5:山賊退治
「ここ最近、山賊が横行してるんですか」
「はい、私達の前にここを通った隊商も、酷い目に遭ったそうです」
「他のルートは、キャンピングカーで通れないって話しだからなあ」
「歩きか騎馬じゃないと、通れないねえ」
「アークなら、キャンピングカーを牽いて山道も駆け抜けられると思うけど」
「もちろん、ウチの馬達も大丈夫だよ!」
アカザさん達と話し合った結果、このまま進む事にした。
「で、では、私達も一緒に行かせてもらえませんか?
迂回ルートを使っていると、腐ってしまう荷物なんです」
じゃあ、護衛を増やせって話しなんだが、そうすると、今度は儲けがなくなるのだそうだ。
アカザさんと目配せして確認する。
「分かりました。ご一緒しましょう」
◇
「はああ、ニホンショクとはこんなに美味しい食べ物でしたか!」
「あまり上手く再現できる方は、いらっしゃらないそうですね」
「そのようですね。私、こんなに美味しいニホンショク、初めて食べました」
食事くらいお出ししますと言って下さったが、逆にこちらの食事にお誘いした。
私が作った方が美味しいだろうし、ちょっと心配ごともあったからなんだよね。
「師匠の味には及びませんが、お口に合って良かったです」
「いやあ、こんなところで転移者ツヨシさまの直弟子さんの食事が頂けるとは、思ってもみませんでした」
◇
食事も終わり、それぞれ分かれて眠りについた夜半。
周りにたくさんの気配がある。山賊が動き始めたのだろう。
少し先にある、天然の洞窟から出て来ている。気配は……三十四、かな。
隊商の人達は、そろって山賊の出て来た洞窟に身を隠した。やはり仲間だったんだな。
「さーて。一人残らず、捕まえましょう」
にっこりと、アカザさん達を振り返る。
◇
暗い空へ向かって、ライトボールを放つ。これで身動きもしやすくなるし、目印にもなる。
私達が通って来た道は土魔法ですでに塞いであるので、そちらへは逃げられない。切通しになっていて助かったよ。
この野営地を抜けてしばらくすると、また切通しになっているのも確認済だ。隊商一行に怪しまれないよう、クーとルーの散歩を装って調べたんだ。
「うわっ、うわっ?!」
「な、なんだア?!」
「こんな眩しいライトボールなんぞ、見た事もねえぞ!」
キャンピングカーから五センチ離して結界を張ってあるので、誰も中に入って来れない。
武器も魔法も効かないので、私は安全なキャンピングカーの中から魔法を放つ。
「土魔法の檻に、追込んでっと」
範囲は狭いが、高火力の火魔法で山賊を囲んで檻へ容赦なく追い込めば、一網打尽となる。
山に延焼させる心算はないので、ある程度山賊が檻に入ったら、キャンピングカーを出て目視しながら追い込んで行く。
「普通の炎より温度高いんで、無理すると本当に死にますよ」
こちらへ斬りかかろうとする猛者に、そう注意しておく。
◇
「オオシロ方伯! ご無事ですか?」
早いな。洞窟へ向かった衛兵さん達が、もう合流して来た。
「無事です。こちらももうすぐ終わるので、少しお待ち下さいね」
檻に衛兵さん達が捕縛した山賊の最後の一人まで入れてしまうと、捕物は終了。
「いやはや、素晴らしいお力ですね。おかげで双方に怪我人も出ずに、山賊どもを一網打尽に出来ました」
「こちらこそ、こんな深山まで赴いて下さってありがうございます」
「何の。ご連絡を頂けたので、派手に荒らしておった山賊どもを捕まえられました。
こちらこそ、お礼を申し上げます」
◇
生粋の商人だと言う男に違和感を感じ、この辺りを守っている衛兵に兵を出してもらえるようにスマホで衛兵詰所に連絡したのだ。
上手く隠していたが、生粋の商人の手とは思えない剣ダコがその手にはあった。
立ち位置的に、私とアカザさんにしかその剣ダコは見えなかったのだが、私達はそれを見逃さなかったわけだね。
それでも確実に山賊と断定できないから、衛兵の出兵は腰が重かった。
仕方ないのでキナル第二王子殿下に連絡を取り、軍の上から命令を出して頂くお願いをしたら……。殿下御自ら指示をして、軍を動かして下さった。
確証もなく動いて下さったのは、本当にありがたい。
◇
翌日、先発隊とは別動だった移送部隊が到着。
この仕事を最後に、拠点を変えるつもりで全員で動いていたおかげで、アジトを見てきても誰もいなかったのは幸いだった。
「動いていなければ、あ奴らを野放しにするところでした」
「そうならなくて良かったです」
指揮官さんは、キャンピングカーの内装にそわそわされている。町に着いたらゆっくり見て頂こう。
「長年、国内を荒らしていた、A級犯罪者グループの壊滅です。これでいくぶんか、国内の移動も安全になりましょう。
報奨金は、莫大になりましょうよ」
「え”?!」
山賊の首魁+幹部三人全員+子分三十人全員+山賊グループの壊滅+αで、金貨300枚也。
ひーっ?! もう、私は前に出ないんだから!!
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなどお気楽に、下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね!
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます!