲まれて質問攻めにあっていた。


まあそうだよね。仕方がないか。うん。私ったらまたいつもの癖で…(略)

まさかどうやって話しかければいいかわからないから、

クラスメートが転校生ちゃんを質問攻めにするのを待っていた。なんてそんなわけではない。断じて。



__

放課後。


結局、SHRの後転校生ちゃんは1日中色んな人から話しかけられまくっていた。

うう、なんというか私よりもクラスメートと仲良くなっている気がする。




「あの、吉祥院さん。」


ふと、後ろから私のことを呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、そこにはこちらをじっと見つめている転校生ちゃんがいた。


やっば。髪の毛が夕日に透けて本当に神秘的だ。

女の私ですらちょっとドキッとしてしまう。いや、嘘です。めちゃくちゃドキドキしてます。


「ちょっと話があるんだけど、今からどこか行かないかな?」


「は、はひっ、よろこんで」


美少女から誘われてしまった。ふへへ。男子どもめ、せいぜい悔しがるがいい。


「えっと、近場にあんまり人のこないカフェとかってあるかな?」


近場であんまり人の来ないカフェか。

心当たりはあるんだけど、なんというか自分だけの秘密の場所にしておきたい感が…

でも自分と転校生ちゃん(美少女)だけが知ってるってのもいいな。


「あっ、えっと知ってるよ…!アネモネっていう喫茶店なんだけど…」


「そっか!!じゃあそこまで案内してくれない?」


「う、うん。いいよ!」


急いで机の物を片付けて、カフェアネモネに向かう。




テクテクテク テクテクテク


「…」




テクテクテク テクテクテク


「…」





やばい。普段全然人とコミュニケーションをとっていないせいで話題が思いつかない…まあ、アネモネまで5分もかからないし…無言でも…まあいいか…。





若干気まずい雰囲気のまま私たちはアネモネについた。


アネモネはカフェ、というよりかは純喫茶といった方が正しい。店内の雰囲気といい、メニューといいレトロでとても雰囲気のある感じである。

しかし、いかにもインスタ映えしそうなアネモネは、ビルの地下にあってあまり目立たない。

そのおかげで、アネモネは私以外の同校の人を見かけることは滅多にないのだ。


カチャ


アネモネのドアを開けると店員さんの明るい「いらっしゃいませー!」

という声で出迎えられ、窓際の席に案内された。


席に座った私たちはメニューをとり、私はカフェラテ

転校生ちゃんはブラックコーヒーを頼み、

それぞれ飲み終わったところで転校生ちゃんが話を切り出した。



「えっと…今日は来てもらってごめんね?

その、吉祥院さんにお願いしたいことがあって…」


「い、いいよいいよ!!それでどうしたの?」


「あの、その、私、英語とか喋れなくて…」




…は…?




「えっと、イギリスから来たのに?」


混乱する頭で必死に質問を紡ぐ。わ


すると転校生ちゃんは若干下を見ながら、


「いや、イギリスにいたのは事実なんだけど、

 一年しかいなかったというか…パパの出張の都合で…」


とのたまわった。


「えっ、えっと、イギリスに行く前はどこにいたの?」


「愛知県に住んでた…」


なるほど。日本生まれで(ほぼ)日本育ちとな。

だから吉祥院なんていう苗字もさらっと読めてたのか。

ほら、いうじゃん。外国人からすると「っ」っていうのは発音が難しいって。

というか放課後話しかけられた時、やけにペラペラ喋るなあとは思っていたけれども。それなら合点がいく。




「状況はなんとなく把握できたんだけど、

英語が喋れないのがどうしてそんなに問題なの?」


「ほら、私、自己紹介の時カタコトだったでしょ?

ほんとはあれ、緊張してただけなんだけど、

みんな私が英語が母国語だと思っちゃって…

私、雰囲気に呑まれて英語なんて喋れないって言えなくて…」


わかる。一回そういう雰囲気になると訂正するの難しいよね。


「それで、その、吉祥院さんには私が英語喋れないのを、友達としてうまく立ち回って隠して欲しいんだ」



ま、まさかこんなお誘いだったとは。

きっかけはどうであれ、高校に入って最初の友達がこんなパツキン美少女なんてなんて贅沢なんだ自分。





思いもよらない提案にこのときの私は浮かれ切っていた。

だからこそ。聞かなくてもいい余計なことまで聞いてしまったのだ。





一通り転校生ちゃん、いや、アリスの話を聞いた後に、

私は


「あの、今更なんだけど、どうしてわたしなのかな?」

と、尋ねた。


「吉祥院さんって落ち着いていて、口が硬そうだと思ったからかな…」




「それって私が陰キャっぽいからってこと!?

いやまあ確かに私って陰キャなのは事実だけどさ、

なんかこう、遠回しにでも自分って陰キャっぽいって言われるのはちょっと悲しいかもっ!!(早口)」


あっ。調子に乗ってベラベラと言わなくていいことを言ってしまった。

アリス目まんまるにして驚いてるじゃん。ど、どうしよ。


「あ、えっと、その、さっきのは」


忘れて、と言うつもりだったのだが

その言葉はアリスの笑い声によって遮られた。


「アッハハハ!!」


「え、えと…?」


少し前のアリスの様子とは違う雰囲気を感じ取り

おずおずと尋ねた。


アリスは一通り笑い終えた後で、


「ふふ、あんた、まあまあ言うわね。まあ、そうよ。

陰キャで友達いなさそうだから、私の秘密を知ったって誰にもバラさないだろうって思ったからよ」


はうっ、何この子!!全然天使じゃない!!

おんにゃのここわい…。


「てゆーことで、よろしくね。久実。」


そう言ってアリスは微笑む。まるで天使のような笑みだ。

しかし、今の私にはそれがとても恐ろしい笑みのように感じられたのであった。

そういえば私の学年に東南アジアから転校生が来るらしいです。楽しみだなあ。

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