44:パワーストーンブームの始まり
前回はキナル王子ご夫妻が住まわれている陛下の私的なお城の一つ、モアス城にキャンピングカーで滞在させて頂いた。だが、今回は陛下の職場とでも言うべき公的なお城、アマリス城に滞在させて頂いている。
池の中に建つお城なので、とにかく寒い!底冷えも凄いし、隙間風もいくぶんあって、本当に寒い!
厚手の毛布を何枚かと、炎の屑魔石の板で作った簡易こたつで温まる。
豪華なテーブルが酷い事になっているが、知った事ではない。
ぺたりん。はあ。温かい。
背中にも毛布を被っていて、見た目はとんでもだが温かい。
アカザさん達は王城にいる間、騎士団の鍛錬に加えて頂いているので誰もいないんだ。そう、話し相手もいないって事だ。なので、遠慮なく温まる。
う、重い……。何でだろう……?
目を開けると、とんでもこたつにキナル王子が一緒に入って寝ておられる。被っている毛布の端を、ちょっと踏んでおられるようだ。
反対側も重いのは……。なぜアッシュ卿がおられるのだ?!
これは……、お起こしした方が良いのかな……。しばし思案していると、ここまで一緒に旅をして来た近衛騎士のライヤーさんがいらっしゃるのに気付いた。
『ライヤーさん、ライヤーさん!』
『お目覚めですか。キャンピングカーやコンテナハウスと比べると城は寒いので、あまりお休みになれていなかったご様子ですね』
『ええ、まあ。
それより、両隣のお二人はお起こしすべきでしょうか?』
『算盤を教わりに参ったのですが、キナル王子もまだ旅のお疲れがあるご様子。しばしお休み頂くのも宜しいかと……』
むう。なら、子どもみたいにテーブルの下を潜って抜け出すか……。
◇
平らなカートを並べ動かないようにし、使用人さん達のベッドに使われているという余っているマットレスをお借りする。
二畳ほどの小上がり風を作って、そこに新たに簡易こたつを作ってさあ……!
「優嬢……?」
キナル王子が起きてしまわれた。
「あれ?いないね」
アッシュ卿も起きられた……。
「こちらの靴を脱いで座って使うこたつは、ツヨシの家のようだね」
「靴を脱いで生活などあり得ないと思っていたが……。靴を脱ぐのは楽だし良いね」
新たに作ったこたつで寛ぐ王族がお二人……。
あぐらでガッツリおこたに当たっておられる。
「床暖房みたいで、ここならこのまま眠れそうだね」
「あっちのこたつより温かいのは、こちらの方がテーブルの高さが低いからか?」
「優嬢……」
はい。冷え性男子はぜひ欲しいんですね。
「父に相談してみます」
◇
『小上がりを床暖房ねえ。考えたな。
そっちに支店がある。職人を手配しておくよ』
「うん、ありがとう。お願いします」
こうしてキナル王子とアッシュ卿のアマリス城にある私室と政務室に、床暖房のついた小上がりが作られる事になった。
国王陛下と王太子殿下にもお伺いしたところ、前に湯船はいらないと言って失敗したから作ってほしいとの事だった。
今年はとにかく作って、来年の夏が終わるまでに王宮に合った物を作るそうだ。
こたつはちゃんとした構造や、火災の心配などがない物が出来てからとなった。というか、必死に説明してそうして頂いた。
「はあ、これで仕事が捗りそうだよ」
「どうしてですか?」
「冷えて指がまともに動かないんだよ」
ダメじゃん!
「何か赤い宝石の装飾品、できれば普段使いの物はありませんか?」
キナル王子は考え、赤い石が一つだけ付いた金の指輪を渡して下さった。
私は指輪をしっかり浄化すると、ストーンにキナル王子の冷えを緩和するよう祈りを込めてからお返しする。
「今、指輪に何をしたんだい?」
キナル王子が指輪を受け取りながら、不思議そうに尋ねて来られる。
「地球にはパワーストーンという物があり、願いを叶えたり、願いを叶える助けをしてくれると言われています。今したのは、キナル王子の冷えの緩和をストーンに願いました。
パワーストーンと言っても、普通の宝石や宝石未満の石なんですけどね。
信じて頂けるなら最低月に一度、聖魔法での浄化をお進めします。あるいは効きが悪くなったと感じられた時も」
「面白いね。お守りのような物かな?
ああ、でも……、手にしていると何だか体が温かく感じるね」
嫌な感じがシューッと消えたからね。赤い石がちゃんと働けるようになったのかも。
「もしかして、悪い魔法使いに放っていた石、あれにも何か意味があったのだろうか?」
「ええ。あれは黒水晶と呼ばれる石で、霊的な物から護る力が強いと言われている石です。それに魔導具の回路に使われているコードを付けて放ち、聖魔法をコードを伝って放ちました」
「そんな石だったのだね。
あの時、彼女は中から浄められたのか。それは効果が高そうだね」
「私も何か頼めるのかな?」
「何かお困りごとがおありですか?」
「熱しやすく冷めやすいところかな?振り幅がもう少し狭いと良いね」
お守りではないが、これを身に付けていると渡されたのは、ホークアイっぽいストーンのネックレスだった。
真の幸福に導く、か。必要なストーンがちゃんと手元に来ているじゃないか。
こちらも聖魔法で浄化して、効果が十分発揮出来るように願うと、アッシュ卿にお返しした。
「思っているストーンなら、真の幸福に導くとも言われている物です。
ずいぶん助けてくれているようで、ストーンが力不足になっている印象でした。ですのでたっぷり、聖魔法でエネルギー供給しておきました」
「……、……、ぼんやりしていた意識がスッキリする心地がするよ」
王宮から床暖房付き小上がりと、パワーストーンブームが巻き起こるまで、そう時間はかからなかったのである。
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