表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/85

62:3人娘

(ユウ)さん!落ちないようにしてやれなくて、本当にすまなかった!」


「あれで助けられるのは()可能(かのう)だと思う。私も後ろが(がけ)だと分かってたのに、条件(じょうけん)反射(はんしゃ)で後ろへ飛んで逃げたのが悪かったんです」


 アカザさん達とは翌日、(ふもと)で落ち合った。


 山でルートを見失(みうしな)ったら、本来(ほんらい)下らない。上でアカザさん達と合流(ごうりゅう)するのが正しい。


 流れの急な川とか、()えられない障害(しょうがい)遭遇(そうぐう)してもと来た道を戻ろうとする。斜面(しゃめん)(がけ)は、下れても上に戻れないのも普通だ。だから闇雲(やみくも)に下らず、高いところからルートを探したりするために必ず登るのが正しい。


 他にも理由はあるが、本が一冊書けるので(くわ)しく語るのは止めておく。


 私達の場合はクーがアカザさん達の所まで登り、(ふもと)までの案内を。

 私の身体(しんたい)能力(のうりょく)熟知(じゅくち)したルーが、私の通れるルートを選んで(ふもと)まで安全なルートを教えてくれるので登らなかった。


 私基準(きじゅん)なのはユリシーズさんの身体(しんたい)能力(のうりょく)に合わせると、私には無理(むり)なルートもあるからだ。


 そしてアカザさん達がユリシーズさんと一緒に来なかったのは、パニックになっていて一緒に私の所まで行くのは危険(きけん)とユリシーズさんが判断(はんだん)したためだ。


 一般人(いっぱんじん)でまだ子供のカールくんとマーズくんもいたので、二人を連れて(がけ)を下るわけにもいかない。


 そんな経緯(けいい)はあったが無事(ぶじ)再会(さいかい)し、旅を続けた。


 ◇


「そう言えば、エビフライはまだしてなかったな」


 私達は海から(はな)れる最後の町に着いていた。そこで海老(えび)を見て、まだエビフライを作っていなかったと思い(いた)る。


 ここから(きゅう)王都(おうと)まで、何もなければ休みを(のぞ)いて8日。日本でなら海老(えび)をおがくずに乗せて、18度で温度管理しながら運べば、確か7日から10日は生きたまま運べたはず。可能(かのう)なら、生きたまま運んでお土産(みやげ)にしたい。


海老(えび)はそのまま袋に入れて、3日は()ね回ってるよ。安いし、食料の一部に持ち歩く事もある代物(しろもの)だよ」


「それは…、生命(せいめい)(りょく)が強いですね」


 海老(えび)の強い生命(せいめい)(りょく)()けよう!究極(きゅうきょく)は、(こお)らせちゃえば生は無理(むり)でも運べるんだし。


 温度も何とかなる。華氏(かし)度の温度計があるのだ。摂氏(せっし)計でなかったので少々()れないが、温度計があるのには違いない。


 トロ箱とおかくずを探して用意すると、海老(えび)を買う。


海老(えび)を下さい。数は200尾お願いします」


 小さな(みなと)大童(おおわらわ)だ。


 海老(えび)をしっかり海水につけ、トロ箱に半分ほどおかくずを入れた上に海老(えび)を並べる。そして上からおかくずをかける。


 ちなみにこの手間(てま)の分の料金もお支払いするよ。普通はしない手間(てま)なのだから、当然(とうぜん)の料金だ。


 私も手伝いながら気付いたのだが…。(くるま)海老(えび)みたいなのと、大正(たいしょう)海老(えび)みたいな種類(しゅるい)がごちゃまぜになっているのが何ともはや…。


 こちらでは伊勢(いせ)海老(えび)とロブスター、それ以外としか分けないらしい…。う、ううーん。細かくわけようよー。


 ◇


「頂いていいんですか?!」


手間(てま)(ちん)の他に、食事分くらいの金子(きんす)までくれたんだ!これくらいさせてもらわにゃ、海の男が(すた)るってもんだ!」


「とても立派(りっぱ)伊勢(いせ)海老(えび)が20尾ですよ?!」


 1キロどころか、下手(へた)したら2キロ()えてそうなんだけど?!


 用意がなく、大人数に食事を振る舞うのに時間がかかる。料理を振る舞う代わりに、食事代は上乗せしただけだよ?!


