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82:楽に過ごすアイテム

「イヌオビはマタニティコルセットのように苦しくなくて、とても楽に過ごせるわ」


(くつ)が変わるとこんなに足が楽なのね…。体まで楽だわ」


「レッグウォーマー?これもとても温かくて心地良くて大好きになるわね」


「ベビーアルパカの羽織(はおり)も、とても軽くて(うす)いのに何て温かなの…」


 もちろんお父さんがしたのではない。犬帯(いぬおび)はお父さんからレクチャーを受けた産婆(さんば)さんが()いたよ!


 コルクを使ったペタンコ(くつ)下々(しもじも)服飾(ふくしょく)(ひん)嫌厭(けんえん)されていたレッグウォーマー、シュシェーナ王国より(はる)か北の国の特産(とくさん)(ひん)のアルパカの織物(おりもの)。アルパカの中でもチクチク感が少ない、ベビーアルパカの毛で作ったAラインのロングカーディガンをお(めし)になったのだ。


 お父さんの作った温かい加工(かこう)は服の生地(きじ)にも使えるが、これはおかしな(まじな)いではないかと王族の(みな)さまが使う許可(きょか)が出ていないとは…っ。


 それを知ってアルパカとかアンゴラ、カシミヤがないかと大慌(おおあわ)てで手配(てはい)した。普通(ふつう)はずっしり重い、ミンクなんかの毛皮(けがわ)羽織(はおり)を使っていらっしゃるそうだ…。


 さすが中世くらいの寒い国の王族とでも言うべきか…?


 おすすめしたデザインのマタニティウェアはナイトドレスみたいという事で、ゆったりしたハイウェストの数が(そろ)えられるシンプルなドレスをマタニティウェアにする事で落ち着いた。


 先日の話し合いの時、まず妊娠(にんぷ)である()殿下(でんか)(がた)がそれで人前に出るのは()ずかしいって拒否(きょひ)なさったのだ。(りょう)陛下(へいか)旦那(だんな)さん(がた)も、それは駄目(だめ)だと反対なさった。


 コルセットを着けないのは(はだか)同然(どうぜん)って価値(かち)(かん)の時代だ。コルセットなしで、ナイトドレス(まが)いのドレスで出歩くのは王族としての品位(ひんい)(いちじる)しく下がるからって。


 そんな時代に、妊娠(にんしん)(ちゅう)だけはコルセットしなくて良いとなっただけでも大きな成果(せいか)だと思う。


 冷えや()衛生(えいせい)大敵(たいてき)だから、今住まわれているお父さんが手掛(てが)けた家で出産(しゅっさん)まで過ごすのは(ゆず)らなかったけど。


 ただこれはもしいつか、獣人(じゅうじん)(ぞく)(かた)がお輿入(こしい)れになった時は配慮(はいりょ)するとなったよ。

 (たと)えば出産(しゅっさん)の間は薄暗(うすぐら)(ほう)が落ち着くようなら、その時は薄暗(うすぐら)くするとかね。落ち着ける場所で(のぞ)むっていうのも大事な事だ。


 子供の取替(とりか)えがないかの見張(みは)りも()ねている立会(たちあ)いは、絶対(ぜったい)するって事だった。ではせめて、(ゆか)から天井(てんじょう)までガラス()りの仕切(しき)りで仕切(しき)った場所でしてほしいってお願いは受け入れて頂いた。


 そんな()け引きも()貴族(きぞく)(いん)承認(しょうにん)が取れ、高等(こうとう)司法(しほう)(いん)から許可(きょか)されてあれこれ改善(かいぜん)(ちゅう)だ。


「オオシロ方伯(ほうはく)のおかげで、心配が()って嬉しいわ」


「お食事も匂いが(つら)かったのだけど、以前(いぜん)より食べやすくて(うれ)しいの」


「それは何よりです」


 貴族(きぞく)(いん)議題(ぎだい)にかかる前から先行(せんこう)して様々(さまざま)(しな)発注(はっちゅう)していた。それが使える事になったから、日々(いろ)んな物が(とど)く。


 物によっては取り()えずだった物が、王族の(かた)相応(ふさわ)しい装飾(そうしょく)のバージョンが出来上がって(とど)いている。その度に楽だと喜んで(いただ)けるのは、とっても(うれ)しいや。


「シンプルなデザインとはいえ、たくさんドレスが増えるのも(うれ)しいわ」


 ははは。平民服なら毎日洗濯(せんたく)可能(かのう)だ。


 だけどだ。シルクのゴテゴテしたドレスなんて洗える訳がない。ドレスはブラシで(ほこり)(はら)ってしまい、洗われる事なくまた着るのだ。


 なので普通(ふつう)のドレスが一着作れるお金で、二着とか三着作って数を(そろ)える。そして極力(きょくりょく)清潔(せいけつ)な服を身に着けるには、そう対応(たいおう)するしかなかったんだよ。


 予算としてもだし、まだまだ(きん)(こわ)さの認知(にんち)が低い。数を(そろ)える要望(ようぼう)を通すには、かなりの()け引きを(よう)した一つだ。


「私たちのために(うご)いて下さっているのに…。

 受け入れられない事があって、余計(よけい)なご苦労(くろう)をかけてごめんなさいね…」


「お気にならないで。私は逆にコルセットは(いや)って言ってますからね」


「ほほ。そうでしたわね。

 それもあって、普段(ふだん)男装(だんそう)ですものね」


「オオシロ方伯(ほうはく)が本当に男性なら(よろ)しかったのにと、ひどく残念(ざんねん)がっているご令嬢(れいじょう)がとても多いんですのよ。

 ご存知(ぞんじ)でして?」


「うえっ?!」


 残念(ざんねん)って何だ?!


「おお、楽しそうだな。いや、(すわ)ったままで良い」


「お気遣(きづか)い、ありがとうございます」


随分(ずいぶん)早く来て、(おどろ)いたであろう?

 こたつのおかげで手が(ちぢ)こまらぬでな。仕事が(はかど)る」


「はい、(おどろ)きましたわ」


「ヒーターも(よろ)しかったですが、こたつは広い部屋でも体を温められますものね」


「うむ。風呂(ふろ)の時はしくじったが、こたつは(たの)んで正解(せいかい)だったな」


「そうですね。

 貴族たちの中にも去年見て、今年すでに取り入れている者たちがいてかなり仕事がスムーズですからね」


難点(なんてん)は、入ると出たくなくなる事かな」


「ツヨシ(きょう)の建てた家のように、城内(じょうない)は温かくありませんからね」


本音(ほんね)を言えば、ここで仕事をしたいものだがな」


 今年の冬は、去年までの2、3年続く雪の少ない年が終わり、10年から15年雪深い年が続くらしい一年目。


 こたつは雪深くなる年の皆さまのお役に立てているようだ。

お読み下さって有難うございます。

お楽しみ頂けましたら幸いです。


面白かった、良かったなどお気楽に、下の

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