85:旅の終わり
「これは…、まさか……?」
「はい。白金のベビーリングと、パールのペンダントトップです」
パールはいるかを助けた時に
女性人魚さんから貰った物だ。
ベビーリングに使った白金は、母竜からもらった諸々の中にあった。
こんな時でもなければ手放せるチャンスはないだろう。なので、錬金術で加工をしたものをご出産祝いに差し上げただけなんだけどね。
王太子ご夫妻の時も固まっていらしたが、キナル王子ご夫妻も見事に固まってしまわれた。
パールはそもそも海に取りに行けないので、とても希少らしい。
白金は原鉱石が1トンあって、3グラム程度が取れるかなっていう貴金属。それに加え、加工する時の温度が金や銀の比ではないのも、加工が難しいのも大きな理由でとても高価なんだ。
「方伯とツヨシ卿には、私どもからお礼を差し上げたいくらいの知識を頂きましたのに…。こんな素晴らしいお祝いまで頂くだなんて…」
「それとこれは別です。
お受け取り下さいませ」
キナル王子とエリザベーテ妃殿下はお互いの顔を見合せ、どうしたものかと困っておられる。
パールや白金って、王族の方が貰っても戸惑う物なのか…。
「キナル、気にせず貰ってくれ。俺や優のいた国では、庶民でも買えたんだ。こっちと感覚が違うんだよ」
王太子ご夫妻より動揺の激しいキナル王子ご夫妻に、お父さんが補足してくれた。そしてやっと受け取って下さったよ。
こうして王太子ご夫妻と、キナル王子ご夫妻にご出産祝いと別れの挨拶を済ませ、最後に両陛下にご挨拶して王城を後にした。
ちらっと見せて下さった、生後七日になった王子も王女も可愛かったよー。
◇
「お父さん、ユリシーズさんと買い物行ってくるねー」
「どこへ行くんだ?」
「足りない食材買うのと、ベアンさんにお借りしたハンカチ返しに行くよ」
「そうか。
寒いからな、温かくして行けよ。いってらっしゃい」
お城では忙しかったので、王都にあるお父さんの支店で三日ほどゆっくりして体を休めてから旧王都へ向かう予定だ。
「クー、ルー。バレてると思うけど、犬のふりしててね」
〘ウォン!〙
〘オン!〙
意識が戻ってから安静にしている間に見た、あの戦いの映像。将軍さまバージョンや隊長さんバージョン、冒険者さんバージョンなどがあって、冒険者さんバージョンは各ギルドで見れるようになっているんだって。
次々出て来る魔物に対処するため、早めにブレスを吐きながら迷宮に近づく竜さんたち。
だが、先に周りをある程度焼き払っていたので延焼がなくて済んだ事。クレーターにつけた堀が有用だった事など、色々見れたし確認出来た。
最後の敵が、巨大へびだったのは知らなくても良かったな。頭に当たったのが、それの尻尾だったのも知らない方が良かったよ。見た時、気絶するかと思ったわ。
ふらふらだったから、映像見るまで知らなかったのは精神衛生上良かったかもしれない。
「わ?!」
「何回も声かけてたのに…。もしかして、まだ意識なくした影響でどこか具合悪い?」
ユリシーズさんには何回も謝られた。
頭の怪我にはどれだけ早くポーションをかけて、続けてハイポーションをかけるかが重要なのに、ハイポーションを切らしてかけられなくてごめん。こんなに長く意識が戻らなかったのは自分のせいだって…。
そんなのユリシーズさんのせいじゃないし!と、こんこんと説明したさ。
「ごめんね。考え事してただけだよ」
壁に激突するのを防ぐため、後ろから抱きとめられている。
今までに何度、ユリシーズさんに抱きとめられ助けられただろう。
この腕の中はとても安心する。
ずっと一緒にいたい。
あれ?こんな事をいつか、どこかで…。
「なあ、師匠」
「うん、何?」
抱きとめられたまま、大人しくユリシーズさんの話を聞く。
「…俺と付き合って、下さい」
驚いて振り返ろうとするが、赤くなっているだろう顔を見られたくないのか、振り返れないくらいぎゅっと抱き締められてて振り返れない。
「うん。うん!嬉しい!こちらこそ、宜しくお願いします」
旧王都に帰って、落ち着いてから告白しようと思っていた。この国には告白の文化がないから。
なのに、ユリシーズさんから告白してくれた!え、本当に?!
大混乱だが、とても嬉しい!
こうして、キャンピングカーでの旅はもうすぐ終わりを迎える。大好きになった旧王都へ帰る。
一番大切で、大好きな人がユリシーズさんだと自覚して…。
大切で、守りたくて、一緒にいたい宝物を手にして旅は終わるのだったー…。
終
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