6:狩り
「行ったぞ!」
「っせ!」
ばちばちぃ!
「ふー。明日はバーベキューだね」
本日は休みで、みんな思い思いに過ごしている。私はユリシーズさんと狩りに出かけて、体を動かす休みにした。
まあ、試したい事もあったしね。
「雷の屑魔石の板が、とんでもない罠になるもんだな」
「そうだね。普通の雷の魔石をちょっと混ぜたら、この出力になるとは思わなかったね」
獲物が感電死した罠。見た目は屑魔石の板に、絶縁体のカバーを被せてあり、上部に魔力回路に使われている特殊な金属で網目を描いてある、ちょっと変わった石板だ。
「扱いが簡単でこの威力だ。
戦闘能力のない者が狩りに使ったり、牧場の追い込み罠には良いと思う」
勢子をした後で、息の上がっているユリシーズさんにお水を差し出す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
クーとルーにもお水の入った器を出してあげると、凄い勢いで水を飲んでいる。
〘いっぱい走ったー!〙
〘さいごにしとめたかったのー〙
クーとルーは狩りの練習だ。狩りが下手で、生き残れないなんて事にならないようにするためだ。
「まだ一匹ほしいから、次はクーとルーだけで狩りする?
狙うのは野ウサギの大きさまでね」
〘うーれしーいー!〙
〘いくのー!〙
「じゃあここで待ってるから、行っておいで」
「あ、俺ももう少し狩りして来る」
「そっか、気を付けてね」
◇
お腹の上にいるのはクーとルー?
子ども体温だから熱いけど、気持ち良いなあ。ハンモックまでどうやって登ったんだろ……。
何とか薄っすら開いた目には、ユリシーズさんの背中が見える。
ああ、見張りがいてくれるなら安心だ……。
◇
「師匠、そろそろキャンピングカーに戻ろう。そろそろ魔物が活発になる」
ユリシーズさんの声に慌てて起きる。ずいぶん長く寝ていたようだが、ユリシーズさんは起こさずに、ずっと見張りをしてくれていたようだ。
「ごめん。すっかり眠り込んでた」
「寝るなら、せめて見張りがいる時にしてくれよ」
ユリシーズさんにお小言をもらったが、ブレスレットがあるので平気だ。
試しで能力は確かめてあって、冒険者さん達の折り紙付きだよ。
今は心配かけたので言えないが。
ユリシーズさんはクーとルーを、私の上から地面へ降ろす。二匹はくあっと伸びをしている。
クー達も良く眠ったようだね。
「気をつけるよ。アカザさん達も心配してるかもしれないし、戻ろう」
◇
解体まで終わった獲物を担いだユリシーズさんの前を、クーとルーが先導する。
二匹のおかげで、森の奥からでも迷わずキャンピングカーまで戻れる。
途中で果物も少し集めながら歩く。
聖魔法のおかげなのか、食べられるか食べられないかくらいの判別が、手をかざせば分かるようになった。それからは積極的に、色んな実を集めて食べている。
普通なら、不用心ともとれるのんびり加減で森を歩いていたのだが……。
「待って。あっちから、何か来る気配がする」
ユリシーズさんの目が、一気に険しくなる。そして素早く、あたりに視線を走らせる。
〘あ、クーわかったー〙
〘ルーもわかったのー〙
そう言うやいなや、二匹は私の感じた気配の方へ走って行ってしまう。
叫ぶに叫べず、二匹の後を追って走った。
クー達の荒々しい吠え声が聞こえる。どうか怪我していませんように!
◇
「クー、ルー。本能なのは分かってるよ。分かってるけど、次勝手に狩りや魔物退治に行ったら、もうキャンピングカーから出さないから。
分かった?」
クーとルーの後ろには、立派なイノブタ?イボイノシシ?が転がっている。
動きが早く、助太刀するにできなくて……。戦闘が終わるのを、ただ待っているしかなかったのが辛かった。
二匹はしゅんとしているが、気配が何か分からないまま行って、もし倒せないような相手だととても困る。
「クー、ルー。師匠は二匹がまだ小さいから心配してるんだよ。
もっと大きくて強くなれば、好きに狩りへ行かせてくれるから、今は師匠の言う通りにしとけ」
二匹はごめんなさいと、頭をぐりぐり押し付けて来たが、前よりさらに力が強い!
そりゃやんちゃもするか。
二匹の仕留めたのはイノブタで、とても美味しいお肉だったよ。
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