19:獲物を頂く
「立派な獲物ですね〜え」
のんきな感想は小さなこの村唯一のギルド、統括ギルドのギルド員さんのお一人。知っている旧王都の統括ギルドの職員さんの誰ともイメージが合わないくらい、のんびりしている。
「では、一時間後においで下さいね〜。優さまの取り分全部、先に解体しておきますので〜」
「宜しくお願いします。では、後ほどまた来ます」
仕事は出来るそうだが、こののんびりした性格では旧王都などの大きな町の忙しい拠点ギルドは合わず、望んでこの村のギルド員さんになった方だそうだ。
そんなのんびり屋のギースさんに解体依頼を出し、その足で教会へ行ってみる。目と鼻の先なので、馬達は預けたまま歩きで。
◇
小さな村の小さな教会でも、カートは作られていた。さすがに町ほどの需要はないそうだ。それならと、町へ出荷してある程度の利益が出ているそうで安心した。
カールくんは近い歳の男の子達がいるので遊びたそう。まだ時間があるので、時間まで遊んでおいでと言ってあげると、嬉しそうに駆けて行った。
私はのんびり、みんなが遊んでいるのを眺めてゆっくりする心算だったんだけどね。遊ぼう遊ぼうと、子ども達にまとわりつかれてしまった。
「よーし。じゃ、ドッチボールしよう。カールくん、コート描いて」
「どっちぼーう?何それ?」
「このボールっていうのを使う遊びだよ」
ボールに良さそうな物を見つけては試作しているが、まだ良い物は出来ていない。今あるのは、軽くてふにゃふにゃしたボールだ。
「ユリシーズさん、カールくんたちの方に入ってあげて」
「え?!」
「それが良いや!ユリシーズ兄ちゃん、入って入って!」
軽くてふにゃふにゃしたボールなので、思い切り投げてもたいしたスピードは出ない。遊びながら少しずつルールを変えていったら、最終的にへろへろになる程盛り上がった。
「これ、みんなで使って。また遊びに来るよ」
「うん!優さま、また来てね!カールもまた遊ぼうぜ!」
「うん!また来る!」
子ども達に見送られ、ギルドで肉を受け取るとキャンピングカーへ。
◇
「で、これを揚げると……」
受け取った猪肉を使って、リラさんと猪カツを揚げていく。リラさんはレパートリーを増やすためにも良く手伝ってくれるので有難い。
「泡が小さくなって音も変わると、ひっくり返すっと…………」
じゅわっ、ぱちぱちぱちっ。
揚げ物の音も食欲をそそるよね〜。まだご飯が出来たと声をかけていないが、みんなダイニングに集まっている。
「摘んでて。すぐにお昼にするよ」
皿に揚がったばかりの猪カツを一口大にカットした物を載せてテーブルに出すと、あっという間になくなった。
苦笑いしつつお皿を回収して、私は猪の生姜焼きに取り掛かる。五ミリの厚みに切った、ロース二枚の猪の生姜焼きと、二センチに切った肩ロース半分が一人分の予定だが……。
「二品とも、一人前ずつ食べる?」
「食べるっ!」
「もちろん食べるさ!」
「これを我慢ってできないだろ」
「後で鍛錬に励めば大丈夫……」
「食う」
みんな、今日のお昼はしっかり食べるらしい。私はカールくんと半分ずつの一人前で、お昼を摂ろう。
◇
食後、少し休むとみんな鍛錬に励んでいる。
その声と音を聞きながら、借りている家の玄関を入った正面の窓から外を眺めてぼーっとする。
大きくなって、二匹一緒に乗せられなくなったルーだけを膝に、クーは足元で丸くなって寝ている。
ヒーターを使っているし、大きな籠ベッドに入っているからクーも寒くはないだろう。
◇
「師匠?
大丈夫か?どこか具合悪い?」
「わっ、驚いた。
あ、鍛錬終わったんだ、お疲れさま」
随分長い間、ぼーっとしていたらしい。鍛錬が終わったのにも気付かず、いつの間にかユリシーズさんがシャワーを浴びるために入って来たのにも気付かなかった。
ユリシーズさんはそろりと腕を伸ばして、大きな手を私の額に当てて来る。
「熱、は、ないみたいだな」
ユリシーズさんの手を避けて立ち上がる。
「体調はどこも悪くないよ。大丈夫。ヒーターはこのまま置いておくから、使って」
「あ、優さま!教会の人がお礼を言いに来てるよ!キャンピングカーで待ってもらってる!」
カールくんが来てくれて良かった。明るい声に連れられてキャンピングカーへ戻り、教会の方とお会いするのだった。
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