4:新しい日常
朝起きて、顔を洗って。次は、髪に手作り蜜蝋ワックスを少しつけたら、身支度は終わり。
ワックスは使いたくないけど、髪が金色に見えるほど傷んできたから、髪の保護になればと使い始めた。
身支度が終わると、手をしっかり洗って朝食の準備に取り掛かる。
◇
くんくん。
はぎゅうっ。
「ちょっ、リラさん! 火、使ってるのに! 危ないです!」
「……美味しそうな匂い……」
まだやや寝ぼけているリラさんが、朝ご飯を作っている私に抱きついてくる。
結構力が強くて、剥がすの大変。アカザさん達も加わって、引き剥がして下さった。
「すまないっ! コイツ、寝起きが悪くてね。抱きつかれるのは良くあるんだ。
気を付けてたんだが、防げなくてすまない」
「寝ぼけてるのは仕方ないですが、次からは火を使ってる時は、近くに寄らないように見ててあげて下さい」
ナイロン製品は身に付けていないからいくらか平気だろうけど、危ない事に代わりはない。
「リラ姉ちゃん、オレより朝が弱ぇ!」
〘ご飯より先にあそぶの?〙
〘ルーたちもまざるの!〙
「クー! ルー! 違うから!」
朝から騒々しい事この上ない。今日からは、こんな朝が日常になるのかもしれない。
「ま、もう少し慣れたら落ち着くかもしれないから、今だけかな」
クーとルーの頭を撫で、待ての解除をする。それぞれ朝ご飯に選んだ合い挽きミンチを、美味しそうに食べ始めた。
◇
「頂きます」
私達も朝ご飯にしよう。徒歩の旅ではないから、あまりカロリーの高くない食事をという要望があった。
後、朝しっかり、夜は軽くという要望も一緒に上がった。
確かに、夜は寝るだけなのに沢山カロリーはいらないので、朝重めの食事、昼と夜は一汁一菜の軽い食事にする事で落ち着いた。
「はあ、朝からニホン人の転移者の作る、本当のニホンショク……。いいねえ」
「これで一日頑張れるよ!」
「旅の朝にまともなメシって、贅沢だな」
「寝過ごしたら、堅パンと干し肉噛りながら歩く事もあるもんねぇ」
「宿と自分で作る以外で、まともな朝ご飯!」
今朝はトンテキ、旬野菜のサラダ、具だくさん味噌汁とご飯というメニューだ。好評で一安心。
何か変な感想もあったけど、私は何も聞いてませんから。
◇
「じゃあ、私とカールくんで洗濯。ユリシーズさんは片付け。アカザさん達は馬達の世話をお願いします」
ご飯が終わると、みんなで分担して家事を終わらせる。
家事の後、一時間ほど鍛錬をしたら出発というのが、朝のルーティンになるはずだ。
私とカールくんも、剣の鍛錬に加えてもらうよ。万が一何かあった時、役に立つだろうから。
クーとルーはこの間に、外を駆け回ってくる。アカザさん達と合流するまでに、二回も獲物を獲って来た事もあるんだよ。
二匹にはねずみはいらないと言っている。もちろん、ヘビも!!
◇
鍛錬が終わり、短い休憩も終わるといよいよ出発になる。
「じゃあ、出発しましょう」
私は月毛の馬、アンの馬上から声をかける。移動の間、乗馬の練習も欠かさないため、アカザさんのパーティーの馬、アンをお借りする。
「アンは大きいけど、穏やかで良いこだね」
「アンは子馬の頃からアタシが育てたからね。それもあって、人に慣れてるのさ」
キャンピングカーの中から、アカザさんの返事がそう返ってきた。
「馬で移動している冒険者さんって、珍しいですよね。どうして馬を育てる事になったんですか?」
「実家が馬の牧場なんだよ。だから、馬も子馬も見慣れてたんだけど、この馬には惚れちまってね」
そんな会話などもしつつ、街道を進む。
◇
お昼に適当な場所に止まり、お昼ご飯と休憩。
午後は、馬に騎乗する人と御者が交代。三時の休憩で、また代わる。
夜は町で宿に泊まったりはしないって。なぜなら「宿よりキャンピングカーは快適!」なんだそうだ。
ただ、木曜日と日曜日は移動はせず、休日と決めている。この時は町でご飯を食べたりして、ゆっくりするんだ。
いつも自分で作っていると、せっかく遠くまで来ているのにグルメにはありつけないもん。グルメは大事!
「師匠は変なところで、拘りが強いな」
ユリシーズさんには理解してもらえなかったが、アカザさん達は分かってくれたから良いよーだ。
兎に角、こんなサイクルで回れるだけ色んな地域を回って旅する予定だ。
あんまり魔物に会いませんように。
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