「日本では高級(こうきゅう)らしいが、ここでは庶民(しょみん)の味だからな。遠慮(えんりょ)なく!」


 ……、これは。バレてる感じ?


「ありがとうございます。それじゃ有難(ありがた)く頂きますね」


 海老(えび)がどれも20センチを()える大きな物で、多めに用意したトロ箱を全部使った。


 そのため、どうキャンピングカーに入れるかとあれこれしつつ(みなと)(とど)まっていると、みなさんが伊勢(いせ)海老(えび)を持って来て下さったのだ。


 あれこれしてみて、キャンピングカーの下の収納(しゅうのう)()に納まった。ただ袋に入れて3日生きてるなら、冷暗(れいあん)(しょ)のここならもう少し大丈夫。…だと思いたい。


 みなさんにお礼を言うと、北の方へ向ってキャンピングカーを走らせる。今日は移動日なので、少しでも進んでおきたい。


 一日二食の人達が食事を()る時間帯になった頃。少し先で、様子(ようす)のおかしい女の子の三人組が見える。


「どうしたんでしょう?ひどく嘔吐(おうと)してるように見えますけど…」


「助けがいるかも知れないね。行ってみようかね」


 近付くほど、緊急(きんきゅう)事態(じたい)と分かる。一刻(いっこく)猶予(ゆうよ)もないだろう。


「これは…!みんなにキュアポーションを飲ませるんだ!急ぐんだよ!」


 3人とも、食事の途中(とちゅう)でその状態(じょうたい)(おちい)ったらしい。

 お皿や料理、鍋がひっくり返り、(のど)や胸を押さえてもがき苦しんでいる。


「飲んで!キュアポーションだよ!」


 二人がかりで一人の女の子にキュアポーションを飲ませる。転がっている肉から(いや)気配(けはい)がするが、それが原因(げんいん)なのだろうか?


 しばらくすると女の子達は落ち着き、体力の消耗(しょうもう)のためか眠り始めた。


「新人冒険者のようだね。食費(しょくひ)()かせるのに、自分たちで採取(さいしゅ)したか()ったかした毒のある物を(あやま)って口にしたのかね…」


「お肉から(いや)な感じがします。たぶんそれだと思います」


「これは、鳥肉のようだね…。この辺りで毒のある鳥…。ウズラモドキかね。

 やれやれ、これは毒のないうずらと見分けが難しいから、素人(しろうと)が手を出すモンじゃないんだ。それに手を出すって事は、他所(よそ)から来た子達かね?」


 そこはヨーロッパに()なくても…。ヨーロッパに限らないが、(じつ)は毒を持つ鳥は地球にもいる。


 (せい)魔法でなんとなく、食べれるか食べれないか分かるようになって良かった。知らなければ私も、狩りで()れたら食べてたもん。


 ◇


 吐瀉物(としゃぶつ)だらけの服と体なので、女の子達には申し訳ないがタープの下で眠ってもらった。

 起きて体を洗ってから中で休んでもらうよ。それまでは外でごめん。


 一時間もすると、みんな目を覚ました。順番にお風呂に入ってもらい、別の服に着替えてもらった。


 食べた物を聞いてみると、この子達は他の国の出身で、やはり無毒(むどく)のうずらだと思ってどうやらウズラモドキを食べたそうだ。


 行き先はすぐ先の村らしいので、そこまで一緒に旅をする事にした。村に着くまでアカザさんがこの辺りの毒のある植物や生き物を教えるって。


「行き先にどんな毒のある物があるかは調べるように、ギルドで教わらなかったかい?」


「すみません。この国は毒のある物は少ないって聞いてて…」


「少なくてもないわけじゃないんだ。いつも気を付けてないと、自分の命に関わるんだよ」


「はい。今回の事でよく分かりました」


「ただ次の村で依頼(いらい)完了報告したら、その後は料理を出す店をするつもりなんです…」


「私達、冒険者は向いてないみたいなので…。好きな料理を仕事にしようかって…」


 ほうほう。ちょっと考えてる事を話してみようかな。

お読み下さって有難うございます。

お楽しみ頂けましたら幸いです。


面白かった、良かったなどお気楽に、下の

☆☆☆☆☆

にて★1から★5で評価して下さいね!


続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!


感想や応援メッセージもお待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