8:朝まずめ
今日は早起きして、みんなで磯へ来ている。まだ日の出前なので、ヘッドライトを付けている。
それぞれに、仕掛を済ませた竿を渡していく。餌は手作りの練り餌だ。
「キャスティングして、糸を巻いて、餌がなくなったり取れそうなら取り替える。
これを繰り返すだけだよ」
オーバーヘッドで軽く竿を振り、実演して見せる。
「初めはなかなか飛ばないかも知れません。その時は別の方法もあるので、とりあえずやってみましょう」
以前、おじいちゃんとおばあちゃんと家族でキャンプした後。釣り熱の高まったお父さんと、竿やリールやとあれこれ作ったんだ。
今日使っているのは、その時出来たギルドの登録品。何が釣れるかな。
◇
「優さぁーん、また根掛りかもー」
「こっちもー」
キャスティングはできるのだが、笑えないくらい根掛り連発してマス。何でだ。
外せなくてすでに何本かライン切ったから、釣り針も少なくなってきたぞ。
釣り針が減るからではなく、釣り針は全部回収したいのだが厳しいな。
「うーん、釣る時間なくなっちゃうから、潮だまりで手釣りにしましょうか」
潮だまりと侮るなかれ。意外な大物がいたりもする。
「お!引っ張ってるよ!」
手釣りはできるみたいだから、アカザさん達には手釣りで楽しんでもらおう。
竿使う釣りより簡単だから、アカザさん達も楽しそう。
「ルアーに代えて、大物狙うか」
◇
朝まずめの釣果はカワハギ、はまち、太刀魚、アオリイカがたくさん釣れた。
釣り上げた中でも食べ頃のサイズ優先で、食べ切れる分だけを残したんだ。それでも十三匹と、まずまず!
小さくて釣り針から外して、そのままリリースしたのも多い。
アカザさんが潮だまりで、うつぼを一匹釣ったのもいる。昨日食べて美味しかったらしく、喜んでいたよ。
他に亀の手とか蟹とか、色々潮だまりから取れていた。
◇
「えーっ、優さまヒドいやヒドいや!!
どうして起こしてくれなかったのさ!楽しみにしてたのに!」
「起こしたけど、起きなかったからそのまま寝かせておいたんだよ」
「起きるまで起こしてよ!」
カールくんはすっかりしょげてしまった。
「楽しみでなかなか寝付けなかったみたいだからな。起きれなかったのはそのせいだろ」
そんなに楽しみにしていたのか。
「まだこの町にいるから、次は必ず起こすよ。昼に舟釣りでも良いし、夕まずめでも良いしさ」
もともと孤児で甘えられる人がいなかったからか、最近甘えん坊なカールくん。
私の背中でぴーぴー泣いている。
「ごめんって。次は一緒に釣りしよ。ね?」
しばらく背中でそのまま泣いていたが、やっと離れてくれた。「次は絶対だよ」と繰り返しながら、朝ご飯のバーベキューを食べる。
食べ終わるとまたくっついてくる。旅の疲れや睡眠不足、止めに泣いて体力使ったからか、また眠ってしまった。
◇
「仕様がないヤツだな」
「起きるまでこのままで良いよ」
カールくんをキャンピングカーまで運ぼうとしてくれたユリシーズさんを止める。
「もう少し大きくなったら、甘えたくても甘えられない年頃になるでしょ?今のうちに甘えさせるよ」
ユリシーズさんは一瞬目を丸くして驚いていたが、「そうか」と言うとバスタオルを取ってきてくれた。
男性でこれができる人は少ないと聞いたが、ユリシーズさんはそれができるタイプらしい。
バスタオルをカールくんにかけると、ぽんぽんと背中を軽く叩いてあやしてあげるのが印象的だった。
こうしてこの日の朝まずめは穏やかな朝寝の時間に移り変わり、ゆったり終わった。
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