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78/85

78:勝利を手に

 戦いの火蓋(ひぶた)は、青い竜さんのマックスの猛吹雪(ブリザード)の息(ブレス)によって切られた。


 聞いていた通り、竜さんの後方(こうほう)にはほとんど影響(えいきょう)がなくて安心する。


 下降(かこう)上昇(じょうしょう)も、あまり羽撃(はばた)かないでとお願いした。なので、羽撃(はばた)きの影響(えいきょう)もあまりない。


 青い竜さんが、迷宮(めいきゅう)の入口から(はな)れる。


 次の竜さんが入口に着くまでの(わず)かな間。奥からブレスに()えて生き()びるか、攻撃(こうげき)が届かなかったのだろう魔物が飛び出して、クレーターに落下して行く。


 落ちた衝撃(しょうげき)や、次々上から落ちてくる魔物の下敷(したじ)きになってさらにその数を()らす。



 〘さすがに(かべ)に着くまでに、全部(ほふ)るのは無理かな〙


 そう言ってシルバーが、クレーターの(そこ)()りて行く。


 途中(とちゅう)でジャンプすると、()(おど)るかのように魔物を()ってゆくのが圧巻(あっかん)だ。


 バチバチッ。


 ごおっ。


 びききっ。


 シルバーの攻撃に()わなかった魔物。それ等はクレーターの(ふち)沿()って()めておいた、青空(あおぞら)天井(てんじょう)威力(いりょく)(かみなり)(ほのお)(こおり)(わな)にかかってさらに数を()らす。


 (かべ)辿(たど)り着けたのは、20匹もいないだろう。


 そして魔物たちは(かべ)沿()いに走り、(ほり)へ入り始めた。


「この数なら行ける!(みな)、一匹ずつ確実(かくじつ)仕留(しと)めよ!」


「おお!」


 クレーターの深さに円環状()の山脈()の高さを合わせた高所(こうしょ)から、一斉(いっせい)に攻撃が開始(かいし)された。


 上空ではすでに竜さんたちが、飛翔(ひしょう)する魔物を物理(ぶつり)(たお)している。


 ◇


「10(ジー)…っ」


 鈍重(どんじゅう)な魔物なら、そのまま攻撃しても攻撃は当たる。


 だが、俊敏(しゅんびん)な魔物はそうは行かない。


 そこで重力(じゅうりょく)操作(そうさ)ができないかと、ぶっつけ本番(ほんばん)でやってみたが…。


 できたのは良いが、魔力がごっそり()る。


 初めこそこんな事をしなくても(たお)せていたが、時間が()つほど出てくる魔物が強くなって対策(たいさく)必要(ひつよう)になったんだ。


 今日、もう何本目か分からないマジックハイポーションを飲んで魔力切れを回避(かいひ)する。


 みんなの攻撃で(たお)せたが、もう新手(あらて)が…。あれを一撃(いちげき)(たお)すには…。


「はあっ、はあっ。絶対(アブソリュート)零度(・ゼロ)


 魔物が(こお)ると、すかさずユリシーズさんがシルバー(スターリング)925(シルバー)(つぶ)(かく)に使って大きさと威力(いりょく)嵩上(かさあ)げした土の(やり)粉砕(ふんさい)してくれる。


 他の(ほり)にこの魔物が行くと、かなり手間(てま)()っているようだ。


 コンボとは言え、さっさと(たお)せるのは驚異(きょうい)(てき)ではある。


 いつの間にか増えた冒険者さんたちも、増援(ぞうえん)正規(せいき)(ぐん)(かた)たちももうフラフラだ。


 お父さんやアカザさんなど、何人かは倒れて後方へ運ばれているし。


 〘(ユウ)…、あぶな…〙


 〘…カマイタチ…っ〙


 クーとルーは、クレーターをある程度(ていど)(のぼ)っても落ちない魔物を全部落として守り続けてくれている。


 とっくに日は登った。今、何時になっているんだろう?いつまで続くんだろう?


[む。一番強い気配。あれが最後か?]


 目は(かす)むし、竜さんの声もぼんやりとしか理解(りかい)できないな…。


「し…しょぅ…っ」


 あれ?空が見える。


 ああ、今日も空は青くて綺麗(きれい)だなー…。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


 んあ?ここ、どこだろう?


 何かしてて、とても疲れてた気がするんだけど。勘違(かんちが)いだったのかな?


 何もないし、(だれ)も何もいないな。


 あ、でも温かくて気持ち良いや。


 うあ?!急にひんやりした!!びっくりしたなあ。えー、でもやっぱり(だれ)もいないし、何もないじゃん。何なんだ?


 ふあぁあ…。何か(みょう)に疲れてて(ねむ)いな。ちょっと寝よっかな。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


 うんーっ。気持よく寝てるのに。(だれ)?起こそうとしてるの。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


『………』


 もーっ。また誰か起こそうとしてるーっ。起こさないでよ。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


『………、………?』


 うぬー?(だれ)


 待てよ?知ってる声、かも?


 でも眠い。まだ寝かせてて。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


『………、…。……』


 いつもの声、だ。


 何かされてる?()でられてるのかな?


 へへ。気持ち良いな。


 ◇


 ◇ ◇



 ◇◇ ◇




 ◇◇◇ ◇


師匠(ししょう)。そろそろ目を覚まして?


 頼むから…、死なないでくれ』


 この声。この呼び方。


 ユリシーズさん、だ。


 私ね、お父さんが。お母さんが。サーラちゃんが。


 他にも大切な人がたくたんできたこの国を守りたかったんだ。


 ああ、そっか。大切な人はたくさんいるけど、ユリシーズさんがいるから守りたかったんだ。


 ユリシーズさんがいつも通り暮らせる、何気(なにげ)ない日々(ひび)を。


 (こわ)いって思ってたのに、いつの間にかー…。


 ◇◇◇ ◇




 ◇◇ ◇



 ◇ ◇


 ◇


「…ふ……ぅ…」


師匠(ししょう)…?」


 焦点(しょうてん)がなかなか合わず、しばらくぼーっとしてしまった。


 そうしている内にユリシーズさんに手を取られ、ぎゅっと(にぎ)られる。


「くらくら、する…」


「うん、うん。火の竜と最後の魔物の戦いが始まってすぐ、()んできた物が頭に当たって三ヶ月も意識(いしき)がなかったから…。

 体力も筋力(きんりょく)もないんだと思う」


「三ヶ月…。三ヶ月…?」


 声が(ひど)(かす)れてしゃべりにくいな。


「大丈夫。師匠(ししょう)のおかげだ。

 三ヶ月前のあの日。集団(スタン)暴走(ピード)はクレーターで(ふせ)ぎきれたよ」


「良かった…」


「うん。

 オオシロさんたちを呼びに行くけど、先に何か飲む?腹()ってない?」


「いるかの時に飲んだカシス。冷たいの」


「分かった。待ってて」


 ユリシーズさんは(にぎ)っていた手をそっとベッドへ下ろすと、カシスを入れに行ってくれた。


 一人になり、じわじわ喜びが胸に()き上がるのを感じる。


「最後、見れなかったのはザンネン。

 見れなかったけど、(ふせ)げたんだ」


 実感(じっかん)はない。だけど、今はそれで良いや。

お読み下さって有難うございます。

お楽しみ頂けましたら幸いです。


面白かった、良かったなどお気楽に、下の

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